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CD-Rをタワーレコード流通! シンガーソングライター・里咲りさが目指す世界とは?

宗像明将音楽評論家
タワーレコード限定販売のCD-R「R-and U」をリリースする里咲りさ

シンガーソングライターの里咲りさが、タワーレコード限定販売のシングル「R-and U」を2016年1月27日にリリースすることを発表した。これだけなら特に驚くようなニュースではないが、この「R-and U」はCD-R。里咲りさ本人が音源をCD-Rに焼き、梱包した商品がタワーレコードの店頭に並ぶという。タワーレコードにCD-Rを流通させられること自体は知っていたが、そこまでの作業をすべてひとりでする事例は聞いたことがない。そして少なからぬ人が知っている。「そんなにCD-Rを焼くならば、CDをプレスしたほうが安い」と。

里咲りさは、弱冠23歳にして、自身が設立したフローエンタテイメントという会社の代表を務めている「社長」だ。また、「少女閣下のインターナショナル」という奇妙な名前のアイドルグループの運営(スタッフ)にしてメンバーでもある。

少女閣下のインターナショナルは、2015年10月21日に日本テレビ系「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」に出演して話題を呼んだ。その一方、里咲りさが2015年にリリースしたCD-Rによるアルバム「THE-R」は、多くの音楽関係者から高い評価を受けることになった。今回流通を担当するタワーレコードによるインターネット配信番組「南波一海のアイドル三十六房」でも、音楽ライターの南波一海とタワーレコード代表取締役社長の嶺脇育夫が選出する「南波一海のアイドル三十六房 年忘れ!2015 Rグランプリ」を受賞している。

かくいう私も、2015年のアイドルポップスの年間2位に、「THE-R」収録の「カタルカストロ」を選出した。

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やはり里咲りさがすべてのCD-Rを焼いた「THE-R」を私はライヴ会場で買ったが、今回タワーレコードを通じて広く流通される「R-and U」にも「カタルカストロ」は収録されている。

「カタルカストロ」は、恋愛が始まる直前の感情の機微を生々しく描いた楽曲だ。私が里咲りさという微妙な立ち位置のアーティストを「アイドル」というよりは「シンガソングライター」と呼んでしまうのは、彼女の作詞作曲能力の高さゆえだ。「カタルカストロ」で歌われているのは、恋愛感情と苛立ちが混ざりあった、実はドロッとした感覚である。そうしたものをポップスとして昇華できる才能は強い。ステージで見せるような奇抜なパフォーマンスがなくても、音楽だけでしっかりと聴かせられるシンガソングライターが里咲りさなのだ。

里咲りさは、2016年1月7日に新曲「クライクライ」をYouTubeで公開したばかり。これまで以上にエモーショナルなヴォーカルを聴かせている。

その「クライクライ」公開に続く「R-and U」の「緊急リリース」。自分自身の手による完全DIYなのに、加速しているかのような勢いで作品を届け続ける里咲りさに、今回メールでインタビューを行った。ここまで私は生真面目な文章で記事を書いているが、それが恥ずかしくなるほど里咲りさはユーモアを操る人だ。

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タワーレコード限定シングル「R-and U」(アールアンドユー)※こちらの商品はCD-Rです。

2016年1月27日(水)発売 代表曲5曲入り 1,200円(税込)

1.シャイガール戦争

2.ボーンブレイクガール

3.クライクライ

4.かわいた空気の夜に

5.カタルカストロ

――今回、里咲りささんの楽曲の中からこの5曲を選んだのはなぜでしょうか?

里咲りさ アイドルシーンだけでなく、シンガーソングライターとして全国に知ってもらうための厳選曲となっています。実は個人的に好きな曲はほかにもあるのですが、里咲りさの楽曲感を伝える為、名刺代わりに直近のA面作品だけで構成しました。

――「THE-R」は多くの反響を呼びました。まだまだ局所的とはいえ、どうしてあれほど反響を呼べたと思いますか?

里咲りさ やっぱり相当な機材と時間と労力とお金をかけて作った楽曲を、わざわざCD-Rに焼いちゃうあたりではいでしょうか!! プレスしたほうがよほど安いんですけど(笑)。あと、デザインや入稿、CD焼いて売るまでを一人でやってるっていうのもスタイル的に面白かったのかあって。それと初期作品から近年作品を制作時系列順に11曲並べたので、その変化や成長の過程もおもしろかったんだと思います。たくさん評価していただきましたが、「THE-R」はここからの快進撃の前振りと思っていただければ!! あれで終わらないよと。

――里咲りささんは「上に行きたい」と公言されていますが、最終的にどのような存在を目指したいですか?

里咲りさ 個人レーベル(里咲が設立、代表。個人事業)のまま、世界に行きたいです。大きな会社じゃなくても、ひたすらやりたいことを追求すれば未来がちゃんとあるよ、時代は変わったよって大きな声で言えるように。今はまだ無力すぎて何も言えない! 新しい時代を切り開けるようがんばります!!

正直なところ、個人レーベルのまま活動しようとしていることにはかなり驚いた。里咲りさのような才能に着目していないメジャー・レーベルのA&Rほど怠慢なものはないと私は考えていたからだ。しかし、「手作り」そのものである彼女の音楽は、たしかにメジャー・レーベルからリリースされる音楽になんら劣るところはない。

「R-and U」のリリースに向けて、日立マクセルのCD-Rを250枚購入したという里咲りさ。彼女が2016年にどのような快進撃を見せてくれるのか楽しみにしたい。それにしても、まず250枚……。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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