コロナショックで進む「若者の政治参加」。今後意識したい「参画」のあり方

出典:change.org

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「若者の政治参加」が進んでいる。

既に何本か記事を書いているように、留学生への奨学金停止や自費帰国・自費隔離の問題については、学生が声を挙げたことによって、奨学金停止は解決、自費帰国・自費隔離についてはまだ検討中だが、文部科学省の緊急経済対策パッケージに含まれている。

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自粛要請の影響は学生にも大きな影響を及ぼしており、その現状を伝えるため、筆者が代表理事を務める日本若者協議会でアンケートを実施、その他の学生団体の調査も含めて、緊急提言を与党に提出した。

その結果、「家計が急変した生徒・学生等に対する支援」、「日本人留学生への支援」、「研究費の年度繰り越し」、「Wi-Fi環境の整備」などが与党の提言に反映され、こちらも政府の緊急経済対策に含まれている。

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全国の高校生らが休校延長を求め200以上の署名キャンペーン立ち上げ&ストライキ

学校再開を巡っては、全国各地の高校生たちが休校延長を求めて200以上の署名キャンペーンを立ち上げ、愛知県や京都府など、集まった声を受けて、休校延長を決定する自治体も出てきている。

兵庫県では高校生が2万件以上の署名を集め、実際に延期が発表された。出典:change.org
兵庫県では高校生が2万件以上の署名を集め、実際に延期が発表された。出典:change.org

賛同数を多く集めている署名キャンペーン

兵庫県公立高校休校延長要請」(賛同数21,318)

【緊急署名】愛知県の公立高校・小中学校」の休校延長要請」(賛同数12,437)

京都市立・府立校の教育活動の再開の延期を求めます!」(賛同数8,877)

広島県公立高校休校延長要請」(賛同数7,060)

静岡県学校休校要請」(賛同数5,526)

愛知県の小中高等学校の休校延長を!」(賛同数5,033)

茨城県の休校期間を延長してください!」(賛同数4,820)

※賛同数はいずれも4月12日時点

また、茨城県立日立一高では、学校が再開されたことに反発した3年生の一部生徒が4月8~10日に「ストライキ」を起こし、県内の全県立校を臨時休校するよう求める「通告書」を県教育委員会などに送付。

これまであまりなかった投票以外の「政治参加」、当事者の声が政策の意思決定に反映される事例が顕著に増えつつある。

「参画」と「非参画」

なぜ今回署名や政策提言(陳情)は実際に影響を及ぼすことに成功しているのか。

ここで意識したいのは、「参画」と「非参画」の違い、影響力の差である。

これまで日本の若者の政治参加で行われていたのは、ほとんどが形式的なものであった。

つまり、大人が言いたいことを子どもに言わせたり(操り参画)、問題自体を理解させずにデモなどで表に立たせる(お飾り参画)、若者に意見は言わせるが、実際のプロジェクトには反映させないもの(形だけの参画)、表面上は「参加」していても、実際には全く影響を与えていないものがほとんどであった。

ニューヨーク市立大学教授の環境心理学者であるロジャー・ハートは、「子どもの参画のはしご」で参画の段階を8つに分け、下三段を「非参画状態」として批判しているが、政治に限らず、学校の自治組織である生徒会など、日本の多くのプロジェクトがそれら3つに当てはまる。

「子どもの参画」ロジャー・ハートから筆者作成
「子どもの参画」ロジャー・ハートから筆者作成

特に日本の政治参加で欠けていたのが、6番目の「大人主導で意思決定に子どもも参画」、8番目の「子ども主導の活動に大人も巻き込む」である。

有識者会議などの行政府の政策議論の場はもちろん、選挙の公約や候補者選定に関わる機会もほとんどない。

一方、今回実際に影響を与えている署名や政策提言は、8番目の「子ども主導の活動に大人も巻き込む」段階である。

若者が主体となって現状の課題点を整理し、政策の意思決定者(政治家や行政府)に要望を直接伝えている。

実際に反映されるか否かは、要望の妥当性や代表性、意思決定者との人脈、予算制約など様々な要素が影響するが、それでも今回この段階の活動が広がってきたのは画期的である。

こうした「子ども・若者の参画」を重視し、長年推進してきたヨーロッパでは、政党の青年部が推薦する議員を決めたり、青年部が与野党の連立政権に反対すれば、党大会を開くなど、大人と対等な立場で意思決定に参画している(そもそも日本では18歳にならないと党員になることができないが、スウェーデン等では13歳から党員資格を有し、有権者になる前から政治に参画している)。

「直接参画」と「間接参画」

「参画」と「非参画」の違いに加え、より重要なのが、「直接参画」と「間接参画」の違いである。

「間接参画」と「直接参画」の違いについて筆者作成
「間接参画」と「直接参画」の違いについて筆者作成

これまで、日本の若者の政治参加で重視されてきたのは、「投票」を代表に、主に左側の「間接参画」である。

しかし現実的に、影響を及ぼそうとすれば、右側の方がより重要である(今回の署名立ち上げも政策提言も直接参画である)。

政治家として活動するのと、一有権者として投票するのではどちらが影響力を有しているか、少し考えれば明らかであろう。

日本では、何か政治家に不満があったら(今回のコロナ対策がまさにそうであるが)、「次は投票に行こう」という書き込みはSNSでよく見かけるが、「こういう人を国会に送り出そう」、「次はこの人を当選させよう」という動きはあまり見られない(仮にIT系の起業家が一定数政治家に転身すれば、日本政府の電子化は一気に進むだろうが、そういう発想にはなかなかならない)。

主権者教育で教えられている内容もほとんどが「間接参画」の「有権者教育」(投票に行く人を育てる)であって、「直接参画」は教えられない。

そして、以前から何度も書いているように、政治参加における日本の若者の課題が「政治的有効性感覚の欠如」(自分で社会を変えられると思っていない)であることを考えると、重要なのは「直接参画」の機会を増やし、実際に社会を変える経験を積んでもらうことだ。

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それでも、遅々としてではあるが、ようやく日本でも「直接参画」が広がり始めた。

そうなると、次のフェーズはより「インナー」部分である行政府の審議会に「若者枠」を設置すること(ヨーロッパ諸外国では若者協議会が政策決定過程に入ることが法律で規定されている)、若者の出馬になってくる。

ただ、公約も候補者も(大人に)決められた状態で投票する選挙権年齢は18歳に引き下げられた一方で、より政策への決定権の強い政治家になるための被選挙権年齢は25歳・30歳のままである。

「若者よ、投票に行こう」と呼びかける一方で、自らの権限は渡そうとしない。

そうした矛盾した態度が、若者の政治参加を遅らせ、社会の停滞も引き起こしているのは明らかである。

日本の若者の政治参加が次のフェーズに行くためには、直接参画の拡大、特にその参加資格である被選挙権年齢の引き下げが重要になってくるだろう。

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