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【韓国】非常戒厳令 国民の反応は実のところどうだった? 「怒り」「不安」「苦笑」「映画みたい…」

(写真:ロイター/アフロ)

一国の大統領の行動に対して無躾だが、ごく平たく言うとこういうことなのだ。

ブチギレて、国会に軍をぶっこんだ。

23日11時頃から翌24日4時頃まで続いた韓国の非常戒厳令状態のことだ。 これを受け、実のところ韓国の反応はどうだったのか。

ネットは騒然…韓国ユーザーは何を調べた?

当然のごとくかなりの関心が高まった。多くが情報を得たり、考えを共有しようとしたため、大手ポータルサイトのサーバーが一時ダウンする事態になった。

検索関連キーワード調査サイト「ブラックキウイ」で韓国語ユーザーたちが「戒厳令」と合わせて調べた単語のランキングは以下の通りだった。

・意味 ・宣布 ・通行禁止 ・出勤 ・学校 ・解除 ・出国 ・国家 ・海外旅行

つまり、まずは「戒厳令」の正確な意味に関心があり(分からなかったため)、次に「外を出歩けなくなるのではないか」という不安。実際に45年前の宣布時にはそうなったし、また韓国は1982年1月5日まで夜間通行禁止令が常時出ていた。 その他、出勤・学校・出国・海外旅行も「自由な通行ができなくなるのでは?」という心配からのものだ。

ネット 3日の夜から翌日明け方まで、ネット上でも大きな反応があった。 「韓国経済」紙はその様子を次のように伝えている。

「(国民的なチャットアプリである)カカオトークのオープンチャットルーム(ユーザーが自由に参加できるチャット)が騒然となった。NAVER・Daum・NATEなど国内の主要ポータルサイトは、戒厳関連ニュースを確認できる特設ページを新設するなどの対応に乗り出した」

なかでもカカオトークのオープンチャット内の様子をこう伝えている。

「4日午前1時頃、国会が『戒厳令解除要求決議案』を可決した頃、カカオトークのオープンチャット内では複数の戒厳関連チャットルームに数千人が殺到し、情報を共有していた。各ルームには数百人が参加し、メッセージ通知が途切れないほど活発なコミュニケーションが行われた」

そこでは、こんなコメントが残されたという。

「2時間のソウルの冬」 「一番心配なのは軍隊にいる息子たちとその親たち」 「教科書でしか見たことのない戒厳令とは……」

「ソウルの冬」とは、2024年春に韓国で大ヒットした「ソウルの春」に引っ掛けたもの。1979年、前回の戒厳令下で、韓国軍陸軍少将だったチョン・ドファン氏が朴正熙(パク・チョンヒ)大統領が側近に暗殺された後の混乱の最中、クーデターを起こして実権を掌握した。この際に反乱軍側が大統領官邸に結集。この時の様子をほうふつとさせる、という話だ。「まるで映画のよう」だったということ。

一方、国内の主要ポータルサイトNAVERは、戒厳関連の「特報」コーナーを新設。NAVERモバイルアプリのホーム画面検索欄下部に「ニュース特報」「関連ニュース」バナーを表示した。 NAVERではコメント欄に一時アクセスが集中し、サーバーが短時間ダウンする事態までになった。

世代間ギャップも…「不安」と「苦笑」

一方で、年齢層による感じ方の違いを報じたのは「ハンギョレ新聞」だった。「心臓が凍りつく」中高年層、苦笑いする若者たち……世代別の非常戒厳令への異なる反応」との記事を4日午後に掲載。

あらゆる世代の一番大きかった感情は「激怒」だったとしつつ、世代ごとの細かい感情を伝えた。

まずは、過去に戒厳令が頻繁に発動された1960〜70年代を直接経験した中高年層が、尹大統領の非常戒厳令宣言に示した最初の反応は「恐怖」だった、とした。60歳前後の複数の男性のコメントを紹介している。

「ニュースで『非常戒厳令』という速報を見た瞬間、心臓が凍りつき、外に軍人が歩き回っていないか確認した」

「国会が非常戒厳令解除要求を議決したのを確認してから寝たにもかかわらず、中学生の時に朴正熙前大統領が死亡した後、町中に不気味にサイレンが鳴り響いていたことが夢にまで出てきた」

一方、若者の間には「苦笑」も見られたという。

同記事では資産運用に関心が高い30代男性のコメントも紹介された。

「すでに国内株式市場の状況が最悪なのに、大統領が先頭に立って破滅を願っているようで、ため息しか出なかった」

「たかがこんな茶番劇でUpbitやBithumbなどの仮想通貨取引所まで麻痺してしまい、非常に困惑した」

一方で、こんな反応もあった。事態が宣言されたとき、筆者に「韓国が大変なことになってるぞ」と連絡をくれた韓国紙の元デスクがいう。

「概して、怒りと合わせて面白おかしく見た人も多かったと感じる。『それがなぜ戒厳令の理由になるのか』という反応。戒厳令は「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」でしか発動できないから」

事は「大統領が軍隊を国会に進入させた」という民主主義の根幹に関わる重大事。大統領の今後の政治生命にも関わるものだ。とはいえ、細かく見ていくと世代ごとに様々な反応があったようだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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