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乳幼児期のアトピー性皮膚炎とは違う?脂漏性皮膚炎の原因と対処法

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

赤ちゃんの肌トラブルの中でも、よくみられるのが脂漏性皮膚炎です。黄色っぽいフケが頭や眉毛に付着し、頬も赤く湿疹が出ることもあります。一見するとアトピー性皮膚炎に似ていますが、脂漏性皮膚炎は別の皮膚疾患なのです。

今回は、小児の脂漏性皮膚炎について、皮膚科専門医の視点から解説します。脂漏性皮膚炎の症状や原因、アトピー性皮膚炎との違い、治療法などを詳しく見ていきましょう。

【脂漏性皮膚炎の特徴と症状】

脂漏性皮膚炎は、乳幼児期と思春期の2つの時期に多く見られます。乳児期の脂漏性皮膚炎は生後2~3週間で発症し、頭皮や眉毛、鼻の溝など脂漏部位と呼ばれる場所に現れます。

頭皮では厚みのある黄色い鱗屑(りんせつ)が付着し、いわゆる「匂いのあるフケ」がついた状態です。眉毛や鼻、頬、耳の後ろ、おむつ部位などにもベタつく鱗屑を伴う赤みが広がることがあります。皮疹の形は境界がはっきりしており、全身に広がるタイプもあります。

一方、思春期の脂漏性皮膚炎は、思春期ニキビと間違われることもあります。顔面の脂漏部位に赤い湿疹と脂っぽい鱗屑が特徴的です。頭皮のフケが目立つこともあります。

脂漏性皮膚炎は、アトピー性皮膚炎と似ているため、混同されがちです。しかし、アトピー性皮膚炎では肘や膝の内側、首などの屈曲部位に湿疹が見られることが多いのに対し、脂漏性皮膚炎では頭皮、顔面、胸部上部などの脂漏部位に紅斑と鱗屑が見られることが多いのが違いです。また、アトピー性皮膚炎ではアレルギー素因(花粉症、喘息、鼻炎など)が強く関与していますが、脂漏性皮膚炎では脂漏および皮脂腺の活動が主な要因です。

【脂漏性皮膚炎の原因と誘因】

脂漏性皮膚炎の正確な原因はまだ解明されていませんが、皮膚の常在菌であるマラセチア菌が関与していると考えられています。マラセチア菌は脂質を好む菌で、皮脂の分泌が多い部位で炎症を引き起こします。

乳児では母親由来の性ホルモンの影響で皮脂腺が刺激され、脂漏性皮膚炎が生じやすい状態だと言われています。また、皮膚バリア機能の未熟さも発症に関与すると考えられています。

思春期以降は、皮脂腺の発達とともに脂漏性皮膚炎のリスクが高まります。ストレスや疲労、季節の変化なども誘因となり得ます。脂漏を悪化させる外的要因としては、高温多湿な環境や、脂っこい食事、過度の洗顔などが挙げられます。

【脂漏性皮膚炎の治療と予防】

乳児の脂漏性皮膚炎は、適切なスキンケアで自然に治まることが多いです。頭皮のフケは、ベビーオイルを塗布して柔らかくしてから優しく除去します。シャンプーは弱酸性のものを使い、こすり洗いは避けましょう。

頑固な症状には、抗真菌作用のあるケトコナゾールシャンプーやクリームが有効です。ステロイド入りのローションを短期間用いることもあります。症状を繰り返す場合は、皮膚科を受診して適切な治療を受けることが大切です。

思春期の脂漏性皮膚炎の治療も、スキンケアが基本となります。洗顔は1日2回を目安とし、刺激の少ない洗顔料を泡立てて優しく洗います。保湿剤で肌のバリア機能を整えることも重要です。シャンプーは抗真菌成分配合のものを選ぶとよいでしょう

以上、乳児期と思春期に多い脂漏性皮膚炎について解説しました。脂漏性皮膚炎は、適切なスキンケアと生活習慣の改善で良くなることが多い皮膚疾患です。症状が遷延する場合は、皮膚科専門医に相談して的確な治療を受けることをおすすめします。

【参考文献】

Indian Dermatol Online J. 2024 Apr 23;15(3):383-391.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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