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異彩を放った異才・加藤和彦トリビュートコンサート開催。その功績を未来へ語り継ぎ、歌い継ぐセッション

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/キョードーメディアス

稀代の天才音楽家・加藤和彦のドキュメンタリー映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』が話題

稀代の天才音楽家・加藤和彦――現在公開中の話題のドキュメンタリー映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』は、トノバンの愛称で親しまれたアーティスト・加藤和彦(2009年逝去)の音楽的な功績を、多くの人の証言で辿り、常に時代の半歩先をいっていた加藤の音楽がどう変化を遂げていったのかが描かれている。

加藤は、1960年代後半にザ・フォーク・クルセダーズでデビューし、1971年にはサディスティック・ミカ・バンドを結成、その後はソロ、作曲家、プロデューサーなど、多岐にわたって活躍してきた音楽家だ。映画ではザ・フォーク・クルセダーズの結成から80年代初頭に発表した、ヨーロッパ三部作と呼ばれる日本のポップスシーンに残る名作『パパ・ヘミングウェイ』(1979年)、『うたかたのオペラ』(1980年)、『ベル・エキセントリック』(1981年)の制作までを追いかけている。

万華鏡のような音楽家

ザ・フォーク・クルセダーズ「帰って来たヨッパライ」(1967年)では実験的な音楽性で衝撃を与え、200万枚超える大ヒットとなり、教科書にも載るスタンダードナンバー「あの素晴しい愛をもう一度」(北山修と共作/1971年)を歌い、さらにグラムロックを基点に、様々な音楽を響かせながら独自の音楽でイギリスを熱狂させたサディスティック・ミカ・バンドまで、とても同じ人物が中心となって作り上げたものとは思えない。その“激しい多面性”には驚かされるばかりだ。進取に富んだ、革新的、先進的、色々な言葉が加藤には当てはまるが、どれも当てはまらない。異彩を放った異才、まさに稀代の天才音楽家だ。この才能はもっともっと評価されるべきだ――映画を観た誰もがそう感じるはずだ。

進化を遂げたスタンダードナンバー「あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver.」

その映画のエンディングを飾るのが「あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver.」だ。加藤をリスペクトし、その音楽を愛する世代を超えたアーティスト達が集結しTeam Tonobanとして新たにレコーディングした。アレンジを手がけた高野寛、高田漣、坂本美雨、石川紅奈、きたやまおさむ、坂崎幸之助、宮川剛、佐藤優介が参加し、そしてドラムサンプルとして高橋幸宏の演奏、さらに1971年当時のライブから加藤和彦の歌声もサンプリングされている。10代~70代のアーティストが参加し、新たな空気が吹き込まれたこの作品は、この加藤の功績を未来へ語り継ぐ、その音楽を歌い継ぐという映画のテーマを象徴するセッションになった。

加藤をリスペクトし、加藤の音楽を愛するアーティストが集結し『加藤和彦トリビュートコンサート』開催

そしてそのセッションには続きがあった。『加藤和彦トリビュートコンサート』として7月10日(水)に加藤の出生地・京都のロームシアター京都 メインホールで、 7月15日(月・祝)には東京・Bunakmuraオーチャードホールで行われる。サディスティック・ミカ・バンドのオリジナルメンバーである小原礼(B)、2007年に行われた同バンドの再結成コンサートにも参加した奥田民生、そしてOriginal Loveの田島貴男、前述したTeam Tonobanとして「あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver.」のレコーディングに参加した高野寛、坂本美雨、さらに加藤の音楽を深くリスペクトしているハンバート ハンバート、GLIM SPANKYが出演する。

気になるセットリストは、今年発売から50周年を迎えるサディスティック・ミカ・バンドの名盤『黒船』や、高橋幸宏や坂本龍一らが参加したヨーロッパ3部作『パパ・ヘミングウェイ』『うたかたのオペラ』『ベル・エキセントリック』の収録曲などを中心に、加藤のヒストリーが浮かび上がるオールタイムベスト的な選曲になる予定だ。そんな、時代を彩った名曲の数々を高田漣(G)、白根賢一(Dr)、伊賀航(B)、ハタヤテツヤ(P)という凄腕ミュージシャンが揃ったスーパーバンドが演奏する。原曲の質感、温度感を活かしながら現代の音楽として鳴らし、色褪せない加藤の音楽が令和という時代にどう響き、それを聴いた当時を知るファン、そして新しいファン、様々な世代のオーディエンスがどう感じるのか――興味が尽きない楽しみなライヴだ。

■『加藤和彦トリビュートコンサート』<万華鏡のような音楽家だった加藤和彦...いつの時代も紡ぎ出す作品は美しく輝いていた>
■出演:小原礼/奥田民生/田島貴男/高野寛/坂本美雨/ハンバート ハンバート/GLIM SPANKY
■バンドメンバー:高田漣(G)/白根賢一(Dr)/伊賀航(B)/ハタヤテツヤ(P)
■7月10日(水)京都・ロームシアター京都 メインホール(17:30/18:30)
■7月15日(月・祝)東京・Bunkamuraオーチャードホール(15:00/16:00)
『加藤和彦トリビュートコンサート』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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