児童扶養手当の対応に変化のきざし 窓口の対応は変わるのか
8月24日、「8月の児童扶養手当の現況届 窓口嫌いをつくらないためには」という文章を書きました。
児童扶養手当というひとり親に支給される手当の、年に1回8月の現況届で、
「男性とおつきあいしていないですか」
「妊娠していないですか」(妊娠届を書面で出させる)
など聞かれているという事実についてだ。
これは、1980年のいわゆる「事実婚についての通達」に基づくものであり、自治体がまじめに業務をすると、こうしたプライバシーに踏み込む聞き方にならざるをえないこと、であるから本質的には、児童扶養手当法上の事実婚の定義が問題であるとした。
また、こうしたプライバシーに踏み込んだ自治体窓口の対応により、窓口嫌いをつくり、窓口に困りごとを相談しなくなり、ひとり親の孤立を加速しているということを指摘した。
であるので、50歩(いや100歩かもしれないが)譲って、とんでも事実婚の通達に基づいたとしても、窓口の対応としては
「児童扶養手当法上の事実婚にあたると手当が支給停止になることがあるので、もうしわけありません、やむをえずお聞きするのですが、あなたは男性とのおつきあいはしていませんか」
という聞き方にしたらどうだろうか、という提案をした。
1週間後の事務連絡
そして、なんと1週間後の8月31日、厚生労働省家庭福祉課は、各都道府県 児童福祉主管課にあてて、事務連絡を発した。
内容を見てみよう。
曰く、
「現況届ど各種出の窓口対応において、支給要件における 事実婚 の関係について十分な説明がないままに 、異性との交際関係を質問したり、必要以上の届出を求める等の事例があり、それらの対応を不快に感じた受給者が 必要な相談ができないことや情報を十分に 得られていないという声があります。」
この必要以上の届出というのは妊娠届のことを言うのではないかと推察します。しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西の調べでは、妊娠届を提出させていた自治体は、大阪府羽曳野市など複数にのぼります。(ぜひさらに多くの実態を教えてください、受給者のみなさま)。
ではありますが、こうした事態を、厚生労働省が間接的な言い方にしろ、認めたのは私の知る限り初めてのことである。
そして、厚生労働省はこう続けている。
「児童扶養手当法 (昭和 36 年法律第 238 号) 第 28 条の2においては、認定請求や届出を行う者に対し、相談応じ必要な情報の提供及び助言も行うものとしているほか、自立のために必要な支援を行うことができるとされています。ひり親家庭の支援については、 「すくすくサポート・プロジェクト(すべての子ども安心と希望の実現プロジェクト)」(平成27年12月21日子どもの貧困対策会議決定)により、窓口のワンストップ化として、支援を必要とするひとり親が行政の窓口に確実につながるようにすることなどを進めることとしています。
各都道府県におかれては、これらの趣旨を踏まえた窓口の対応と、別添通知の内容について、管内市町村(特別区を含む。)に周知いただくとともに、取扱いに遺漏のないよう特段の配慮をお願いします。」
ひとり親が行政の窓口に確実につながるようにする、だが聞くべきことは聞かなければならない、そのためには、「配慮」と「遺漏のない」手続きを求めるということにした、というわけである。
厚生労働省の対応に変化のきざし
今回の事務連絡について、わたしは(50歩譲った立場で)、一定評価したいと思う。
なぜ、より困難を抱えるひとり親、シングルマザーが孤立するのか、窓口に相談に行こうとしないのか、その問題点をある程度、理解したからこその対応だと思うからだ。
社会的包摂をめざし、”すくすくサポート”しようとしても、ボトルネックは窓口のこの対応であるからなのだ。
わたしたちのこの問題提起を受けて、すばやく事務連絡を出した厚生労働省の姿勢には、なんとかしたいという意欲を感じている。
現場で何が起こっているのか、知ろうとしなければ、ひとり親の孤立や子どもたちの困窮はなくならない。
より困難を抱えているひとり親であればあるほど、窓口と対立関係になりやすく、そして、社会的な孤立に至っている。
なぜ最初につながらなかったのか。 なぜ数年前にこの問題が解決しなかったのか。
わたしたちは団体の民間だからかけてくれる相談で何度もはがゆい思いをしてきた。
来年はどうなるのか、そして根本的な問題は
ではあるが、懸念点もある。
1、来年の児童扶養手当の窓口で、果たしてこの事務連絡を活かした対応がされるのか。自治体に浸透するのか。
2、根本的には児童扶養手当法上の事実婚のムリムリな定義の問題であるから、これは改善されるのか。
この点については、引き続き問題提起していきたいと思います。
各地の児童扶養手当の受給者のシングルマザー、シングルファーザーのみなさん、今後も自治体の対応を見守り、情報をくださるようお願いいたします。
この問題は小さな問題ではない。100万世帯を超える児童扶養手当の受給世帯の子どもたちが支援につながるのかに影響する深刻な問題である。