「アバター」続編3作がニュージーランドに与える経済効果と、L.A.に与えた失望感
「アバター」続編3作のライブアクション部分が、ニュージーランドで撮影されることになった。パフォーマンス・キャプチャーの撮影はL.A.のスタジオで行われるが、ビジュアルエフェクトは、ニュージーランドのウェリントンにあるピーター・ジャクソンのWETAデジタルが担当する。2009年に公開された1作目も、やはりウェリントンで撮影され、WETAがエフェクトを手がけたが、続編3作の撮影がどこで行われるのかは、月曜日の発表まで明らかになっていなかった。
20世紀フォックスとジェームズ・キャメロン監督のライトストーム・エンターテインメントは、3作品合計で最低でも5億ニュージーランドドル(米ドルにしておよそ4億1300万ドル)を使うことと、クルーの9割を地元ニュージーランドで雇うことを約束している。一方、ニュージーランド政府は、外国映画の製作が受ける税金優遇制度をさらに寛大に変更。リベート額はこれまでの15%から20%に引き上げられ、国にさらなる恩恵をもたらすと考えられるプロジェクトに関しては、さらに5%を与えることにした。この「特別な恩恵をもたらす」作品の認定を受けるため、フォックスは、「アバター」続編3作のうち最低1作はニュージーランドで世界プレミアを行うことや、ニュージーランド観光を奨励するボーナス映像をDVDとブルーレイに入れることなどを約束。1作目の撮影はニュージーランドに3億ニュージーランドドルをもたらしたが、次の3作は、より幅広い意味で、国の経済や観光産業に収益をもたらすことになる。
ニュージーランドにとっては朗報ながら、L.A.の現場クルーとっては、長期間にわたって撮影される大きなプロジェクトに関われるチャンスがまたひとつ消滅したことになる。税金優遇制度のせいで撮影を他の国や州に奪われるいわゆる“ランナウェイ・プロダクション”は、長年、L.A.で問題になっており、関係者は州政府に働きかけてきたが、アーノルド・シュワルツエネッガーが州知事を務めた時ですら、状況は改善しなかった。以前からハリウッド映画の撮影が多く行われてきたカナダや東欧に加え、近年ではジョージア州、ルイジアナ州、ノース・カロライナ州などでのロケも目立っている。カリフォルニアも一応、税金優遇制度はもうけているが、枠が少ない上、予算が7500万ドルを上回る大作には資格がない。「アバター」のプロデューサー、ジョン・ランドーも、これはあくまで経済的な理由にもとづく決定であり、もしL.A.にとどまって撮影できるならそうしたかったとコメントしている。
L.A.のエフェクト業界にとっても、新たなバッドニュースだ。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のVFXを担当したリズム&ヒューズ社は、昨年のオスカー授賞式前に倒産。後に、オークションでプラナ・スタジオに買い取られた。キャメロンが設立したデジタル・ドメインも2012年に会社更生法を申請している。ビジュアルエフェクトは本来、お金がかかるものだが、テクノロジーが発達するにつれて競争が激しくなり、カナダやインド、イギリスやニュージーランドの会社に仕事を取られるケースが増えてきた。仕事を取るために値段を下げる一方、最先端の技術に投資もし続けなくてはならず、L.A.のエフェクト関係者は生き残りの道を模索している。
「アバター」続編3作は、2014年後半か2015年前半に撮影開始。3作はまとめて撮影され、「アバター2」は2016年12月、次の2作はそれぞれ2017年と2018年の12月に公開される。