クロース、モドリッチ、カゼミーロの盤石の中盤と奇跡のバランス。レアルを支える「柱」の重要性。
その機能性は、もはや美しい。
現在、リーガエスパニョーラで首位に立っているのはレアル・マドリーだ。この夏のジネディーヌ・ジダン前監督の退任を受け、カルロ・アンチェロッティ監督が就任した。イタリア人指揮官の2度目のチャレンジは順調な滑り出しとなっている。
マドリーが好調を維持している要因は、いくつかある。だが大きいのは中盤の構成と安定感だろう。ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カゼミーロ。“いつもの3人”が、依然としてマドリーの中盤に君臨している。
「うまくいっているところを、推測のために変えたくない。疲れていない選手に、休養を与えたくない。(シーズン終盤の)3月や4月まではまだ時間がある。その時、どうなるかは見てみよう」
これは中盤の3選手についてのアンチェロッティ監督の言葉である。
■圧倒的な存在感
マドリーは今夏、移籍金固定額3100万ユーロでエドゥアルド・カマヴィンガを獲得。複数クラブが狙っていたヤングプレーヤーを引き入れたが、カマヴィンガの出場機会は保証されていない。
カマヴィンガだけではない。フェデリコ・バルベルデ、イスコ、インサイドハーフへのコンバートが試されたマルコ・アセンシオ、カンテラーノのアントニオ・ブランコ、いずれもレギュラーの3選手からポジションを奪うには至っていない。
マテオ・コバチッチ(現チェルシー)、マルティン・ウーデゴール(アーセナル)、マルコス・ジョレンテ(アトレティコ・マドリー)、アシエル・イジャラメンディ(レアル・ソシエダ)...。近年、マドリーが獲得してきた選手やカンテラーノは悉く分厚い壁に阻まれてきた。
第一次アンチェロッティ政権で、試合をコントロールしていたのはモドリッチとシャビ・アロンソだった。
アンチェロッティ監督は、ここにコンバートしたアンヘル・ディ・マリアを加えて、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの「BBC」を組み込んだ【4−3−3】を成立させていた。
だがマドリーは2014年夏にシャビ・アロンソをバイエルン・ミュンヘンに放出。その代役として加入したのが、クロースだ。
ただ、当時、カゼミーロはポルトにレンタル移籍していた。
2014−15シーズン、意外にも、アンチェロッティ・マドリーでクロース、モドリッチ、カゼミーロの中盤は形成されていなかった。
2015−16シーズン途中に就任したジダン監督が、その3選手を使いながらチャンピオンズリーグ制覇を達成した。それからの同大会3連覇は語るまでもないだろう。
「この数年、世界最高のクラブでプレーしてきた。それは特権的な行為だった。キャリアを終えた時に、初めて自分が成し遂げたことを理解できると思う」とはカゼミーロのコメントである。
「モドリッチとクロースと一緒にプレーできるのは大きな誇りだ。長い間彼らとともにプレーしたという事実を、後々、評価したい。フットボールのアイコン的存在と一緒にプレーしていたことを、いつか孫に語りたい」
カゼミーロが守備を負担して、2人のインサイドハーフがゲームメイクする。奇跡的なバランスが保たれ、マドリーの強さは確固たるものになった。
■得点力と中盤の関係性
今季、リーガ序盤戦(第15節終了時点)でマドリーは35得点を記録した。C・ロナウドが所属した最後のシーズン、2017−18シーズン(最初の15試合30得点)以上の数字だ。
無論、攻撃陣の調子は良い。ベンゼマとヴィニシウス・ジュニオールがリーガの得点王を争っている。チーム全体の得点の70%以上をこの2選手が挙げている。
だがエルチェ戦後に2得点を挙げたヴィニシウスが「モドリッチにボールを持っていない時にランニングするように言われている」と語ったように、良いパサーがいるために、彼らは生かされている。
ベイル(移籍金1億ユーロ)、エデン・アザール(移籍金1億ユーロ)と高額な移籍金で加入した選手たちはマドリーで苦しんでいる。
対して、モドリッチ(移籍金3000万ユーロ/前所属トッテナム)、クロース(移籍金2500万ユーロ/バイエルン)、カゼミーロ(移籍金600万ユーロ/サンパウロ)の費用対効果は抜群だ。
ジダン、フレン・ロペテギ、サンティアゴ・ソラーリと歴代の指揮官は「盤石の中盤」を崩そうとしなかった。アンチェロッティもそれに倣い、不動の3選手は覇権を握り続けている。