春節で来日した中国人観光客 「日本のサービスって、こんなに悪かったっけ?」と首をひねる
2月17日、中国の春節休暇が終了した。春節期間中、中国国内を旅行した人は延べ4億7400万人とコロナ禍前を上回った。一方、海外を旅行した人は延べ360万人で、ビザなし渡航ができるマレーシア、シンガポールなどが人気だった。日本も「近い」「安い」などの理由で主に個人客、富裕層らが来日、日本旅行を楽しんだ。
筆者の友人たちも青森県、東京都、京都府、大阪府、和歌山県などを旅行したが、彼らに旅行の感想を聞いてみると、おおむね「満足」だったものの、日本のサービス低下に対しては「ぼやき」が聞こえてきた。
サービス業に対する不信感
東京と京都を約1週間旅行した50代の中国人夫婦は、これまでに何度も日本旅行を経験し、日本文化への理解も深い。妻は日本語が流暢だ。彼らが中国に戻ったあと、感想を聞いてみると、こんな意見が返ってきた。
「日本では、中国で味わえない安堵感というか、落ち着いた気持ちでリラックスできるので、旅を堪能できました。しかし、前回(去年の夏)の旅行のときも感じましたが、日本のサービス業に対する不信感のようなものを、残念ながら今回も感じました」
具体的にどういうことがあったのか。
「都内のある小さな雑貨店に入ったときのことです。日本の雑貨はかわいらしくて大好きなので、私はいつもハンカチとか文房具などをたくさん買うのです。会計は6000円くらいで、私は迷わず支払いました。でも、ホテルに戻ったあと、レシートを見たら、1点多く計算されていました。
そのときは単なるミスだったのだろうと思い、別に気にしませんでしたが、そのあとも、何度も同じようなことが起きて、首をひねらざるを得なかったのです。正直、日本のサービス業の劣化、人手不足を痛感します」
2日後には、こんなことがあったという。
「同じく都内の雑貨店でのこと。日本のひな祭りの小物を1つ買ったのです。それは550円で、各商品に値札シールはついていなかったですが、コーナーで値段を確かめてからレジに向かいました。しかし、店員は『1100円です』という。私が『あれ?550円でしたけど』というと、店員は『いいえ、これは1100円です』という。
私は首をひねりながらも、言われた通り支払って、帰り際にその商品のコーナーに立ち寄ってみると、やはり550円でした。そこですぐに引き返し、店員に言うと、店員もそのコーナーまで確かめに行ってきて、ようやく『すみません、550円でした』といって返金したのです。とても小さなお店で、数えきれないほど商品があるわけではありません。もうあきれてしまいました。こんなこと、以前の日本ではあり得ないことだと思いました」
タクシー内での出来事
大阪や和歌山を旅行した40代の男性2人組も、タクシーで嫌な経験をしたと話してくれた。この男性は以前、大阪に住んでいたことがあり、日本語も堪能だ。
「私は大阪の道路にも詳しいので、運転手さんにまず大まかな行き先を伝えました。でも、『はい』とか『わかりました』という返事はなし。私の顔も見ません。見た感じでは、かなり高齢の運転手でした。自分は中国人だから、ちゃんと言葉が伝わらなかったのかなと心配になりました。
でも、車は行き先に向かって走り出したので、少し安心したのですが、そのあと、道路を曲がるところを早めに伝えても返事なし。結局、その道で曲がらず、そのまま走ったので、慌てて『さっきのところで曲がるんですけど!』というと、かなり先のほうまで行ってUターンしようとしました。正直、頭にきましたね。中国だったらアプリで最低評価をつけるところです」
この2人が経験したような話は他にも聞いた。小売店でのレジの打ち間違い、飲食店での注文の聞き間違い、タクシー内でのトラブルなどだ。一つひとつは大きな問題ではなく、店員はすぐに謝ったそうだが、「来日するたびに、こういうことが増えていると感じる」と2人は話す。
むろん、わずかな事例に過ぎないので、これだけで「日本のサービスは低下した」などと断言することはできないし、そんなつもりはない。
だが、こうした話は昨年も中国人観光客から何度も聞かされたし、私自身も最近「あれ?」と思うことが増えたのは事実だ。彼らは日本のサービス、おもてなしについて、もともと高く評価しており、訪日旅行ではそれを享受できると楽しみにしている。だからその分、落胆するという面もあるのではないかと感じた。