「雪辱を晴らす」は間違い!実は日本人の半数以上が間違っている要注意!な慣用句
ことばは人から人へと伝わっていく性質から、知らず知らずのうちに変化をしてしまうものが少なくありません。昔から使用されていた表現が、そのうちに使用場面や意味が変わってしまったり、表現そのものが変わってしまったりすることもあります。
今回は、その中から日本人の半数以上が本来の表現と違った形で使っている慣用句「雪辱を○○○」に注目してみます。
「雪辱を晴らす」?「雪辱を果たす」?
まずは、基本クイズ。
「マイナス評価を覆す」という意味で使用する慣用句
A:「汚名挽回」
B:「汚名返上」
どちらが正しい使い方でしょうか?
正解はBです。正しく答えられましたか?
そもそものことばの意味を考えればわかると思います。「汚名」というマイナス評価を「挽回」してしまうと「マイナス評価を取り返す」という意味になってしまうので、本来の意味と真逆ですよね。
「汚名」はひっくり返したい・お返ししたいので、「返上」を使うのが正しい表現です。
「名誉挽回」と混同されることが多く、一般的に「間違えやすい慣用句」として取り扱われることが多い「汚名返上」ですが、それでもこちらは「理解している」または「ずっと間違っていたけど、ネットで読んで知った!」と多くのみなさんが正しく答えられるものだと思います。
では、次は本題。もう1問クイズです。
「勝って名誉を取り戻す」という意味で使用する慣用句、正しいのはどちら?
A:「雪辱を晴らす(せつじょくをはらす)」
B:「雪辱を果たす(せつじょくをはたす)」
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正解は、B「雪辱を果たす」です!
とはいえ文化庁の令和元年時点の調査では、なんと半数を超える50.5%の人がAの「雪辱を晴らす」と答えています。
にもかかわらず、どうして「雪辱を果たす」が正しいのでしょう?
「そういうものだから」と思考停止せず、せっかくですから語源から立ち返って考えてみましょう。
そもそも「雪辱」とは?語源がわかれば意味もわかる!
「雪辱」ってそもそも何なんでしょう。
「雪辱」の「辱」は「辱(はずかし)め、不名誉、恥」といった意味です。そこにどうして「雪」が付くかというと、「雪」という字には、「清める、洗う、すすぐ」といった意味があるそうです。つまり「雪辱」ということばそのものが「不名誉や恥を洗い清める」という意味を持っています。
それに対し、「晴らす」という動詞は「すっきりさせる、解消させる、不快なものを取り去る」といった意味を持っています。
つまり「雪辱(不名誉を洗い清める)を」+「晴らす(解消する)」にしてしまうと、「頭痛が痛い」のように結果的に意味を重ねてしまっていることになるのです。
一方「果たす」は「達成させる、完遂する」という意味なので、「雪辱」を達成させるという意味になり、正しい表現。ゆえに「雪辱を果たす」が正解となります。
語源を知れば、すんなりと理解できますよね!
なぜ「晴らす」に変化してしまったのかは定かではありませんが、「果たす」と語感が似ていることや「雪辱」ということばが単に「辱め」という意味で捉えられてしまったのが、要因なのではないかと感じます。
日本語力が問われる間違いは、自らどんどん直していこう!
「汚名挽回」や「雪辱を晴らす」のような間違いは、根本の日本語力にも関わってしまいます。“ことばの変化”として許容していくような種類の間違いではありません。「みんなが間違っているからしょうがないよね」ではなく、今日からはぜひ正しいものをみなさんが広めてください!正しい日本語を受け継ぐのは、みなさんひとりひとりです!
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