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殿堂選手が持っていた球団記録を、5シーズン未満で上回る

宇根夏樹ベースボール・ライター
タイ・フランス(シアトル・マリナーズ)Apr 29, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月7日、タイ・フランス(シアトル・マリナーズ)は、球団記録を樹立した。1回表の打席で右足にぶつけられ、2日前に並んだ、エドガー・マルティネスの89死球を上回った。

 殿堂選手のエドガーは、1987年から2004年まで、マリナーズ一筋にプレーし、2055試合に出場した。シーズン最多の死球は、1997年の11だ。あとの17シーズンは、二桁に達していない。

 フランスは、2020年8月のトレードで、サンディエゴ・パドレスからマリナーズへ移籍した。6月7日は、出場623試合目。パドレスで89試合に出場しているので、マリナーズでは534試合目だ。

 過去3シーズンの死球は、いずれも20を超えている。2021年が両リーグ最多タイの27死球、2022年が5位の21死球、2023年は最多の34死球。昨シーズンは、2位より13死球も多かった。今シーズンは、6度当てられていて――あるいは当たっていて――6月7日の時点で13位タイ。通算死球は、パドレス時代の8死球と合わせ、98を数える。

 死球が1位でなくなっても、エドガーは、いくつもの球団記録を保持している。例えば、出場2055試合、514二塁打、838長打、1283四球、1261打点などは、いずれも、マリナーズで最も多い。

 309本塁打と2247安打は、それぞれ、417本塁打のケン・グリフィーJr.と2542安打のイチローに次ぎ、球団2位に位置する。安打は、イチローに抜かれるまで、球団1位だった。

左から、P.クオントリル、イチロー、E.マルティネス Jul 10,2001
左から、P.クオントリル、イチロー、E.マルティネス Jul 10,2001写真:ロイター/アフロ

 エドガーは、球団記録を打ち立てただけではない。

 1995年、マリナーズは、初めてポストシーズンに進出した。ディビジョン・シリーズでニューヨーク・ヤンキースと対戦し、ヤンキー・スタジアムで2敗を喫した後、キングドームで3勝を挙げた。

 このシリーズの第4戦に、エドガーは、2本のホームランを打ち、7打点を挙げた。0対5で迎えた3回裏の3ランと、6対6の8回裏にグランドスラムだ。そして、第5戦は、1点を追う11回裏、無死一、三塁の場面で、ジャック・マクダウェルの投球をレフトの左へ弾き返した。三塁走者のジョーイ・コーラに続き、一塁走者のグリフィーJr.も生還。エドガーのこの一打は、「ザ・ダブル」と呼ばれている。

 なお、フランスは、6月8日も出場する予定だったが、試合前にラインナップから外れた。前日の死球後、4打席に立ち、二塁打を2本打ったものの、右足の状態が思わしくないらしい。大事に至らないことを願う。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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