パリ五輪で中心を担うべき才能たち。東京五輪トレーニングパートナー6人の現在地
東京五輪に向けた直前合宿にトレーニングパートナーとして参加した6人は3年後のパリ五輪で主軸になることを期待される選手たちでもあります。
東京五輪が終わり、中断あけのJリーグでそれぞれの選手が奮闘中ですが、彼らの現在地と可能性は?
武田英寿(FC琉球)
合宿後、浦和レッズから育成型期限付き移籍でFC琉球に加入したレフティはJ1昇格を目指すFC琉球で2列目の主力を担っています。8月9日の北九州戦に途中出場して同点ゴール。逆転勝利の立役者となると、樋口靖洋監督にトップ下あるいは右サイドハーフでスタメン起用されて存在感あるプレーを見せています。
柔らかくも鋭いドリブルからスルーパスやミドルシュートを繰り出す武田。琉球のキーマンとして台頭して来た中で、ここ数試合は厳しいマークにあい、十分な仕事をできていませんが、さらなる成長のための必要なハードルと言えるかもしれません。
左足の技術は申し分ありませんが、狭い局面を打開するためのフィジカル面、体の使い方、さらには間合いの取り方を琉球の環境で向上させていければ、J1でも通用するアタッカーに成長し得ます。
成岡輝瑠(SC相模原)
パリ五輪世代でも今最も輝を放っているM F。清水エスパルスから育成型期限付き移籍をしたSC相模原で高木琢也監督に高く評価されて、残留争いを強いられるチーム状況にありながら、いきなり重用されています。
19歳ながら攻撃センスが高いだけでなく、気の利いたサポートなどもできるのが強みであり、スペースを作り、見つけ、使うのが非常にうまい選手です。相模原の主軸は経験豊富な藤本淳吾ですが、その藤本が前を向いてチャンスに絡めるシーンが増えているのは成岡の加入と無関係ではありません。
現在は3ー4ー2ー1のボランチですが、もともと2列目やサイドハーフでもプレーできる選手であり、ボールを持った時に前が空いていればドリブルでどんどん侵入していくため、相手のディフェンスは警戒を強めざるを得ません。しかし、成岡は相手のプレスをも利用して、藤本や同じパリ五輪世代の松橋優安が走る先にボールを供給します。
見た目とは裏腹に、守備面でも的確な仕事ができる成岡ですが、まだまだ身体的な向上の余地は大きくあります。それにしても短期間で伸びている成長株で、ボランチにタレントが多いパリ世代でも注目すべき一人です。
櫻川ソロモン(ジェフユナイテッド市原・千葉)
スケール感抜群のストライカーは東京五輪の直前合宿にトレーニングパートナーとして参加したことが大きな転機になったように思います。今シーズンは当初から居残りでのシュート練習に励むなど、意識に変化が見られていたようです。
しかしながら、五輪合宿では吉田麻也と対峙したり、FWの先輩である上田綺世や林大地のプレーを見て多くのことを学び取った様子。8月14日の新潟戦から1トップでスタメン起用され続けており、前線からチームを引っ張っていく自覚は守備やポストプレーにも表れています。上空から叩き付けるようなヘディングシュートはもともと強力な武器でしたが、フィニッシュのレパートリーを増やしており、相手ディフェンスに対する脅威が増しています。
それでも世界で活躍するFWになりたいという基準からすれば、まだまだ決定力や安定性が足りていないことは明らか。J2でも昇格争いに絡んでいるチームは京都のピーター・ウタカやジュビロ磐田のルキアンなど、二桁ゴールを記録しているエースがおり、現在の2得点はとても満足いくものではないでしょう。
あと8点は取りたいという若き大型ストライカーがシーズン中にもうひと化けできるか注目です。
藤田譲瑠チマ(徳島ヴォルティス)
他のトレーニングパートナー組と違い、東京ヴェルディから完全移籍でJ1の徳島ヴォルティスに加入。期待を背負って開幕時からスタメンに名を連ねていましたが、中盤の競争で優位に立てず、途中出場が多くなっています。
合宿中に行われたホンジュラス戦では後半42分から中山雄太に代わって投入されて、短い時間ながら躍動的なプレーを見せたジョエル。ボールを奪う能力はパリ五輪世代のボランチでも飛び抜けて高く、縦の推進力もありますが、対戦相手との位置的な優位性が鍵を握る徳島で、全服の信頼を得るには至っていないようです。
個人の能力はJ1でも目を見張るものがあるだけに、戦術眼と状況判断を磨いてさらに飛躍してもらいたいと同時に、徳島を残留に導く活躍ができるかどうかもキャリアアップに影響してくるかもしれません。
山本理仁(東京ヴェルディ)
広い視野をピッチの全方位をパスレンジにできる展開力で、左利きのプレーメメイカーという表現がピッタリの山本理仁ですが、所属クラブのヴェルディでは波に乗れていないのが現状です。
3ハーフの時はアンカーとインサイドハーフの両ポジションをこなせる山本。長短のパスの正確性、周りを使っていくセンスに疑いの余地はないものの、やはり攻守に渡る力強さが課題。同世代のボランチを見ても、もっともっと伸ばしていく必要があるでしょう。
ただ、やはり彼の強みはピッチを俯瞰するかのような観察眼と周りを生かす起点のパスなので、ストロングを見失うことなく足りない要素を埋めていって欲しいと思います。それと同時に中盤からより決定的なプレーも求められるところで、積極的なプレーを出していけるかで堀孝史新監督の評価も変わってくるとかもしれません。
鈴木海音(ジュビロ磐田)
6人の中では唯一、リーグ戦の出場ができていない状況ですが、磐田の鈴木政一監督はポテンシャルを高く評価しており、ターゲットをマークし、前にボールを奪いに行くことにかけてはかなり高いレベルにあると言います。
広範囲をカバーする機動力とセンスも非凡なものがありますが、J2昇格、さらに優勝を目指すチームで3バックは巧妙な状況判断が求められる生命線のポジションであり、攻撃面での正確性も含めて、さらに判断を高めてもらいたいようです。
パリ五輪世代の台頭が目立つJリーグですが、全体的にまだ出場機会を得られていないのがセンターバックのポジション。セレッソ大阪の西尾隆矢など所属クラブでポジションを掴んでいる選手もいますが、鈴木海音のような選手がどんどん名乗り出てくることが期待されます。
まだまだJ1昇格を確定できていませんが、シーズン残り数試合でチャンスをもらえれば、来シーズンに向けて大きなアピールチャンスになるでしょう。
(プロフィール写真/筆者撮影)