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4人組管楽器ガールズグループ・MOSに集まる注目 「たくさんの人に“ブラダン”をやって欲しい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
Photo/SHUN ITABA

“ブラダン”で注目を集める4人組管楽器ガールズグループ・MOSとは?

4人組の管楽器ガールズグループ・MOS(モス)が話題だ。管楽器を振り上げてステップを踏む、キレのあるダンスとブラスバンドを組み合わせた“ブラダン”が注目を集め、ネオ吹奏楽を提唱し音楽に留まらず、映像、ファッション、ダンスなど、個性豊かに能力を発揮するエンタメ集団だ。

SNSのフォロワーは計130万人を超え、2021年にSNSで『ジョジョの奇妙な冒険』のBGM「JOJO's Bizarre Adventure "il vento d'oro"」の動画がバズり、再生回数は500万回を超えた。東京パラリンピック閉会式でパフォーマンスを披露した。聴いても観ても楽しいブラダンは幅広い層から支持されている。さらに昨年は「アメリカズ・ゴッド・タレント」にも出場し、そのパフォーマンスが絶賛されるなど、世界が彼女達に注目している。

Erna(トロンボーン)、Miyu(トランペット)、AMI(アルトサックス)、Lotta(テナーサックス)にインタビューし、MOSというグループを紐解いていきたい。

全員音楽大出身、ダンス未経験、オーディションで集まった4人。「“ブラダン”というコンセプトと出会うことができて、本当によかった」

Erna(Tb)、Miyu(Tp)、AMI(A.SAX)、Lotta(T.SAX)
Erna(Tb)、Miyu(Tp)、AMI(A.SAX)、Lotta(T.SAX)

全員が音楽大学出身でダンス未経験という4人の出会いはオーディションだった。

Erna 音楽大学に進んで将来どういうふうに活動していくのかを考えている時、このオーディションに出会いました。そこでダンスをしながら演奏するというコンセプトを聞いて、今までそういうチーム、バンドがなかったので面白いかもと思い、迷わず挑戦しました。でも私も含め全員がダンス未経験だったので不安でしたが、新しいことに挑戦するワクワク感の方が大きかったです。

Miyu ずっとクラシックをやってきたのですが、クラシックというと敷居が高いと感じている人がまだまだ多くて、でもスタイルを変えて聴いてもらうことで、もっと身近に感じられる可能性があると思っていたので、MOSのコンセプトを聞いた時に、「これだ!」って思いました。

AMI MOSに入るまではもちろん楽器を吹くことしかやったことがなくて、そんな中でダンスをやることになって、手探りでやっていく中で、新しい音楽の見せ方に気づかされ、自分自身の可能性の幅が広がりました。今までは聴いてもらうための音楽と思っていたけど、今は聴いてもらうプラス、観て楽しんでもらえるエンタメ性があるものを、みなさんにお届けすることができるようになったので、このジャンルに出会えて本当によかったなと思います。

Lotta 音楽はもちろん、ダンスを見るのも、とにかくエンターテインメントというものが好きで、だからそれを一緒に作っていく仲間が欲しかったので、オーディションを受けました。

Miyu マーチングや吹奏楽の振り付けとは全く違うものなので、まずダンスレッスンを時間をかけてやりました。最初はダンスのリハーサルと演奏だけのリハーサルを別でやって、最後に合わせるというやり方をやっていました。

ストリートライブを重ね、手にしたもの

4人は懸命にレッスンを重ね、新宿駅前や日比谷OKUROJI他でのストリートライブで力をつけ、そこにいる全てに喜びを与えられるバンドに成長していった。

AMI ストリートライブライヴは丸1年やりました。色々鍛えられたし、どんな環境でもできるんだという自信がつきました。

Lotta 生音でマイクがない環境でずっとやってきたので、私達たぶんストリートライブを始める前に比べて音が大きくなったと思います。

Miyu:楽器をいかに鳴らせるかということも学ばせてもらいましたし、いろんな環境で演奏する耐性もつきました。

AMI 小さなギターアンプひとつで、40分間ノンストップで4人で合わせて踊って吹いて、人が足を止めてくれるように常に考えて工夫して、本当に体力勝負でした。

Lotta 気持ちも強くなったし、どうやって観てくれている人にアプローチしたらいいのかということを勉強させてもらいました。同じセットリストでも、お客さんの層や私達の気持ちも違うので、毎回違うライブになったし、表現することがただただ楽しかったです。

