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どうなるアマチュアボクシング 五輪存続か?除外か?来年の6月に最終判断

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
ロンドン五輪で金メダルに輝いた村田諒太(写真:ロイター/アフロ)

 国際オリンピック委員会(IOC)は30日から東京都内で理事会を開き、国際ボクシング協会 (AIBA)の組織運営に問題を抱えるボクシングについて、2020年東京五輪の実施競技やIOC承認団体からの除外を含めて審議した。理事会は2日間の日程で、12月1日には東京五輪の大会組織委員会が準備状況を報告する予定だった。しかし、結論は持ち越しとなり、国際ボクシング協会(AIBA)の組織運営を調査することを決めた。東京五輪での実施については、来年6月の総会で最終判断する方針を固めた。そこでボクシングの処遇が決まる見込みだ。

プロボクシングとアマチュアボクシング

 ボクシング競技はプロとアマチュアに分けられる。オリンピック競技として開催されるのはアマチュアボクシングとなる。プロアマは競技性そのものが違いルールが異なる。アマチュアの試合のルールは3分3ラウンド形式で行われる。プロは最長で12ラウンド行われるのに対してアマチュアは試合時間が短い。そのためアマチュアの試合は展開が非常に早くスピーディーだ。戦略や戦術など作戦を立てて戦うプロに対して、個人の身体能力や技術に秀でている選手が勝つ。プロのようなノックアウトは少ないが、攻防の切り替えが速くテンポがいいのであっという間に終わる。どちらかというと玄人好みになるが、アマのトップ選手の技術は非常にレベルが高く見応えもある。また、プロの試合は興行となるが、アマチュアの試合はトーナメント形式の試合となる。アマチュアボクサーは年間のスケジュールが決められていて、県やブロック予選を勝ち抜いて全国大会に出場する。オリンピックに出場するには国内で勝ち抜き、海外でのアジア枠を獲るか、世界選手権で上位入賞する必要がある。開催国の場合は、開催国枠が用意されているため予選は免除される。

アマチュアから始めるケースが多い

 そもそもボクシングを始めるケースはプロのジムで始めるケースと高校の部活で始めるケースに分けられる。プロを目指している選手も、いきなりプロになるのではなく、初めはアマチュアで経験を積むことが多い。プロは年間に3〜4試合するのに対して、アマチュアは年に20試合前後ある。そのためアマチュアに進むことで実践のキャリアを積むことができる。アマチュアのトーナメントで勝ち進む事でそれが実績となり、プロに転向する時に大きな注目を集める。最近はアマチュアからプロに転向するケースも増えてきており、僅かなプロキャリアで世界チャンピオンになるケースも多い。現在プロで活躍している、井上尚弥選手や日本最速で3階級制覇を果たした田中恒成選手などはプロ入り後、2年足らずで世界王者に輝いている。そのベースにはアマチュアでの豊富な実績があったからといえるだろう。

五輪メダリストと世界チャンピオン

 世界に目を向けても、これまで数々の世界チャンピオンがオリンピックの舞台で活躍している。オリンピック後にプロデビューをして、プロでも大きな成功を収めている。

例えば有名なところでは以下の選手達がいる。

モハメド・アリ (元WBA・WBC統一世界ヘビー級王者)ローマオリンピック(1960)ライトヘビー級金メダル

オスカー・デ・ラ・ホーヤ(史上初の6階級制覇王者)バルセロナオリンピック(1992)ライト級金メダル

フロイド・メイウェザー(史上初の無敗で5階級制覇)アトランタオリンピック(1996)フェザー級銅メダル

ワシル・ロマチェンコ(現役 世界最速の3階級制覇王者)北京オリンピック(2008)フェザー級金メダル、ロンドンオリンピック(2012)ライト級金メダル

アンソニー・ジョシュア(現役 WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王)ロンドンオリンピック(2012)スーパーヘビー級金メダル

このようにアマチュアで活躍することで注目を浴び、その後にプロに転向することで破格の待遇でプロ入りしているケースが多い。そのため五輪に出場し、そこでメダリストになることがボクサーにとって大きな目標となる。もちろんプロがない国もあるので、その選手達はオリンピックでのメダル獲得を目標にしている。

競技の存続に関わる問題

 アマチュアとプロで統括団体は分かれているが、お互いに持ちつ持たれつのところは多い。近年ではアマのプロ選手の解禁も進んでいる。リオオリンピックではプロの元世界王者も出場を果たしている。日本でも東京五輪でボクシング競技が実施されれば、元プロ選手の出場が認められる話も進んでいる。今回、国際ボクシング協会 (AIBA)の組織運営に問題を抱えるとのことで、ボクシング競技がオリンピックでどうなるか審議されている。しかし、出場を目指している選手達の夢の舞台を応援するためにも存続してほしい。五輪でのボクシング競技は100年以上も続く伝統競技でもあるので、その存続意義は大きいだろう。また、テレビ局が支払う莫大な放映権料無くして五輪開催はあり得ない。欧米のテレビ局にとってもボクシングは欠かすことのできないコンテンツだけに、今後の結果に注目が集まる。もし、来年の調査結果で除外されることがあれば、アマチュア、プロともにボクシング界には大打撃になる。そうならないためにも、今後の動向が注目される。ボクシング競技が東京オリンピックで実施され、日本選手が活躍する舞台をぜひ観たいものだ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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