きょうから自転車の「ながら運転」「酒気帯び運転」を厳罰化 何がどう変わる?
きょうから自転車の「ながら運転」「酒気帯び運転」に対する罰則が強化され、厳罰化される。改正道路交通法の施行に基づく措置だ。違反に対する「青切符」、すなわち交通反則通告制度も約1年半以内に導入されることになっている。
「ながら運転」の罰則強化
すなわち、これまでも運転中にスマホ画面を注視するといった自転車の「ながら運転」は処罰の対象となっていた。しかし、自動車やオートバイと異なり、最高で罰金5万円と軽い「安全運転義務違反」の一つにすぎず、規制の具体的な内容も各自治体の公安委員会規則に委ねられていた。しかし、「ながら運転」で注意が散漫になり、運転操作を誤り、事故を起こす危険性が高まるのは自転車でも同じだ。
そこで改正法は、自転車の「ながら運転」を正面から道路交通法で規制することにし、次のように罰則も強化した。
(1) 規制される行為
携帯電話やスマホなどを手に持って通話のために使用したり、ハンドルに取り付けている場合を含め、画面の表示画像を注視したりすること。ただし、赤信号などでの停止時は除く。
(2) 罰則の内容
(a) (1)に及んだ上で事故を伴うなど交通の危険を生じさせた場合、最高で懲役1年、罰金だと30万円以下。
(b) たとえ交通の危険を生じさせなくても、携帯電話やスマホなどを手に持って通話したり、画面の表示画像を注視したりした場合、最高で懲役6カ月、罰金でも10万円以下。
「通話」そのものではなく「通話のために使用」することが禁じられているので、発信して相手の着信を待っている状態でもアウトだ。ただし、通話に関する規制はスマホなどを手で持っている場合に限られるから、ハンズフリーやスピーカー機能を使った通話は対象外となっている。
一方、「注視」とは「見続けること」を意味するが、道路交通法にはその秒数などに関する具体的な定義規定がない。カーナビ事業者などに向けた国家公安委員会の告示では「おおむね2秒を超えて画面を見続けることをいう」と定義しているから、これが参考になるだろう。とはいえ、秒数を問わず、前をよく見ずに運転することが危険であることに変わりはない。
「酒気帯び運転」の罰則導入
自転車の飲酒運転も、これまで道路交通法で規制されてはいたが、罰則はアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態下での「酒酔い運転」だけだった。すなわち、自動車やオートバイであれば、呼気1L中にアルコールが0.15mg以上検出されると「酒気帯び運転」として検挙されてきたが、自転車にはこの罰則がなかったわけだ。
しかし、自転車だからといって「酒気帯び運転」が安全というわけではなく、やはり重大な死傷事故を招く危険性は高い。そこで改正法は、自転車の「酒気帯び運転」に対する罰則を導入し、自動車やオートバイの場合と同じく最高で懲役3年、罰金だと50万円以下に処すこととした。
「酒酔い運転」はこれまでどおり最高で懲役5年、罰金だと100万円以下で変わらないが、「酒気帯び運転」に比べると犯罪成立の要件が厳しい。今後は夜半の飲み屋街で検問したり、ふらついている自転車の運転者に職務質問したりし、「酒気帯び運転」で検挙することが可能となった。
注意すべきは、運転者の友人・知人やレンタサイクル業者、居酒屋、レストランなどを含め、次のとおり「酒気帯び運転」の幇助行為も処罰されることになったという点だ。
・酒を飲んで運転するおそれがある者に「自転車」を提供し、現にその者が「酒気帯び運転」に及んだ場合、最高で懲役3年、罰金だと50万円以下。
・酒を飲んで運転するおそれがある者に「酒類」を提供し、現にその者が「酒気帯び運転」に及んだ場合、最高で懲役2年、罰金だと30万円以下。
・「酒気帯び」の状態だと知りながら、自分を送るように依頼してその自転車に2人乗りするなど同乗し、現に運転者が「酒気帯び運転」に及んだ場合、最高で懲役2年、罰金だと30万円以下。
「自転車運転者講習」と「青切符」
改正法では、「ながら運転」や「酒気帯び運転」も信号無視や通行禁止違反などと同様に「自転車運転者講習」の対象となる「危険行為」とされている。「ながら運転」などの「危険行為」を繰り返し、3年以内に2回以上検挙されたら、講習の受講が義務付けられる。命令を無視して受講しなければ、5万円以下の罰金だ。
「ながら運転」など自転車による113種類の交通違反に適用される「青切符」制度も新たに導入された。16歳以上の違反者が対象だが、自動車やオートバイと同じく反則金を納付させることで、前科が付くのを避けるとともに、迅速に処理を進めようという狙いがある。
こちらの施行はことし5月24日の改正法公布から2年以内とされており、これから反則金の金額などが政令で定められることになる。あと約1年半の時間があるが、引き続き安全運転に務めるとともに、改正の動向を注視しておく必要がある。(了)