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なぜ井上尚弥と対戦のグッドマンは負傷したのか ボクサーの調整はギリギリの戦い

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

12月14日大橋ジムは、井上尚弥(大橋)が予定していた防衛戦を来年1月24日に延期すると発表した。この試合は東京・有明アリーナで開催される予定で、対戦相手にはIBF&WBOスーパーバンタム級同級1位のサム・グッドマン(オーストラリア)が予定されていた。しかし、挑戦者側からグッドマンの負傷が報告され、両陣営の協議の結果、回復状況を考慮して日程の変更が決定された。

試合の延期について

試合直前での延期はボクシングでは時折起こるものの、選手や関係者にとっては大きな影響を及ぼす。通常、試合2週間前を切ると、スパーリングなどの激しい練習は控えられ、主に体重管理やコンディション調整に移行する時期だ。今回のグッドマンの負傷は、スパーリング中に目の上をカットしたことが原因とされる。ヘッドギアを着用しているにも関わらずカットする可能性は極めて低いが、映像によれば、ジャブで目の上を切り、出血もかなり深刻だった。この怪我の影響で試合を望むグッドマンの意志に反して陣営は延期を選択したようだ。

ギリギリの調整

グッドマン陣営としては試合直前まで実戦に近い形でギリギリの調整を続けていたと考えられる。今回の試合はグッドマンにとって過去一番の大舞台となる。井上に勝利すれば世界的な評価を得られるとあってこの試合に賭ける意気込みと井上戦に向けて万全な体制での調整を続けてきたと考えられる。しかし、それが結果的に裏目に出た形だ。ボクサーの調整は常に紙一重のバランスが求められる。ギリギリまで追い込むことで試合本番にピークを持っていける一方で、怪我のリスクも常に伴う。今回の負傷については「不運」としか言いようがないが、試合が延期されたことは井上にとってもグッドマンにとっても少なからず影響を与えるだろう。

試合延期の影響は

選手にとって試合が1ヶ月ずれることは計画の大幅な見直しを意味する。ボクシングは他のスポーツと異なり、年間の試合数が少なく、1試合ごとの重要性が極めて高い。選手たちは数ヶ月前から試合に向けて綿密なトレーニングと減量計画を立て、その1試合に全てを賭ける。特に井上は来年に3試合を予定していたため、この延期が年間スケジュールに与える影響は小さくない。1ヶ月の遅れが次戦やその後のプランにどれだけ響くか、関係者は慎重な調整が求められる。

井上は自身のSNSで今回の延期についてコメントを発表している。

起こったことを前向きに捉え、来月の試合に向けて切り替えをしている。このメンタルの強さこそ数々の偉業を成し遂げてきた井上の強さの根幹にあるものだろう。

仕切り直しとなった防衛戦では、井上とグッドマンが互いに万全の状態でリングに上がることを期待したい。ボクシングファンにとっても両者が最高のパフォーマンスを見せる瞬間は大きな楽しみだ。延期による影響はあれど、最終的にはより良い試合が実現することを願うばかりである。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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