ガザ地区ラファへの攻撃に注目が集まるなか、イスラエルは人知れずシリアを爆撃し、子供を含む多数を殺傷
ガザ地区のラファへのイスラエルの攻撃が強まり、世界中の耳目がパレスチナに注がれるなか、いつものことではあるが、それ以外の地域や国に対するイスラエルの暴挙、そしてそれに対する欧米諸国の沈黙は、またしても日本でほとんど報じられることはなかった。
シリアの国防省は5月29日、フェイスブックを通じて声明を出し、イスラエル軍が同日午後7時30分頃、レバノン領空を侵犯、同領空方面からシリアの中部地区の1ヵ所とタルトゥース県バーニヤース市の住宅1棟に対して爆撃(ミサイル攻撃)を行い、これにより女児1人が死亡、民間人10人が負傷、物的損害が生じたと発表した。
国営のシリア・アラブ通信(SANA)がバーニヤース病院のイマード・バシュール院長の話として伝えたところによると、殺害されたのは2歳の子供で、即死だった。また、病院には、国防省の発表よりも1人多い12人の負傷者が搬送された。
民間のラジオ局シャームFMやレバノン日刊紙『アフバール』紙によると、シリア防空部隊は中部地区への攻撃に対して迎撃し、その際に発射した地対空ミサイル1発がレバノン領内のマジュダル・アンジャル村一帯(ベカーア県)に着弾した。
国防省は標的となった中部地区の詳細は明らかにしなかったが、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団は、標的となったのは、ヒムス県ファルカラス町近郊の軍事拠点だったと発表した。
同監視団によると、この地域一帯には、レバノンのヒズブッラーが展開しており、イスラエル軍の攻撃で、武器を積んでいたと見られる冷凍車輌複数輌が炎上し、ヒズブッラーとともに活動するシリア人3人と国籍不明の民兵3人が死亡したという。
イスラエル軍はこの攻撃について何らのコメントも発表していない。また、イスラエルを支援する欧米諸国もシリアに対して繰り返される侵犯行為への非難は行っていない。
シリア人権監視団によると、イスラエル軍によるシリアへの攻撃は、5月に入って8回目、今年に入って43回目(うち31回が航空攻撃、12回が地上攻撃)で、これにより91あまりの標的が破壊され、軍関係者148人が死亡、69人が負傷しているという。
同監視団によると、軍関係者の死者内訳は以下の通りである。
- イラン人(イラン・イスラーム革命防衛隊):21人
- ヒズブッラーのメンバー:30人
- イラク人:12人
- 「イランの民兵」のシリア人メンバー:35人
- 「イランの民兵」の外国人メンバー:10人
- シリア軍将兵:40人
また、民間人も13人(女性2人と子供1人を含む)が死亡、20人あまりが負傷している。
攻撃の県別内訳は以下の通りである。
- ダマスカス県、ダマスカス郊外県:18回
- ダルアー県:13回
- ヒムス県:6回
- クナイトラ県:3回
- タルトゥース県:2回
- ダイル・ザウル県:1回
- アレッポ県:1回