【JNS】ジャズに人生を捧げた人たちに受け継がれる「ボディ・アンド・ソウル」
ジャズ・スタンダードと呼ばれる名曲を取り上げて、曲の成り立ちや聴きどころなどを解説するJNS(Jazz Navi Standard編)。今回は「ボディ・アンド・ソウル」。
「ボディ・アンド・ソウル」が誕生したのは1930年。作曲はジョニー・グリーン、作詞はエドワード・ヘイマン、フランク・アイトン、ロバート・サウアの共作で、イギリス出身の女優&シンガーのゲートルード・ローレンスのために用意されたが、最初に披露されたのはリビー・ホルマンによるブロードウェイ・レヴューでのことだった。
1940年代になると映画の挿入曲として使われ、これによって広く知られるようになり、ジャズでもスタンダードとして扱われるようになった。
調べてみると、ジャズ・スタンダードを代表するようなナンバーにもかかわらず、ほとんどエピソードがない。こういう曲はライターにとって、とっても困る……。
でも、いい曲だから許す(笑)。
♪Billie Holiday- Body And Soul (Verve Records 1957)
「身も心もあなたのものだと思っているのに、なんでワタシはこんなに寂しい想いをしているの?」という身につまされるような内容の詞と、波瀾万丈な生涯を送ったビリー・ホリデイのイメージが重なり、彼女の代表的なパフォーマンスとして記憶されている。
♪DEXTER GORDON- Body and Soul
“サックスの巨人”コールマン・ホーキンスが無伴奏でこの曲を取り上げたことで、ジャズのサックス・シーンではこの曲に対する特別な想いが連綿と受け継がれることになった。ホーキンスの柔らかなニュアンスを1950年代以降も伝えていたのが、この“次世代のサックスの巨人”デクスター・ゴードンだった。彼は後に主演した映画「ラウンド・ミッドナイト」(1986年公開)でもこの曲を披露している。
♪Esperanza- Body & Soul
ダブル・ベースを抱えたニュー・ディーヴァ、エスペランサ・スポルディングによるコンテンポラリーな香りをまとった「ボディ・アンド・ソウル」。彼女のルーツのひとつであるヒスパニックを意識してスペイン語で歌われ、この曲の意外な表情をあぶり出すことに成功している。
まとめ
32小節でAABA形式というオーソドックスすぎる構成の曲にもかかわらず、おそらくこれまでにいちばん多く録音されたジャズ・スタンダードなのではないだろうか、というぐらい人気がある曲であるところがミステリアス。凝った曲よりもストレートな曲のほうが歌い継がれるという、いい例のようだ。歌詞の内容はつじつまが合わずに破綻していたりするのだけれど、そこがまた歌い手にとっては「どう表現するのか」というチャレンジしがいのある対象だったりするのかもしれない。
See you next time !