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東北の豪雨、ローカル線の被害甚大 山形新幹線は早期復旧も、その他の路線はどうなる?

小林拓矢フリーライター
陸羽東線は県境区間で利用者が少なく、存廃も議論されている(写真:イメージマート)

 7月25日からの東北地方での豪雨は、鉄道にも大きな被害を与えた。

 JR東日本の山形新幹線・奥羽本線だけではなく、陸羽東線も被災し、その上陸羽西線の代行バスも走れない状況になったため、山形県新庄市は孤立することになった。

 この市では、仙台方面への高速バスが唯一の交通機関となった。

回復へと向かう山形新幹線、それ以外は……

 山形新幹線は、8月1日に山形と大石田の間で、奥羽本線は同日に村山から大石田の間で運転を再開した。だが新幹線は通常の8割程度の運行本数、奥羽本線は通常の6割程度の運行本数となっている。大石田~新庄間で代行バスは運転されているものの、山形新幹線の接続バスとなっており、ローカル輸送の代行にはなっていない。

 大石田~新庄間は8月中旬ころに運転を再開し、新庄市と山形市、また新庄市と東京は結ばれることになる。

 だがそれ以外の路線では、どうなるかわからない状態にある。

 奥羽本線では新庄~院内間で被災区間が多く、運転の見通しが立たない状況になっている。

 陸羽東線では鳴子温泉~新庄間で激しく被災、やはり運転の見通しが立っていない。

 これらの路線には、現在のところ代行バスはない。

 もともと現在運休しており、代行バスを走らせている陸羽西線では、バスが使用する道路の開通を待って、新庄~古口間で8月5日より臨時ダイヤで代行バスを再開する。だが全線でバスが走るわけではない。また、運休中の鉄道がどうなっているかということも気がかりである。

 山形県以外でも、被災路線はある。

 大船渡線では一ノ関~気仙沼間で被災箇所が1か所あり、復旧工事を進めている。8月10日運転再開予定が、7日の16時ころと繰り上がった。

 また第三セクターの秋田内陸縦貫鉄道では、鷹巣~比立内間で被災、鷹巣~阿仁合間は8月5日に運転を再開、阿仁合~比立内間ではジャンボタクシーによる代行輸送になる。

 JR東日本では被災状況をときどきSNSで公表しているものの、まだ状況を把握できていない場所もあり、復旧の目途が立たない区間もある。

米坂線の事例を振り返る

 山形県関連で話を出すと、2022年8月の豪雨で米坂線が被災し、今泉~坂町間が長期運休となっている。JR東日本新潟支社はJR直営とする復旧は難しいという方針を示している。

 山形新幹線が使用する区間の復旧は順調に進んでいるが、そうではない区間で被災状況がいまなおわからず、復旧の見通しが立たないことが気がかりである。

 そこで、JR東日本が公表する平均通過人員のデータを出してみる。

 奥羽本線の新庄~湯沢間は、2023年度で291人/日。コロナ後回復基調は見られるものの、厳しい状況である。陸羽東線の鳴子温泉~最上間は51人/日、最上~新庄は229人/日。県境となっている鳴子温泉~最上間は厳しい。陸羽西線の新庄~余目間は129人/日。年間に2,400万円しか稼げていない路線だ。

 なお、参考までに代行バスになっている米坂線は、今泉~小国間で136人/日、小国~坂町間で86人/日となっている。

 米坂線では存廃の議論が続いており、そのことから考えると今回の豪雨での被災が大きい場合、そういった議論が出かねない状況の路線も、今回の豪雨での被災区間にはあることは指摘したい。

 もし被災の全容がわかり、状況が極めて悪く、復旧までに時間がかかるとなったら、JRはどう判断するかということは、心しておかなくてはならない。

 意外と何とかなりそうであり、復旧できればいいのだが……。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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