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なぜセリエA新年初戦で快勝の監督が沈黙したのか? 「チームの一員」を失ったナポリ悲嘆

中村大晃カルチョ・ライター
2025年1月4日、セリエA第19節フィオレンティーナ戦でのナポリのコンテ監督(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

ナポリは見事な勝利を収めた。だが、2025年の最初に訪れたのは、喜びだけではない。

1月4日のセリエA第19節で、ナポリはフィオレンティーナに敵地で3-0と勝利した。フビチャ・クバラツヘリア、マッテオ・ポリターノとレギュラーの両翼を欠きながら、難敵撃破で首位に立っている。

だが、アントニオ・コンテ監督は試合後、フラッシュインタビューにも会見にも姿を見せなかった。会見にはアシスタントコーチのクリスティアン・ステッリーニが代理で出席している。

なぜ、新年初白星をあげた指揮官が沈黙したのか。それは、ナポリが大事な人物を失ったからだった。まだ10代のはじめだったダニエレくんが、白血病との闘いの末に亡くなったのだ。

■アンギサがセレブレーションでエール

『La Gazzetta dello Sport』紙によると、出会いは2022年の夏。クラブ上層部が彼のことを知り、チームのキャンプに招待した。当時のルチアーノ・スパレッティ監督がピッチ脇で見学させ、次第にダニエレくんはナポリにとって「特別な友人」「チームの一員」のようになっていったという。

12月14日のウディネーゼ戦では、アンドレ=フランク・ザンボ・アンギサがゴールを決めた際、手首の「forza Daniele」(がんばれ、ダニエレ)にキスをしている。

試合中に届いたという訃報を受け、ナポリの選手はSNSに追悼メッセージを投稿した。

主将ジョヴァンニ・ディ・ロレンツォやジョバンニ・シメオネ、アレッサンドロ・ブオンジョルノのインスタグラムのストーリーからは、ダニエレくんとの特別な関係がうかがえる。

■ナポリを勇気づけた少年

スピナッツォーラは試合後、「ダニエレのご家族を強く抱きしめたい。彼は天から見守ってくれるだろう。とてもさみしくなる」と話した。

ステッリーニも会見で悲しみを表している。

「今日、我々はひどい痛手を受けた。ナポリにとても近しい人物を失ったのだ。病を患っていた子どもで、我々は彼を喜ばせようとしてきた。彼は我々に大きな力を与えてくれたんだ。苦しむ子どもすべてに思いをはせたい」

アウレリオ・デ・ラウレンティス会長も、SNSで少年を追悼した。

「親愛なるダニエレ、君はそばから私たちにうれしい日々をプレゼントしてくれた。病気にもかかわらず強さ、勇気、喜びを伝えてくれた。勝利を君にささげたい。これまで見せてくれた愛情で、天から見守り続けてくれるとわかっているよ。君はずっと私たちの心に居続ける」

■前を向いて過酷な日程へ

ナポリの2025年は、ピッチの上で喜び、ピッチの外で悲しむ始まりとなった。

だが、戦いは続く。

次節ヴェローナ戦を経て、ナポリはアタランタ、ユヴェントス、ローマと、強豪との3連戦に臨む。首位にはいるものの、勝ち点3差の2位アタランタや、同4差の3位インテルとは消化試合が異なるだけに、決して有利な立場ではない。

就任1年目のコンテによる改革で、ナポリは優勝した一昨季の快挙を再現できるのか。天国のダニエレくんにうれしい報告ができるよう、チームは意気込んでいるはずだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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