Yahoo!ニュース

大阪桐蔭のセンバツきわめて微妙に!?  波乱の地区大会終わる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
秋の地区大会が終了。大阪桐蔭は近畿8強止まりでセンバツは微妙な情勢だ(筆者撮影)

 100回大会の余韻も冷めやらぬ中、秋の地区大会は4日にすべて終了し、あとは明治神宮大会を残すのみとなった。夏の甲子園で活躍した下級生の有望選手がいるチームにとっては、センバツにつながる重要な試合だったが、ファンにとっても例年以上に残念な結果に終わった印象が強い。

まずは、各地区の優勝校をみてみよう。( )内はセンバツ基準枠数。関東・東京、中国・四国は抱き合わせ枠あり。

北海道(1)=札幌大谷

東北(2)=八戸学院光星(青森)

関東(4.5)=桐蔭学園(神奈川)

東京(1.5)=国士舘

東海(2)=東邦(愛知)

北信越(2)=星稜(石川)

近畿(6)=龍谷大平安(京都)

中国(2.5)=広陵(広島)

四国(2.5)=高松商(香川)

九州(4)=筑陽学園(福岡)

 上記10校によって神宮大会優勝が争われ、優勝校の地区に「神宮枠」が与えられる。各地区の戦いをざっとふり返り、少し気が早いが、センバツ出場校の展望を。

東北は実力校が勝ち進む

 北海道は札幌大谷が札幌第一に対し、8回に一挙5点を奪って豪快に逆転し、初優勝した。東北は光星が、盛岡大付(岩手)との接戦を制して5回目の東北王者に。組み合わせが決まった段階から有力視されていた2校が順当に勝ち上がった。東北はこの2校がセンバツの舞台に立ちそうだ。

波乱の関東の5番手難しく

 関東は波乱が相次いだ。全国屈指の左腕・及川雅貴(2年)を擁し、優勝候補筆頭と目されていた横浜(神奈川)が準々決勝でコールド負けを喫し、センバツ出場が厳しくなった。その横浜とともに有力視されていた常総学院(茨城)は1回戦、3点リードの9回裏、桐蔭学園に逆転サヨナラ満塁弾を浴びた。桐蔭学園はそのまま勢いに乗って24年ぶりに関東大会を制した。準優勝は横浜を圧倒した春日部共栄(埼玉)で、4強は山梨学院と習志野(千葉)だった。地域バランスがいいため、この4校のセンバツ出場は確実だが、問題は東京2校目との比較になる5番手校だ。準々決勝がいずれも一方的な試合になったため、どこが5番目になるか、見当がつかない。

東京はベテラン監督の国士舘復活

 そして、4日に行われた東京決勝は、国士舘が4-3で東海大菅生に競り勝った。ベテラン・永田昌弘監督(60)が復帰し、秋の東京で無類の強さを誇った往時の勢いを取り戻した。10年ぶりの頂点となる。敗れた菅生は、初回に失った4点を懸命に挽回したが、あと1点届かず。それでも、試合内容では劣っていなかった。このあたりがどう評価されるか。東京も、最右翼の日大三が初戦で敗れる波乱の幕開けだった。

東海は2番手微妙に 星稜順当に

 東海では、この時期に強い東邦が勝負強さを発揮した。特に、9回裏に5点差を追いつき、10回に1点勝ち越されても逆転した中京学院大中京(岐阜)との準決勝が印象的だ。決勝では津田学園(三重)を圧倒した。東海は2枠なので、2番手に中京学院がくるか、津田が順当に入るか予断を許さない。北信越は大方の予想通り、星稜が24年ぶりに優勝した。ただ、準優勝の啓新(福井)の健闘が光る。決勝では、星稜の全国屈指の右腕・奥川恭伸(2年)に食らいつき、延長15回引き分け再試合に持ち込んだ。北信越はこの2校で間違いない。

近畿は平安が劇的優勝

 近畿も波乱の展開に。決勝は延長12回に1点を奪った明石商(兵庫)が初優勝目前だったが、粘る龍谷大平安がその裏、3番・多田龍平(2年)の逆転サヨナラ打で熱戦にピリオドを打った。近畿については、最強の大阪勢が決勝に残れず、さらに夏の甲子園8強バッテリーが残る近江(滋賀)も初戦で敗れる波乱。結果もさることながら、試合内容が選考に影響を与える可能性があるので、あとで詳述する。

中国・四国は抱き合わせ枠に注目

 抱き合わせ枠が存在する中国、四国も波乱が多かった。中国は広陵が、名門・米子東(鳥取)を6-2で破って12年ぶりに中国王者に輝いた。奥川とともに屈指の右腕で、今夏に実力を証明している剛腕・西純矢(2年)の創志学園(岡山)は、その広陵に8回コールド負け。7回までは0-1の僅差だったが、8回に突然崩れた。7回までの試合内容を検討すれば西個人の評価は揺るぎない。もう1試合の準決勝ではタイブレークの末、呉(広島)が、米子東に惜敗していて、四国との比較になる3番手にはどちらが浮上するか微妙だ。四国は、常連の明徳義塾(高知)が準々決勝で高松商に敗れた。その高松商が、決勝で松山聖陵(愛媛)を破って優勝した。四国の3番手に浮上するのは、準決勝の試合内容から、伝統校で甲子園未経験の富岡西(徳島)か。中国・四国の選考は、時系列で先に終わる21世紀枠との兼ね合いもあって、予想が難しい。