Erna 外なので季節によって楽器の状態が変わるので、それが大変でした。吹いて息が入ると楽器が温まるので大きい楽器と小さい楽器とでは、ピッチにすごく差が出るんです。小さい楽器はすぐに温かくなって高い音が出るけど、大きい楽器はなかなか音程が上がらないので、合わせようがない時もありました。

Miyu 夏と冬とでは楽器のコンディションが全然違うし、特に冬は唇も気づかないうちにかじかんでいるみたいで、思うように吹けないこともありました。

『アメリカズ・ゴット・タレント』に出場。審査員、観客から絶賛される

そんな4人にチャンスが訪れた。昨年アメリカの大型オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に出演して、見事審査員満票の4Yesを獲得。セミファイナルの『AGT Live Shows』にも出演するなど大きな注目を集めた。

Miyu 私達は動画をそれぞれのインスタやTikTokに上げているのですが、そのインスタのリールを見てくださった番組のプロデューサーさんからDMをいただいたことがきっかけでした。

AMI 現地では番組のプロデューサーさんや担当のディレクターさんと話をしながらどういうステージにするかを決めて、チームで戦った感覚です。本当に一瞬の出来事で、今本当に吹いてたのかなって、ああいうのを夢心地って言うんだって思いました。

Erna 初戦はもちろん緊張していたと思うけど、自分たちの中で吹き終わった後、力を出しきって、やった!って感じでした。

Lotta 一生に一度経験するかどうかのことが人生で起きたと思いました。セミファイナルの時は、世界各国から参加している出演者のパフォーマンスに圧倒されましたが、でも「いける」って自信を持って100%力を出し切ることができました。

Miyu 1回目は弾丸日程でしたが、セミファイナルは2週間ぐらい滞在して準備もしっかりできたので、意外と冷静にパフォーマンスできました。

審査員の一人がMOSについて「すごく難しいことを楽しそうにやっている」とコメントしていた、それこそがMOSの凄さであり、強さだ。

AMI 自分達も思い切り楽しんで吹こうということは、常に心掛けています。

Miyu でも息切れしてます(笑)。踊りながら吹くって皆さんが思っている以上に大変なんです(笑)。でもそれをいかに表に出さず、楽しくやれるかということを必死に練習してきたし、ストリートライブも含めて、色々なところでたくさんライブをやってきたからこそ、できていることだと思います。

AMI たくさんの人に挑戦してほしい。ブラダンを新しいジャンルとして私達が提示して、広げていきたいので、MOSを真似してチームを組んでくれる子供たちが出てきたら、本当に嬉しいです。

Erna SNSにMOSの真似をして動画を投稿してくれている学生さんも増えてきていて、もちろん全部見させていただいてます。

「ライブで盛り上がる曲をもっと作りたい」

ErnaはTWICE、MiyuはNiziU、YOASOBI、AMIはマイケル・ジャクソン、熱帯JAZZ楽団、ポルノグラフィティ他、Lottaはビートルズを、それぞれフェイバリットアーティストとして挙げているが、楽曲はどのように制作しているのだろうか。

AMI 本当にみんな好きな音楽はバラバラですが、音楽プロデューサーと私達でこういうジャンルのものをやってみようとアイディアを出したり、他のアーティストさんとコライトして楽曲を作ることも多いです。その中で最初はブラダンとして映える曲、みんなが乗れるような曲をテーマに作っていました。でも今年私達はライヴをとにかくたくさんやって、真のライブアーティストを目指そうという目標を立てたので、ブラダンというテーマだけではなくライブで盛り上がるというのをテーマに楽曲を作っています。

