幼稚園・保育園の無償化/在宅育児手当の廃止へ?ノルウェーで議論
ノルウェーで、幼稚園・保育園の無償化の議論が始まっている。
この国では、日本で一般的な「幼稚園」と「保育園」という2種類の分類はされておらず、バーネハーゲ(子どもの庭)と表現されている。現在、1~5才の子どもの90%が通園中。日本で起きている「待機児童問題=保護者が働きにくい」という状況は、ノルウェーでは一般的ではない。
首都オスロでの通園料は、公共施設での基本額が最高で月2730ノルウェークローネ(3万6千円)、食費が165ノルウェークローネ(2200円)。
私立は料金は公共とは大きく変わらず、食費に違いが目立ち、月400ノルウェークローネ(5300円)する場所もある(オスロ市公式HP)。私立でも、園の経営費の86%は国、16%を保護者が負担している(2016年統計局調べ)。
ノルウェーの子ども・家族政策を調査・提案する専門委員会は、6日、子ども・平等大臣であるソールヴァイ・ホルネ氏にレポートを提出。過去20年間の子ども・家族政策における給付金がもたらした結果を調査した。今後の提案の中には、園の無償化が含まれており、大きな注目を集めている。
そのためには、他の家族政策における手当を削減し、その分を財源に充てる必要がある。
在宅育児手当の廃止を提案
その手当削減対象の中でも、大きな注目を浴びているのが、在宅育児手当の廃止だ。
現在は、公共の園に1~2才の子どもが100%の割合で通っていない場合、1人につき毎月最高6000ノルウェークローネ(8万円)が11か月間支給される。今年の8月1日からは、その手当が7500ノルウェークローネ(10万円)へと増額される。
1998年に導入されたこの在宅育児手当は、これまでも議論され続けてきたテーマだ。
特に、移民や難民を背景に持つ保護者が、手当をもらうことを目的に、あえて子どもを通園させないケースも指摘されている。結果、女性の就労参加を妨げていると批判する声もある。
子どもオンブッドは、小学校入学前に子どもが幼稚園・保育園に通わないことは、社会から存在を見えにくくさせ、暴力などの家族問題が発覚しにくくなるとしている。
在宅育児手当は外国人女性の働く気をなくさせる?
手当を支給するノルウェー労働福祉局は、昨年の10月に最新の調査結果を発表。政府が2014年に在宅育児手当金を増額させた結果、5~6%の母親が、外で仕事をするよりも在宅育児を選び、女性の就業促進においてネガティブな効果を生んだと指摘した。また、その母親の多くはアジア、アフリカ、東欧からの移民背景をもつ。
他にも、園の無償化のために、ほかの家族手当の削減が委員会からは提案されており、それぞれ議論を呼びそうだ。
年内には国政選挙も控えており、各政党の方針にも注目が集まっている。園の無償化や在宅育児手当廃止においては、これまでも右翼・左翼の両方から検討する声がでていた。
Photo&Text: Asaki Abumi