「除霊」で妻を死亡させた准教授が逮捕される:マインドコントロールの恐怖
■大学准教授(52)、妻への「除霊」傷害致死で逮捕
逮捕された夫(52)は、国立大学(旧帝大)大学院出身の博士(農学)で、准教授(以前の言い方だと助教授)。専門は、応用微生物学、応用生物化学、 酵母遺伝学など。所属は、5つの学部と大学院のある熊本市内の私立大学の、生物生命学部応用微生物工学科。
報道によると、数年前から夫婦で「除霊」のために通っていたようです。この日も二人で訪問し、結果的に傷害致死となったようです。押さえつけ、大量の水を飲ませるなどしたら危険だと普通でもわかりますが、農学や生物の先生なら、なおさらです。あるいは途中でぐったりとしたときに、とても危険ですぐに救命措置が必要だとわかるはずです。
しかし事件は起きてしまいました。まだ詳細は不明です。
補足7月25日:
■科学と宗教
科学者でも、もちろん神仏を信じます(当然無心論者もいるけれど)。万有引力のニュートンも遺伝法則のメンデルも、キリスト教徒(神学者、修道院の司祭)です(科学と宗教)。現代においても、りっぱな科学者で敬虔な宗教家はたくさにるでしょう(『科学者とキリスト教―ガリレイから現代まで』 ブルーバックス) 。また宗教家で科学好きな人も、たくさんいるでしょう。
科学と宗教は本来対立するものではないと思います。科学に詳しい宗教家も、信仰をもつ科学者も、どちらも良い仕事をするでしょう。
では科学者なら、偽宗教やカルト宗教のワナにはまらないか。残念ながら、なかなかそうはいかないと思います。
オウム真理教のときも、優秀な弁護士や医師が取り込まれ、殺人に関わる人まで出ました。経済学者なら株で損しないかと言えば、そんなことはないでしょう(大学の研究室にも、投資マンションとか、先物取引の営業の電話はよくかかってきます)。
科学者、研究者で、迷信、ジンクス、占いを信じる人はたくさんいるでしょうし、詐欺に会う人もいるでしょうし、特殊な思想を信じ込んでテロリストになってしまう人もいるでしょう。世間知らずで、のめりこみやすい人なら、特に危ないかもしれません。
■除霊と悪徳宗教
何のための除霊だったのでしょうか。夫婦で数年間通っていたそうです。除霊していた「除霊師(宗教家)」は、30年ほどこの仕事をしていたそうです。どこで、夫婦はこの男のことを知ったのでしょうか。
今回の除霊の目的はわかりませんが、たぶん金儲けなどではなく、悩みがあったのでしょう。何とかしたかったのでしょう。
悪徳宗教は、人の弱みに付け込みます。たとえば、教祖や幹部が霊感商法による詐欺罪で摘発された「法の華」は、病院の前で待ち伏せしたり、「前生の悪い因縁を放っておくとガンになる」「このままでは2001年に人類は滅亡する」などと言って、不安をかきたて、高額の商品を売りつけていました。
法の華は「足裏診断」でしたが、無料で手相を見るという悪徳宗教、霊感商法もあります。最初は手相をほめますが、その後に脅し、高額商品を買わせます。手相に興味のあるような人が、恐ろしい手相が出ているなどと言われれば、不安になるでしょう。
■宗教、迷信とマスメディア
テレビなどのメディアで不用意に心霊関係を扱うことも、危険を高める可能性があるでしょう。法の華もオウム真理教も、当初メディアで取り上げられました。
BPO(放送倫理・番組向上機構 )放送基準によれば。「迷信は肯定的に取り扱わない」。「占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」とあります。
宗教に関しては、「信教の自由および各宗派の立場を尊重し、他宗・他派を中傷、ひぼうする言動は取り扱わない。~尊厳を傷つけないように~客観的事実を無視したり、科学を否定する内容にならないよう留意する」とあります。
占い師さんの中にも立派な方はもちろんいるのですが、マスコミで不用意に迷信や占い、心霊などを扱うのは、悪徳商法の危険性を高めたり、人々の不安をあおってしまう可能性もあるでしょう。
心理学の研究によれば、人は不安が高まると説得に乗りやすくなります。
「玄関に入ってすぐ悪霊がついているとわかった」。こんなことを言う霊感商法詐欺もあるのです(警視庁ホームページ)。
■マインドコントロール
悪徳な破壊的カルト宗教によるマインドコントロールは、とても巧みです。善良な人、有能な人、やる気のある人、こういう人たちこそワナにかかります。
多少の商品を買うならともかく、命に関わるようなことをするだろうかと思われるでしょう。しかし、これまでも度々事件化しています。自分の命を危険にさらし、人生を台無しにする人、全財産を取られる人、家族の健康や命を奪われた人々がいます。今回のように、家族を除礼しようとして、殺害してしまった事件も複数起きています。
1987年、藤沢悪魔払いバラバラ殺人事件。
1995年、福島悪魔払い殺人事件。
1999年、成田ミイラ化遺体事件(ライフスペースミイラ事件)。
2000年、泉南一家餓死事件。
2007年、不動妙の仕事殺人事件。
2011年、秋田除霊傷害致死事件。
2011年、熊本女子中学生滝行窒息死事件。
悲惨な事件が次々起こります。残酷な猟奇殺害事件もありますが、もともとの動機が家族への愛であり、幸せになろうとしていたのだとすれば、なおいっそう悲惨です。
家族には、様々な問題が起きます。体の病気、心の病気、経済的問題、暴力、非行、引きこもり。信仰心が助けになることもあるでしょう。祈りには力がると、私も思います(たとえば、祈られている人は病気の直りが早いという実証的研究もある)。
しかし、本当の神仏やまともな宗教家が、さらなる悲劇を引き起こすようなことをさせるわけがありません。まともな宗教は、人を神仏のロボットにはしません。
>自分のことは自分で決めるのが人間!?:映画「ノア 約束の舟」から考える人間観と幸せになる方法:Yahooニュース個人
そうは言っても、マインドコントロールされた後では、気づかせるのはかなり困難です。第三者による介入、マインドコントロール被害の予防が必要でしょう。
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カルト教団から家族や親友を守る法:マインドコントロールの解き方:こころの散歩道
地下鉄サリン事件から18年:オウム真理教とマインドコントロールの心理学:Yahooニュース個人「心理学でお散歩」
監禁事件の被害者などが犯人の言いなりになるのも、恐怖や賞罰を巧みに使ったり、洗脳やマインドコントロールに近いことが行われることによるものでしょう。(ネットと世間に流れる「少女はなぜ逃げなかったか」に答える:岡山小5少女・倉敷女児誘拐監禁事件被害者保護のために)