ザニオーロ、2時間で「負傷欠場」から「遠征参加」の謎 至宝に漂う不穏なローマ内紛騒動
前節に続き、軽傷のため遠征メンバーから外れるはずだった。指揮官がそう明言していた。だが2時間後、ローマが発表した招集リストには、ニコロ・ザニオーロの名前があった。
パウロ・フォンセカ監督は、ジェンギズ・ウンデルの負傷を受け、ザニオーロを招集したと公式に発表した。だが、わずか2時間での決定変更は、イタリアのメディアをざわつかせている。
◆コロナ禍でシーズン中に復帰も…
1月12日、ザニオーロはユヴェントス戦で右ひざ前十字じん帯断裂と外側半月板損傷の重傷を負った。EURO2020出場が絶望的になり、本人と周囲が大きく落胆したのは言うまでもない。
だが、新型コロナウイルスのパンデミックという思わぬ事態に、イタリアの若き至宝はシーズン中の復帰を遂げる。7月5日のナポリ戦で途中出場を果たすと、11日のブレッシァ戦ではゴールをマーク。約7カ月ぶりにネットを揺らし、本格的な復活への期待は高まるばかりだった。
雲行きが怪しくなったのは、続く15日のエラス・ヴェローナ戦だ。1点リードで迎えた後半66分から途中出場したザニオーロは、チームメートのジャンルカ・マンチーニに叱責された。相手が必死に同点弾を目指すなか、ザニオーロが守備に奮闘しなかったことへの怒りとみられている。
試合後のインタビューで、ジョルダン・ヴェレトゥもザニオーロの姿勢の問題に言及した。さらに、フォンセカも公の場でマンチーニを支持。ザニオーロの姿勢を批判し、21歳にお灸をすえた。
◆“若気の至り”が問題化
かつてU-21代表でルイジ・ディ・ビアージョ(現スパル監督)に規律処分を科されるなど、ザニオーロには以前から“若気の至り”を懸念する声がある。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のアンドレア・プリエーゼ記者は、「ちょっとした若気の至り」としたうえで、それが将来的に大きな問題とならないために、フォンセカがお灸をすえたと伝えていた。
だがその後、「ザニオーロ問題」は大きくなる一方だ。
古巣相手で注目されていた19日のインテル戦、ザニオーロはメンバー外となり、スタンドで新旧チームメートの戦いを見届けた。フォンセカは負傷と強調したが、周囲の雑音は増していく。「ヴェローナ戦後のロッカールームで一部のベテランが叱責した」「復帰前にクラブが用意したユースとのミニゲームを10分で切り上げて周囲をあ然とさせた」など、次々に不穏な報道が続いた。
◆一部選手との関係は破たん?
そして21日、冒頭で紹介したように、フォンセカは負傷を理由にザニオーロを翌日のスパル戦に招集しないと一度は明言しながら、2時間後に一転して遠征メンバーに含めると発表した。
騒がしい地元メディアをはじめとするマスコミが、急転直下の“復帰”の「謎」を放っておくはずはない。
フォンセカは、本人の意志を確認したうえで、ザニオーロを遠征に含めたと発表した。だが、メディアの中には「では当初は本人に確認せずにメンバーから外したのか」と疑念の声がある。それとも、万全を期してスパル戦を休養とすることで、事前に合意していたということだろうか。
『ガゼッタ』や『コッリエレ・デッロ・スポルト』、『Calciomercato.com』など複数メディアは、ザニオーロと一部選手の衝突は確かと報じている。中には関係が破たんしたと、内紛を騒ぐ声もある。
◆去就問題への発展の懸念
ザニオーロは国内外のビッグクラブが関心を寄せる宝石だ。ユヴェントスや古巣インテル、最近ではトッテナムなど、複数の強豪が熱い視線を送っているとの噂は後を絶たない。そして、ローマが財政問題から主力放出を繰り返してきたのは周知の事実だ。
だからこそ、お家騒動は去就問題へと発展しかねない。報道によると、ザニオーロの代理人が来週クラブと協議する予定だ。選手サイドは、売却を考えていないとされるローマが、ザニオーロをプロジェクトの中心にするのなら、本人を守るように求めると言われている。
シーズン再開後に3連敗したローマだが、その後は3連勝と挽回し、引き分けたインテル戦でも内容で上回った。フォンセカは3-4-2-1にシステムを変更し、リーグ終盤を戦い抜こうと必死だ。8月にはヨーロッパリーグも待っている。
ザニオーロを巡る不穏な空気は、ローマとフォンセカの今後にどう影響するのだろうか。