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CL王者レアル・マドリーより上? セリエA首位アタランタは「MSNのバルサも支配できる」?

中村大晃カルチョ・ライター
12月2日、セリエA第14節ローマ戦でのアタランタ(写真:ロイター/アフロ)

チャンピオンズリーグ(CL)でレアル・マドリーをアタランタが倒す。ひと昔前なら考えられなかったことだ。しかし、近年のアタランタの躍進から、決して夢物語ではないと見る人も増えているだろう。

12月10日、アタランタはCLリーグフェーズ第6節でカルロ・アンチェロッティ監督率いる昨季王者とホームで対戦する。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のチームは、現在セリエAで9連勝中と絶好調。2位に勝ち点2差の首位に立ち、スクデット獲得(優勝)も夢ではないと期待されている。

対するマドリーの今季の苦戦は周知のとおりだ。CLでは2連敗を喫し、5試合で3敗とまさかの停滞。プレーオフ出場ラインぎりぎりの24位につけている。プレーオフを回避しての決勝トーナメント進出を果たせるトップ8入りが有力視されていたチームにとっては、想定外の状況だ。

ならば、破竹の勢いをみせるアタランタが、ベルガモの地でマドリーを沈めることもあり得るだろう。少なくとも、アタランタの2人のOBはそう信じている。

■イタリアで王座の可能性も

昨季のヨーロッパリーグ(EL)を制したアタランタだが、今季は主力トゥーン・コープマイネルスをユヴェントスに放出。開幕当初はアデモラ・ルックマンも去就騒動に揺れ、ジャンルカ・スカマッカも負傷で長期離脱と、雲行きは怪しかった。実際、セリエA開幕から5試合で3敗を喫している。

だが、スカマッカの代役に獲得したマテオ・レテギが公式戦21試合で14得点と大爆発。セリエAで9連勝を達成し、ついに順位表のトップに躍り出た。開幕15節でアタランタが首位に立ったのは、クラブ初の出来事だ。

これまで以上に内容が芳しくなくても勝利をもぎ取れるようになり、アッリーゴ・サッキやファビオ・カペッロといったレジェンド監督たちも絶賛。スクデットはもはや夢でなく、目標となりつつある。

■興味深い国内の数字

欧州の舞台でも勢いは変わらない。

6得点で圧勝した前節ヤングボーイズ戦で初めて失点したものの、開幕から4試合はクリーンシートを達成。3勝2分けの勝ち点11で5位につけている。当初はプレーオフ進出が目標だっただけに、トップ8入りも十分視野に入っている現状は上々の出来と言えるだろう。

8月の欧州スーパーカップでは、マドリーに0-2で敗れた。だが、夏から状況は大きく変わっている。『La Gazzetta dello Sport』紙は、リーグ戦における両チームの数字を紹介した。平均の得点やシュート、クロス、決定率などで、アタランタがマドリーを上回っているというものだ。

■ゴメスとムリエルの見解

では、アタランタはマドリーに勝てるということか。そう期待できる理由を問われると、パプ・ゴメスは『La Gazzetta dello Sport』紙で「マドリーだけでなく、どこが相手でもやれるからだ」と答えた。

「(今の)マドリーは負傷者や復帰したばかりの選手たちがおり、ベストじゃない。すごく堅実だとは思わない。そして、スペインではピッチ全体でのマンツーマンでプレーする練習をしない」

2020年12月、CLでのアタランタ元主将ゴメス
2020年12月、CLでのアタランタ元主将ゴメス写真:Maurizio Borsari/アフロ

一方、ルイス・ムリエルは「理論上、マドリーは常にマドリーだ。だが、シーズン前半戦で彼らは完璧ではなかった。それを前提に、アタランタは渡り合えると、勝利も狙えると考えられる」と話した。

「いつものとおり、アタランタが支配し、ボールをつなぎ、ハイプレスをして、自分たちが試合をするゲームを予想する。今の彼らの調子なら、アタランタはメッシ、スアレス、ネイマールのバルサ相手でもそういうプレーができるだろう」

2022年4月、ELでのアタランタ元FWムリエル
2022年4月、ELでのアタランタ元FWムリエル写真:ロイター/アフロ

■指揮官は謙虚に

ただ、ガスペリーニは前日会見でくぎを刺している。

「マドリー相手に有利なチームなどない。そんなゲームには加わりたくないね。ときに周囲は熱狂しすぎるが、我々はそこから離れておく。順位は現時点でのものだ。満足はしているが、それと我々がマドリー相手に有利というのは別物だよ」

今季のCLではすでにミランが敵地でマドリーに勝利した。イタリア勢による“ダブル”はあるのか。注目の一戦は、もう間もなくだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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