プレミア12 侍ジャパンと相まみえる「サザンサンダー」、オーストラリア
日本に舞台を移したプレミア12は今日からオープニングラウンドの各グループ上位2チームずつがベスト4をかけて戦うスーパーラウンドに突入する。侍ジャパンの初戦の相手はオーストラリアだ。オーストラリアといえば、ベテランファンには、2004年のアテネ五輪で、2度までも日本を破り、銀メダルに輝いた国として印象が残っているだろうが、以後、この国とは、国際大会のたび、テストマッチが組まれ、日本の野球界とも交流が深いことでも知られている。オーストラリア野球連盟は、東京五輪に向けて、東京都府中市とキャンプに関する協定を結び、国際大会のたびここで調整を行っている。
この国のプロリーグはウィンターリーグなのだが、昨冬のシーズン、メルボルンで代表常連のルーク・ヒューズ内野手とアラン・デ・サンミゲル捕手に声をかけると、
「来年、再来年と日本に行くよ」
と、自分たちは代表に選ばれ、そしてチームは五輪に進むのは当然とばかりに話していた。
今回も、大会前の調整を日本で行い、はじめ台湾に渡って、台湾、ベネズエラと強化試合を行ってからソウルに向かった。
死闘、ソウル・ラウンド
しかし、現実にはオーストラリアが属したグループCは,ディフェンディングチャンピオンの韓国に、元メジャーリーガーを集めたカナダ、そして五輪常連のキューバと、なかなか突破の難しい組。案の定というか、完全アウェーの初戦の韓国戦を0対5の完封負けで落とすと、続くキューバ戦も延長戦でサヨナラ負けを喫してしまう。
ところがそこは不屈のサザンサンダー(オーストラリアトップ代表の異名)。キューバ相手に完封勝ちを収め、最終戦に勝てばスーパーラウンド進出を決めることができるカナダ相手に3対1で勝利を収める。これで、全勝の韓国以外は、1勝3敗で並ぶことになったが、失点率と相互の対戦成績により辛くも日本行きの切符をつかんだのだ。
多彩なメンバーたち
今回の代表メンバーは、現地リーグABLの精鋭が集まっている。投手陣では、昨年のウィンターリーグでも姿をみず、「引退した」と聞いていた元メジャーリーガー、ピーター・モイランが、名を連ねていた。聞けば、この夏は東ヨーロッパのチェコで「現役復帰」を果たしていたらしい。プロ生活をツインズのマイナーで始めたものの、ルーキーリーグでの2シーズンでリリース。いったんは、オーストラリアでサラリーマン生活を送りながら、第1回WBCでの投球が再びスカウトの目に留まり、メジャーにまで上り詰めたベテランが、継投が予想される侍ジャパン戦でどんなピッチングを見せるかには注目だ。
とにかく日豪の野球の交流を示すかのように、メンバーには日本にゆかりのある選手が多い。
元メジャーリーガーのトラビス・ブラックリー(ブリスベン・バンディッツ)は楽天で2014年シーズンを送っている。韓国ではリリーフにフル回転だったジョシュ・トルス(フィリーズ3A)は、2017年にルートインBCリーグ・新潟でノーヒットノーランを達成している。そしてサザンサンダーの守護神、ライアン・サール(ブリスベン)も同じくBCリーグの石川で2015年シーズンを送り、先発として8勝を挙げている。BCリーグ組としては、他に新潟からオリックス入りしたダリル・ジョージ(メルボルン・エーシズ)もサードを守る。3Aでもプレー経験のある外野手のデビッド・キャンディラス(キャンベラ・キャバルリー)は、新潟の他、四国アイランドリーグplusの愛媛でもプレーしている。
そのキャンディラスと同じキャンベラの所属する昨シーズンのABL最多勝投手、スティーブン・ケントは、日本のチームではプレーしたことはないものの、この春の横浜DeNAのキャンプに参加している。これは、キャンベラ球団と提携を結んでいる同球団の人事交流の一環で、昨冬のABLには、侍ジャパンのエース、今永らも参加していた。今永の伸びるストレートは現地でも評判で、ABLでの経験が、今シーズンの復活につながったことは言うまでもない。決戦を前にして、今永らと食事に行き旧交を温めたケントは、明日の試合を前にこうコメントしてくれた。
「侍ジャパンがいいチームなのはわかっている。大きなチャレンジであることは間違いないけど、全力でぶつかっていくよ」
サザンサンダーを率いるのは、「ディンゴ」こと、デーブ・ニルソン。ブリュワーズで長らく正捕手を務めたオーストラリア球界のレジェンドである。シドニー五輪出場を希望し、メジャーのレギュラーの地位を投げうち、2000年シーズンを中日で送った元助っ人だ。
(写真提供WBSC)