来日した中国人観光客が飲食店で不満 「全員揃ってからご案内します」 空いてても「2時間制です」
春節は終わったが、東京・銀座などを歩いていると、中国人をよく見かける。観光客もいれば、在住者もいるようだ。富裕層の旅行客に限っていえば、混雑する春節時期をわざと外し、春節前と春節後に旅行するのがベストなのだ。
私は先日、都内在住の中国人、中国から旅行で来日した中国人らと銀座で食事をする機会があった。中国からきた人も日本通で、以前日本に住んでいたことがある。
旅行客は日本で買ったものなどを袋から出して見せてくれ、日本の落ち着いた雰囲気や商品のすばらしさなどを盛んに褒めていた。しかし、彼らが共通して、日本の飲食店に対して不満をもらす場面があった。それは――。
全員揃わないと店に入れない
都内在住のAさんは別の友人と4人で人気のカフェに行った。そのうち1人が少し遅れるという話だったので、先に3人で店に行ったところ、店内は空いていた。ラッキーだと思ったが、店員は「全員揃ってから、ご案内します。少々お待ちください」といって、後からきた2人組を先に店内に案内。4人揃うまで、案内してくれなかった。
Aさんは言う。
「どうしても理解できません。4人席のテーブルが空いていたので、そこに3人が先に入り、もう1人遅れてきても、何の支障もないと思うからです。混雑しているときも、同じことを言われますが、テーブルは同じでしょう?注文を一度にしてほしいという意味なんでしょうか?10人席を確保するために、先に1人か2人だけ行って待つ、というのとは違います。
私は長い間、東京に住んでいますが、とても不思議な日本人の行動、日本の飲食店のルールだと思います。中国ではこういう話、聞いたことがないです」
Aさんの話に全員が「そうだ、そうだ」と言い出した。私自身も同様の経験があり、「なぜ?」と思うことが多かった。しかも、遅れてくる人は1人くらいであり、1時間以上遅れてくるわけではない。テーブルは決まっており、4人席を1人で占拠するわけでもない。
飲食店に勤務する知人に聞くと、「並んでいるのに、あとから来た客がさっさと中に入っていくのは公平ではないように見えるから、という面もあるかもしれないが、たいていの場合、店のマニュアルでそう言うように、と決まっていて、機械的に回答しているだけではないか。お店の空き具合に応じて、臨機応変に対応できないのが問題ですね」とのことだったが、明らかに空いているのに「おかしい」「不思議」と思うことは他にもある。
飲食店の「2時間制」というルールだ。
厳格な2時間制のルール
Bさんが、日本の飲食店の2時間制について語り出した。Bさんは上海から日本旅行にやってきたが、日本語も堪能で、日本の習慣もよく知っている。予約の際、「2時間制です」とお店側から言われることもわかっていて、それを理解している。
「でも……」とBさん。
「入店したときには混んでいて、2時間制です、と改めて店員から言われても、わかりました、と言います。でも、先日入った居酒屋はガラガラ。店は23時が閉店です。私たちはそのまま店にいてもいいんだろうな、と思っていたら、9時半ごろになって、『まもなくお時間(2時間)になりますので……(そろそろ席を立ってください)』と言われてビックリ。
そのあと、お客さんはもう来ないでしょう?と思い、『もう少しだけ居させてください。追加注文しますから』と丁寧にお願いしましたが、ダメでした。景気が悪く、飲食店も必ずしも満席にならない今の上海では、とても考えられないような店員の態度です。追加注文さえ断るなんて……」
これについても全員が同意して、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になった。日本のサービスはマニュアル重視で画一的だ、サービスの質が低下した、との意見が多かった。
むろん、一概にこれだけで日本のサービスの質や、マニュアル化の負の側面を語ることはできないし、ケース・バイ・ケースだろう。だが、日本人の私も、同様に感じていた部分が多かったため、モヤモヤした気分になった。
これから日本には、確実にインバウンド客が増えるだろう。日本のサービスやおもてなしに対する期待も大きいと思われるだけに、柔軟な対応がますます求められるようになるのではと感じた出来事だった。