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注目! ドラフト/2 志望届提出高校球児の甲子園通信簿 夏(+春)

楊順行スポーツライター
広陵の中村奨成。12球団とも、強打の捕手はノドから手が出るほど欲しい(写真:岡沢克郎/アフロ)

千賀の投球に魅了された徳栄・清水

・比嘉賢伸/盛岡大付・岩手 遊撃手 右投左打

 試 打 安 点 本 率

春 3 11 4 0 0 .364

夏 4 19 6 3 1 .316

 甲子園出場を決めたあと、チームは技術練習より過酷なトレーニングを優先した。

「岩手大会が終わってから、2週間くらいですか。練習はウエイトや走り込み中心でした。暑いし、しんどいんですが、"甲子園に出ることじゃなく、勝つことが目標だろう"と(関口清治)監督にいわれ、手を抜くことはありませんでした」

 と納得ずくの主将。県大会で落ちていた体力が戻り、打線が力を発揮したのは、2年生で出場した昨夏と同じだった。

・西浦颯大/明徳義塾・高知 右翼手 右投左打

 試 打 安 点 本 率

春 1 5 2 0 0 .400

夏 2 10 3 1 0 .300

 2年春から4季連続の甲子園。通算37打数13安打のヒットメーカーだ。「集中力が増すし、観客がいると燃えるタイプなんです」と本人はいう。土台にあるのは、傑出した身体能力だ。遠投110メートル、50メートルは5秒9。投球練習をすれば140キロは突破する。志望届提出は、夏の間に決断したという。

・清水達也/花咲徳栄・埼玉 投手 右投右打

 試 回 安 振 責 率

 6 19.2 16 13 3 1.37

 この夏の甲子園で、唯一150キロを計時した右腕。落差のあるフォークを交えてピンチに三振が取れることから、抑え役としてチームの全国制覇に貢献した。

「WBCでは、よく千賀さん(滉大、ソフトバンク)の投球を見ていました。自分は近いスタイルですし、もっとまっすぐを磨きたい」

・綱脇 慧/花咲徳栄 投手 右投右打

 試 回 安 振 責 率

 6 36.1 40 22 9 2.23

・西川愛也/花咲徳栄 左翼手 右投左打

 試 打 安 点 本 率

 6 27 9 10 0 .333

 6試合中4試合で初回に得点と、先制パンチが機能しての優勝。岩井隆監督が「三番の存在が大きい」と絶対の信頼を置くように、西川はそのうち3試合で初回に先制打を放った。広陵との決勝でも、初回の適時2点打など3安打4打点で、

「優勝は、生きてきて一番うれしい」

 もともと左打席での巧みなバットコントロールには定評があった。さらに、オフの間のハンマートレーニングでパワーも向上。「左手の押し込みが強くなりました」と、飛距離の伸びを実感している。この夏、記録した打点はチームトップタイの10と、勝負強さも光った。ヒットゾーンが広く、四番として出場した2年春夏を含め、甲子園10試合で41打数17安打。通算打率.415を残している。

・小松章浩/おかやま山陽・岡山 投手 右投右打

 試 回 安 振 責 率

 1 5.1 5 2 2 3.38

「すぐにでもプロ」社会人が口をそろえる中村の肩

・中村奨成/広陵・広島 捕手 右投右打

 試 打 安 点 本 率

 6 28 19 17 6 .679

 数々の記録を書き換えたスーパースラッガー。走攻守そろった能力についてはもはや書き尽くされたが、とりわけ強調しておきたいのはその肩だ。

 社会人野球の選手と雑談していて中村に話が及ぶと、決まって「あの肩は、すぐにでもプロで通用します」となる。なんでも、二盗阻止を狙う送球は、社会人レベルでさえときどき上に抜けたりするものだが、「中村君は、すべて矢のような低い送球。しかも、コントロールもいい」というのは、プロ注目のある社会人捕手だ。中村が広陵に進学したとき、同期の捕手志望者は早々にその座をあきらめたという話もうなずける。

 圧巻は、聖光学院(福島)との3回戦だ。4対4と同点の8回、広陵は無死一塁のピンチ。だが次打者のバントが目の前に転がると、素早いフィールディングでこれをつかんだ中村は、ちゅうちょなく二塁に送球。併殺を完成させてピンチの芽を摘むと、9回表には決勝2ランを放った。「中村君一人にやられた」とは聖光・斎藤智也監督だ。

 また、"間"の機微をわきまえているのも捕手としての高い資質を感じさせる。試合の流れを敏感にとらえ、必要とあればマウンドに駆け寄り、投手に一言、二言。一度、平元銀次郎をセンター方向に振り向かせたことがあった。試合後、なにを伝えたのかとたずねると、

「"なあ、スコアボードを見てみろよ"と。まだリードしているんだから、おたおたせずに腕が振ればいいじゃないか、と落ち着かせたんです」

 春シーズンまで務めた主将の経験も、捕手としての広い視野に役立っていると見た。

・田浦文丸/秀岳館・熊本 投手 左投左打

 試 回 安 振 責 率

春 2 14 13 11 3 1.93

夏 2 5.1 6 6 3 5.06

 甲子園ではピリッとしなかったが、「この大会の結果次第で、志望届を提出するかを決める」というU18W杯では、オープニングラウンドで9イニングを19三振。左打者へのスライダー、そして魔球といわれた右打者へのチェンジアップがおもしろいように決まった。むろん、志望届を提出した。

・喜多村巴/横浜・神奈川 投手 右投右打

(未出場)

・西巻賢二/仙台育英・宮城 遊撃手 右投右打

 試 打 安 点 本 率

春 1 3 1 0 0 .333

夏 4 15 4 1 0 .267

・長谷川拓帆/仙台育英 投手 左投左打

 試 回 安 振 責 率

春 1 9 10 6 5 5.00

夏 4 30.1 23 15 5 1.48

 先発を回避した広陵との準々決勝まで、24イニングをわずか1失点。「本当に甲子園が楽しくて、楽しくて。すごい打者たちとの対戦はおもしろかった」。途中からマウンドに上がった広陵戦では、中村を3打数無安打に抑えている。

・河野 成季/鳴門渦潮・徳島 投手 左投左打

 試 回 安 振 責 率

 1 1.2 9 2 7 37.80

・阪口皓亮/北海・南北海道 投手 右投左打

 試 回 安 振 責 率

 1 3.2 8 4 4 2.45

 準優勝した昨夏は、ボールボーイ。この夏も背番号10だったが、神戸国際大付戦に先発すると、最速148キロの快速球で一躍注目された。だが4回途中、58球で降板してチームも敗退し、「自分の球速より、勝つ投球がしたかった」。

・永井敦士/二松学舎大付・東東京 左翼手 右投右打

 試 打 安 点 本 率

 2 9 6 1 0 .667

 明桜(秋田)との初戦では5安打をマーク。足もある四番打者。

・北山亘基/京都成章 投手 右投右打

 試 回 安 振 責 率

 1 8.1 8 11 3 3.24

※2017年の春と夏、あるいは夏に出場した選手のうち、プロ志望届提出者のみ(10/3現在)。掲載は試合順で、成績は打者が左から試合・打数・安打・打点・本塁打・打率、投手が試合・回数・被安打・奪三振・自責点・防御率

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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