オートバイのあれこれ『浮き輪みたいなタイヤが面白い!スズキのバンバン』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『浮き輪みたいなタイヤが面白い!スズキのバンバン』をテーマにお話ししようと思います。
スズキの『バンバン』というオートバイを知っているでしょうか。
若い世代の人だと、2002年(平成14年)に登場した『バンバン200』を思い浮かべるかもしれませんが、ここで取り上げるのは、1970年代にデビューした元祖(?)バンバンです。
スズキは「全く新しい“遊びの乗り物”」というキャッチコピーとともに、『バンバン90』を1971年(昭和46年)にリリースしました。
71年というと、ホンダ『CB750FOUR』等の大排気量モデルが脚光を浴びていた頃。
スズキも言わずもがな『GT750』といったビッグバイクを精力的に作っていましたが、一方でそれとは全く趣向の異なる小型のレジャーバイクも開発しており、その代表的なモデルがバンバンでした。
バンバン90は気軽に乗れる新感覚のファンバイクとして支持を集め、ここからスズキは『バンバン50』や『バンバン75』等、バンバンをシリーズとして展開していくことになります。
バンバンシリーズ共通の特徴が、(画像を見て分かるとおり)存在感の強い極太タイヤ。
レクタングルタイヤ(バルーンタイヤ)と呼ばれる特殊なタイヤが前後に標準装備されていました。
ちなみにレクタングルタイヤとは、泥の路面(ぬかるみ)や砂場(砂浜)、積雪路面などで走破性を発揮するタイヤです。
そういえば、ヤマハの『TW200』も同様のタイヤを履いていましたね。
この極太タイヤだけでも十分に興味深いのですが、バンバンでさらに面白いのが、このタイヤの空気圧を調整するためのエアポンプ(空気入れ)が車体に備え付けられていたこと。
レクタングルタイヤはある程度たわむことでより走破性を発揮することから、スズキは「シチュエーションに応じて臨機応変に空気圧を調整できるように」と、エアポンプを標準装備したのです。
「このエアポンプがあれば、どんな場所でも“バンバン”走れるよ!」
という、スズキの遊び心に満ちた設計(配慮)だったといえるでしょう。
ノーマル状態で空気入れが車体に装備されているオートバイなんて、他で聞いたことありませんよね。
ただ、この極太タイヤにはトレードオフ的に短所もあり、舗装路のコーナリングではその太さがアダとなって車体がバンクせず、オンロードでの旋回性・コントロール性はイマイチでした。
バンバン以外にも、レジャーバイクにカテゴライズされるオートバイは各メーカーから色々と現れましたが、バンバンシリーズほど個性の強いモデルというのは、他になかなか無いように思います。