広島市の傲慢、イスラエル招待のダブルスタンダードで平和式典を汚す―長崎市と明暗
原爆の日に毎年行われる平和祈念式典で、イスラエルを招待するか否かで、広島市と長崎市で対応がわかれている。広島市は、ロシアとベラルーシに関しては招待しない一方で、ガザ攻撃での戦争犯罪を連日繰り返しているイスラエルに関しては招待するとしており、「ダブルスタンダードではないか?」との批判を浴びている。一方、長崎市はパレスチナ暫定自治政府の駐日代表部を式典に招待するとし、イスラエルに対しては招待しないことを今月31日で明らかにした。
〇広島市のダブルスタンダード
平和祈念式典にロシアやベラルーシを招待しない一方で、イスラエルを招待することについて、実質的に式典を企画・運営する広島市の市民局市民活動推進課は、筆者の取材(今年4月)に対し、「ロシアとベラルーシの参加は円滑な式典の運営を妨げるというのが市長の考え」と答えるにとどめている。要は、欧米諸国や式典の参列者などからロシアやベラルーシの参加について批判や抗議、ボイコットをされかねないとのことだが、それであるならば、イスラエルについても同じではないか。筆者は、
・ロシア等を招待せず、イスラエルを招待するのはダブルスタンダードではないか。
・イスラエルを平和記念式典に招待することで、同国に誤ったメッセージを送ること、あるいは同国のプロパガンダに利用されることについて、懸念はないのか?
と質問したが、これに対する明確な答えは無かった。
その後も、イスラエルの戦争犯罪は国際社会の中で大きな問題であり続け、同国への批判は強まるばかりだ。ざっと箇条書きにしても、
・イスラエルの攻撃により、現在にいたるまで、少なくとも3万9400人がガザで殺されている。その大半は、女性や子どもを含む非戦闘員、民間人とされる。また、瓦礫の下にある未回収の遺体は約1万人分あるのではないかと言われている。
・ガザの住民に避難を強要しておきながら、避難先に指定した地域への攻撃を繰り返す。
・住民達が避難所としている国連管理の学校への攻撃を繰り返す。
・人口密集地への無誘導かつ大型の爆弾を繰り返し落としている。国際人道法における民間人保護、つまりそこに軍事的なターゲットがあったとしても、民間人の被害を避ける最大限の努力をすべきという原則を踏み躙っている。
・執拗な医療機関、医療関係者への攻撃。
・十分な容疑もないままに、未成年や女性、老人も含むガザ住民を多数拘束し、性的なものを含む極めて深刻な虐待を行っている。
・ガザへの援助物資の搬入を極端に制限したり、妨害したりしており、ガザでの飢餓を引き起こしている。戦争の手段として、意図的に飢餓を引き起こして、人々を苦しめることは、戦争犯罪とされる。
今年6月には、国連人権理事会の調査委員会が報告書をまとめ、上述のような問題点を指摘、これらを戦争犯罪であるとして批難。ネタニヤフ首相を始めとするイスラエル政府関係者・軍関係者の法的な責任追及が行われるべきだと結論付けている。
また、イスラエルによるパレスチナ占領政策そのものについても、国際司法裁判所(ICJ)は、今月19日、「国際法違反」との勧告的意見を出した。同意見では、特に、イスラエルの右派政権が中東和平合意(1991年)を踏み躙るかたちで進めているヨルダン川西岸や東エルサレムでの入植活動について、イスラエルに対し自国の入植者全員を退去させ、占領によってパレスチナ人にもたらした被害については賠償するよう勧告している。また、ガザについても、イスラエルが同地区を実質的に支配しているとして、被占領地だとの見解を示した。
このように、イスラエルの戦争犯罪はその悪質さを極め、それに対する国際社会の圧力も一層強くなっている。それにもかかわらず、広島市のスタンスは変わらない。ロシア・ベラルーシへの対応との乖離は、どんな理屈であろうとも、もはや対外的に成り立たないところまで来ているのではないか。
〇広島市のパレスチナ軽視
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