アマゾン、来年4〜6月に発売の電子書籍端末を開発中、高精細ディスプレイ搭載の試作機、米メディアが確認
米アマゾン・ドットコムが電子書籍端末「キンドル・ペーパーホワイト(Paperwhite)」の現行モデルを発売したのは今年の9月。これは昨年発売した初代機の後継にあたるモデルで、同社は今年の年末商戦でこの新端末の販売に期待している。
だが米国のテクノロジー系ニュースブログ、テッククランチによると、アマゾンはすでに3世代目のキンドル・ペーパーホワイトを開発しており、来年の4〜6月期にも市場投入する計画だという。
楽天子会社のコボに対抗、より高精細のディスプレイ
テッククランチは24日付の記事でその試作機を確認したと報告している。それによると、この端末は「アイス・ワイン」という開発コード名で呼ばれている。この新端末では画面の精細さを表す画素密度が300ppiとなり、現行モデルの212ppiに比べ大きく向上しているという。
アマゾンのライバルである楽天子会社のカナダのコボ(kobo)が今年4月に、「コボ・オーラ(Aura)HD」と呼ぶ書籍端末を発売したが、こちらの画素密度は265ppiで、キンドル・ペーパーホワイトの画素密度はこれに劣っていた。
またコボ・オーラは、画面とベゼル部分が凹凸のないフラットスクリーンだが、現行のキンドル・ペーパーホワイトは画面の上にベゼルが覆いかぶさるデザインになっている。アマゾンの新端末はこの点も改良され、コボ・オーラと同様のフラットデザインになるという。
一方ディスプレイの素材はプラスチックから光沢のないガラスに変更される。だからといって本体は現行モデルより重くはならず、むしろ軽くなるとテッククランチは報告している。
使い勝手の向上も図っているようで、例えば、本体には周囲の明るさを感知する光センサーを搭載する。これにより輝度を自動調整するという。これは人間の目の瞳孔が、開いたり、縮んだりするのと同じタイミングで徐々に変化するというもので、利用者を不快にさせない工夫が凝らされているという。
このほかアマゾンの新端末は、左右のベゼル部分にページめくりのボタンを備えている。この機能は初代キンドルに備わっていたが、ペーパーホワイトでは取り除かれていた。そのためこれまでは画面表示部分の左右を親指などでタップしてページを切り替えなければならなかったが、新モデルでは本体を持っている片方の手だけでページ送り、戻りが可能になる。
なおこのボタンは初代キンドルでは物理的なボタンだったが、新モデルでは、スイッチをオンにしたときだけ反応する感圧式のボタンになるとテッククランチは伝えている。またアマゾンは、キンドル独自のフォントや、自動ハイフネーション機能なども開発しているという。
アマゾン、電子書籍端末のカラー化も研究中
スマートフォンやタブレット端末が普及したことにより、電子書籍端末はここ数年出荷台数が減少傾向にある。米国の調査会社IDCによると、一昨年に2640万台を出荷した電子書籍端末は、昨年1820万台に減少した。今年と来年は緩やかな伸びとなるものの、2015年からは再び減少が始まるとIDCは見ている。
電子書籍端末は画面が白黒で、カラー液晶のタブレット端末に比べて見劣りすると言われているが、アマゾンはそうは考えていないようだ。
電子書籍端末が採用する電子ペーパーは、液晶と異なり、明るい太陽光の下でもくっきりと見え、画面の反射もしにくい。バッテリーは1回の充電で数週間持ち、通信接続をオフにすればさらに長持ちする。本体は軽量で持ちやすく、読書家にとってはこちらの方が好都合というのがアマゾンの考えだ。
その一方でアマゾンは電子書籍端末のカラー化も視野に入れて開発を続けている。同社は今年、特殊ディスプレイ技術を手がける韓国サムスン電子の子会社、リクアビスタ(Liquavista)を買収したと伝えられた。同社の技術を使えばカラー画面ながらバッテリーの持ち時間が長く、屋外などの明るい場所でも見やすい電子書籍端末が開発できると言われている。
(JBpress:2013年11月26日号に掲載)