「コラボでは、そのアーティストの素敵なところを出すためのスパイスになりたい」

2022年にはC&Kとコラボした「もすごい音楽しようね feat.C&K」をリリース、 4月10日に配信リリースした最新シングル「I Need U / hajime feat. Miiakiis」は、ラップユニットMiiakiisとのコラボが実現。インストと他のアーティスとのコラボ曲とでは、全く違う意識、アプローチなのだろうか。

AMI 私達は自分達が主役のインスト曲でも、誰かとコライトしてコラボするのも、そのどちらのフィールドにも立てるというか。コラボ相手に合わせることもできるし、自分たちを主張することもできる。その点で今回のMiiakiisさんも、これまでコラボさせていただいた方も、そのアーティストの素敵なところを出すためのスパイスになりたいと思っています。もちろんそのアーティストのバック、という見え方、存在ではなく、MOSらしさも入れつつ、でもいつものMOSともちょっと違うというか、相手のアーティストの匂いを入れながら、MOSらしさも残すということに大切にしています。「I Need U」はどちらのよさも出た、いい楽曲になったと思っています。

『甲子園ブラスバンドフェスティバル2024』のサポーターアーティストに就任

『甲子園ブラスバンドフェスティバル2023』(写真提供/billboard japan)
『甲子園ブラスバンドフェスティバル2023』(写真提供/billboard japan)

MOSは 、6月16日に阪神甲子園球場で開催される吹奏楽の祭典『甲子園ブラスバンドフェスティバル2024』のサポーターアーティストとしてパフォーマンスする。吹奏楽の先輩として高校生とのコラボステージも予定されている。

Miyu 管楽器のこんな大きなフェスに呼んでいただけて、MOSが今までやってきたことが認めてもらえたような気がして、本当に嬉しいです。今回出場する高校は野球もブラバンも強い有名校なので知っている学校ばかりで、だから甲子園球場では高校生のみなさんが先輩だと思って一緒に楽しみたいと思っています。

AMI ブラバンの強豪校が揃っていて、みなさんとコラボさせていただくのは私達も刺激になるし、一緒に練習して本番を迎えるまで本当に楽しみです。

『甲子園ブラスバンドフェスティバル2023』(写真提供/billboard japan)
『甲子園ブラスバンドフェスティバル2023』(写真提供/billboard japan)

Lotta めっちゃ嬉しいです。誰もができることではないし、しかも甲子園が開場100周年という記念すべきタイミングで、楽しみながらやりたいしその時間を大切にしたいです。

AMI この話を友達にしたら、甲子園の土を持って帰るようにと言われました(笑)

Erna 元々野球好きなんですが、高校時代は甲子園とは無縁でした。なのでようやく甲子園に行くことができて感激です。Miyuも言っていましたが、MOSもこの舞台に立てるくらいみんなに知ってもらえたのかという喜びがありました。最近甲子園の応援で「JOJO's Bizarre Adventure "il vento d'oro"」を演奏している学校が増えていて、直接私達がSNSでこの曲でバズったことが理由なのかは定かではないですが、その辺りから採用する高校が増えたイメージがあったので、より高校生ブラスバンドに注目するようになりました。

夏に無料ツアー『MOS GOES TO YOUR TOWN』を開催。夢はワールドツアー

今年はライブを精力的に行なうと語ってくれたが、今夏には無料ツアー『MOS GOES TO YOUR TOWN』の開催も発表され、まず第1弾の「東海近畿編」開催に向けクラウドファンディングに挑戦し、支援が集まった。今後の野望を聞かせてもらった。

Lotta まず国内でたくさんの人にライブを観ていただきたいのはもちろん、国内だけではなくグローバルに活動をしたいので、ワールドツアーを目指して頑張ります。

MOSオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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