「73歳定年制」廃止の前に「被選挙権年齢」の引き下げを早急に
自民党のベテラン議員から、衆議院比例代表の「73歳定年制」を撤廃するよう求める声が上がっている。
6月12日、自民党の衛藤征士郎元衆院副議長(79)、平沢勝栄広報本部長(74)ら70歳以上のベテラン議員有志は、二階俊博幹事長、下村博文選対委員長と党本部で面会し、党が内規で定める衆院比例代表候補の73歳定年制の廃止を申し入れた。
その理由として、平沢議員は、「年齢による区別」はおかしい、という。
確かに、「人生100年時代」とも言われており、年齢差別の撤廃もしくは定年年齢の引き上げは一理あるかもしれない。
しかし、政治家の資格に「年齢」を求めないのであれば、まずは現状25歳・30歳にならないと出馬さえできない「被選挙権年齢」を引き下げるべきだ。
世界的に高い日本の被選挙権年齢
日本では世界的にも高い被選挙権年齢・供託金を設定しており、これが若者の政治参加を妨げる大きな要因になっている。
被選挙権年齢が判明する194の国・地域のうち、18歳が54か国(27.8%)、21歳が60か国(30.9%)と、多数の国が21歳以下に被選挙権年齢を設定しており、特に主要先進国では18歳が主流になっている。
こうした現状を踏まえると、日本も早急な年齢の引き下げが求められるが、具体的には、2016年に選挙権年齢が18歳に引き下げられ、2022年に成年年齢が18歳に引き下げられることを考えると、18歳に引き下げるのが妥当であろう。
実際、筆者が代表理事を務める日本若者協議会が、若者政策推進議員連盟に加盟している若者団体(44団体、2018年当時)にアンケートを実施したところ、約7割が「18歳に引き下げるべき」だと回答している。
その理由としては、諸外国の年齢や、若手政治家がいない現状(現在、20代の国会議員は一人もいない)、政治家の質に年齢は関係ない、等が挙げられた。
「すべて18歳まで下げて良いと思います。OECD諸国を見ても18歳が多い。政治に関心を持てる人を増やしていくためにも、同じ年代から政治家が出るくらい身近な存在になっていくと良いなと思う。若いから何もできないなどの意見もあるが、投票があるから、その点は問題ないと考えている」
「被選挙権年齢が高いことで、若者の民意が十分に反映されず、結果、若者の政治離れを助長していると思います」
「そもそも、被選挙権に求める資質(政治リテラシー等)と年齢が相関しているのか疑問。若くても早くから社会経験を積み、海外生活もして、インターネットで広範な情報を得ている若者もいる」
また、現在は衆議院と参議院選挙で被選挙権年齢が異なるが、それも「統一すべき」だという意見が多数を占めている。
「現状、被選挙権年齢の差をつけているが、実際に衆議院と参議院で構成員に大きな差があるとは思えない」
「仮に衆議院と参議院で違う役割を与えるのであれば、被選挙権年齢ではなく、完全比例代表制や性別など選出の方法で差別化を図るべき」
これまで度々言及しているように、日本で若者の政治参加が遅れている最大の理由は、直接参画の機会の乏しさであり、そのためには若者への権限付与が欠かせない。
「73歳定年制」撤廃の議論を行うことは必ずしも否定しないが、同時に若者が出馬する権利を妨げている被選挙権年齢の議論を進めなければ、単なる自己保身のための議論であり、これを認めるわけにはいかないだろう。
また、日本では政党の党員資格も各党18歳と、比較的高く設定されているが、スウェーデン等では13歳から政党の党員になることができるため、選挙権を持つ前から政治参加の経験を持つ有権者を育てることにつながっている(日本は全く経験のないまま18歳になって急に「投票に行こう」と言われる)。
そのため、日本若者協議会では、政党の党員資格年齢の16歳への引き下げ(義務教育修了後)も提言しており、「73歳定年制」撤廃の議論と同時に、こちらも検討して頂きたい。