九州は興南の逆転があるか

 九州は、近年、甲子園でもやや苦戦が続いている大分勢が健闘した。優勝は筑陽学園で、準優勝は明豊(大分)。4強に日章学園(宮崎)と大分が食い込み、例年ならこの4校で決まる。しかし、準々決勝で興南(沖縄)が、筑陽と12回終了0-0でのタイブレーク負けを喫していて、逆転があるかもしれない。一般枠については、このあとの神宮大会で増枠になる地区が発生するため、現時点での展望に限らせていただき、選考会前にもう一度、まとめて記したい。

21世紀枠、今年は活況

 12月に最終候補校が出揃う21世紀枠では、東日本に有望な学校が目立つ。個人的な印象を交え、目についた高校を挙げる。まず釧路湖陵は、明治45(1912)年創立の北海道東部を代表する名門で、秋の道大会4強の実績も申し分ない。東北では、古川(宮城)が東北大会準決勝進出の大健闘。同校も創立120年を超える伝統校で、地元の人気も高い。ただ東北では、来年のドラフト1位候補・佐々木朗希(2年)擁する大船渡(岩手)も、推薦要件を満たしていて、今後の推移に注目したい。西日本では、先週の段階で米子東と富岡西が有望かと思われたが、米子東が一般枠選出圏に入ったので、ここでは富岡西を推したい。例年以上に早い段階から目に留まる学校が多いのもこの秋の特徴だ。しかし21世紀枠は、推薦理由書を熟読することで、印象が変わる。そして、最終的には選考会当日のプレゼンテーションが最大の決め手になることは、これまでから述べてきた。

近畿は4強が当確

 さて、最後に近畿のセンバツ展望を詳述する。今回は、府大会3位で滑り込んだ平安が優勝した。京都大会準決勝で京都国際に敗れた時、原田英彦監督(58)が「夏を目指して頑張ります」と話し、筆者が「まだ終わっていませんよ」と励ましたくらいだ。そこから近畿の頂点まで駆け上がった手腕はさすがというほかない。特に、初戦で近畿屈指の強打を誇る天理(奈良)を破った星が光る。強振する天理打線に、緩急を使える左腕の豊田祐輔(2年)をぶつけて翻弄した。2位の明石商は、地元開催でその優位性を味方につけた。劣勢だった京都国際との初戦も、終盤、相手守備の乱れを逃さなかった。会場となったほっともっと神戸は内野天然芝の高校生には難しい球場で、多くのチームが内野守備に手を焼いた。2戦目は近江を破った報徳学園との兵庫対決で、前チームからの県内負けなしの底力を終盤の勝負所で発揮した。投手を軸にした堅実な野球が持ち味だ。これに4強の履正社(大阪)と智弁和歌山を加えた4校が当確となる。ただし、準決勝がいずれもコールド決着となり、例年なら8強止まりから選ばれるはずの、残り2校の選考に影を落とす可能性が出てきた。

準決勝いずれもコールドで大阪桐蔭ピンチに

 準々決勝の試合内容に目を移すと、コールドこそなかったが、履正社に敗れた福知山成美(京都)と、明石商との同県対決に屈した報徳が、いずれも打線沈黙の完封負けでよく似た展開だった。平安に内容互角のサヨナラで敗れた市和歌山はもちろん、智弁和歌山に敗れた大阪桐蔭(タイトル写真)も安打数では上回るなど、前出2校とは印象でかなりの差異がある。準々決勝終了時点で、4強プラス市和歌山、大阪桐蔭の6校が順当な線と思われた。ところが、準決勝の内容が2試合とも極端だったため、ややこしいことになってきた。智弁和歌山が、明石商に5回コールドの0-12と一方的に敗れたからだ。しかも、履正社も平安に7回コールド負けしたため、この両校に敗れている大阪桐蔭の立場はかなり危うくなった。履正社も智弁も、準決勝では控え投手を先発させていて、準々決勝とは違ったモチベーションで試合に臨んだことは明らかだが、コールド負けはいかにも印象が悪い。この両校がコールド負けしたことで、「大阪も和歌山も1校でいい」となれば、県2位の市和歌山もピンチになる。同じ8強止まりの報徳や成美、さらには平安に初戦で1点差負けの天理も含めた議論は収拾がつかなくなるかもしれない。

近畿の選考は準々決勝で

 最後に、個人的な意見を述べさせてもらう。近畿は、準々決勝にすべてが懸かっている。ここを勝ち抜けば当確だ。逆に、ここで負けたら選外になっても仕方ない。初戦敗退から救うとすれば、8強が3府県で占められたり、準々決勝の内容がよほど極端になった場合に限られる。初戦の内容も含めた準々決勝で、すべてを決めるのが、近畿の選考だと思っている。ただ、過去の傾向に照らし合わせれば、準決勝のダブルコールド決着で、大阪桐蔭の選出がきわめて微妙になったことだけは確かだ。

 

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事