「モンスターモンスーン」に見舞われるパキスタン 一体どれだけ降ったのか
強烈熱波に記録的干ばつで、雨雲のひとつも恋しい中国やヨーロッパですが、その反対にパキスタンには雨雲が住み着いて、人々が悲鳴をあげています。
6月中旬から断続的に降り続いている雨季の大雨の影響で、パキスタンでは1,033人が死亡したと当局が発表しました。そのうち3分の1は子供です。影響を受けた人数は、人口の14%にあたる3,300万人で、約100万軒が被害に遭い、150の橋と、のべ3,500キロにわたる道路が壊れたそうです。
下の動画は、パキスタン北部のスワット川の川岸に建つ「ニューハネムーンホテル」という高級ホテルが壊れる瞬間です。幸い、全員避難して死者は出なかったそうですが、濁流の恐ろしさをまじまじと感じさせる映像です。
パキスタンは2010年に観測史上最悪とされる洪水が発生しました。記録的なモンスーンの雨によって、およそ2,000人が死亡、国土の5分の1が水に浸かりました。今年は、それ以来最悪か、ややもすれば匹敵するような大雨となっています。
一体どのくらい降ったのか
今年パキスタンは6月下旬から、雨季、いわゆるモンスーンシーズンに入りました。夏季、陸上が高温になって空気が上昇し低圧部となると、その空気を補うようにインド洋からの熱く湿った空気が吹いてきて、雨が降ります。国土の7割が乾燥地帯ですが、こうして6月から9月にかけては、雨が降りやすくなるのです。
とはいっても、その雨量は多くなく、例えばインダス文明の遺跡で有名なモヘンジョダロでは、例年の8月の月間雨量は35ミリ、年間降水量でも100ミリです。
ところがです。今月は29日までに780ミリも降っています。つまりいつもの8月の33倍、もしくは3年分の雨が降ってしまった計算になるのです。
さらにもっと多くの雨が降ったのはパディダンという場所で、ここでは今月に入ってから1,228ミリの雨が降っており、これは8月の月間降水量の26倍に匹敵します。
パキスタンの気候変動大臣は、こんな風に強烈な今年の雨季を、「モンスターモンスーン」と呼んでいます。
この異常な大雨の理由として、パキスタン沖の海水温が高かったこと、低気圧がいくつも発達したこと、そして気候変動などが言われています。
洪水に見舞われる国々
今夏は、パキスタンの隣国アフガニスタンやイラン、またイエメンなどの中東でも例年より異様に多く雨が降り、洪水が多発しています。
また南半球の豪州シドニーでは、今年初めからの降水量が観測史上もっとも早く8月に2,000ミリを超えたほか、ニュージーランドのウェリントンやクライストチャーチなどでは、観測史上最も雨の多い冬(6月から8月)を記録しています。
降らなすぎるところがあれば、降りすぎるところもある。地球全体ではバランスが取れているとはいえ、今年の夏は至極、迷惑な天候が世界を襲っています。
*参考リンク*
パキスタン気象局のHP