きぬた歯科、インプラント看板の商標登録に成功
「『ぶっ飛ばすぞ』“パクリ看板” に激怒したきぬた歯科院長を直撃! それでも法的措置を取らない意外なワケ」という記事(smartFLASH)を読みました。首都圏の方にはおなじみと思われる、原色の背景に院長の顔写真大写しの例のインプラント手術の看板の話です。個人的には背景色は黄色という認識でしたが、最近はマゼンタ、黒、ブルーという(一般デザイナーではあまり思いつかないと思われる)配色になっているようです。
この形式のインプラントの広告看板と言えば「きぬた歯科」の名前を思い浮かべる方が多いと思いますが、よく見るときぬた歯科以外の看板も結構多いですよね。どう考えても便乗ですが、自由競争の商売にある程度の摸倣はつきものなのでしかたないとも言えるでしょう。
しかし、配色まで寄せてきた看板が出てきたことで、きぬた歯科も黙認することはできず、看板のデザインを商標登録出願したそうです。関連出願は3件あります。1つめは背景色にインプラントの文字のみが入っているパターン(下画像参照)で、今年の6月12日に6813316号として既に登録されています。2つめは背景色のみのパターンの出願(下画像参照)で、同じく、6月12日に登録6813315号として登録されています。なお、これはいわゆる「色彩のみの商標」ではなく、通常の図形商標です。
なお、冒頭の引用記事では、
と書かれているので、一瞬「色彩のみの商標」で登録できたのかと思いましたが、そうではありませんでした(本記事の初稿では私の誤解による間違いがありました、どうもすみません)。
3つめの出願は看板デザインそのまんま(タイトル画像参照)(商願2023-102782)で、こちらは、8月28日に登録査定が出て、登録料も納付されていますので、今すぐにでも登録されるでしょう。(追記:その後、9月17日付けで6844708号として登録になりました。)
さて、冒頭の記事にはまだ重要な情報があって、アンケート調査により、パクリ看板を見てきぬた歯科の看板と思ってきぬた歯科に来院したケースが結構多いことが判明したことから、直ちに権利行使をするつもりはないとのことです(もちろん、今後一切権利行使をしないというわけであありません)。
基本的に、知的財産権の権利行使をするかどうかは権利者の腹づもり一つです。パクリを黙認した方がビジネス的に美味しいと思われるのであれば権利行使をしないのも自由です。二次創作等における著作権ではたまにあるパターンですが、商標権においても同じようなパターンがあるのは珍しいかもと思ってしまいました。