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藤井聡太七段、最年少タイトル獲得の正念場――第91期棋聖戦五番勝負第4局展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
2勝1敗とリードし棋聖獲得まであと1勝の藤井七段(筆者撮影)

 渡辺明棋聖(36)に藤井聡太七段(17)が挑戦する第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)は開幕から藤井七段2連勝のあと渡辺棋聖(棋王・王将)が1勝を返し、7月16日大阪府大阪市「関西将棋会館」で第4局が行われる。

 最新データを基に第4局の展開と五番勝負のゆくえを予想してみた。

復調著しい渡辺棋聖

<渡辺棋聖の最近10局>

3月25、26日 王将戦七番勝負第7局

対広瀬章人八段 ○

5月1日 王座戦本戦

対増田康宏六段 ○

6月8日 棋聖戦五番勝負第1局

対藤井七段 ●

6月10、11日 名人戦七番勝負第1局

対豊島将之名人 ○

6月18、19日 名人戦七番勝負第2局

対豊島名人 ●

6月25、26日 名人戦七番勝負第3局

対豊島名人 ●

6月28日 棋聖戦五番勝負第2局

対藤井七段 ●

7月4日 王座戦本戦準々決勝

対行方尚史八段 ○

7月9日 棋聖戦五番勝負第3局

対藤井七段 ○

7月13日 王座戦本戦準決勝

対豊島竜王・名人 ○

<藤井七段の最近10局>

6月10日 王座戦2次予選

対大橋貴洸六段 ●

6月13日 王位戦リーグ白組

対阿部健治郎七段 ○

6月20日 竜王戦ランキング戦3組決勝

対杉本昌隆八段 ○

6月23日 王位戦挑戦者決定戦

対永瀬拓矢二冠 ○

6月25日 順位戦B級2組

対佐々木勇気七段 ○

6月28日 棋聖戦五番勝負第2局

対渡辺棋聖 ○

7月1、2日 王位戦七番勝負第1局

対木村一基王位 ○

7月6日 順位戦B級2組

対橋本崇載八段 ○

7月9日 棋聖戦五番勝負第3局

対渡辺棋聖 ●

7月13、14日 王位戦七番勝負第2局

対木村王位 ○

 両者とも複数のタイトル戦を並行して戦っており、スケジュールは超過密だ。この点は若い藤井七段に有利に働くと見るが、渡辺棋聖の復調ぶりは著しい。

 最近10局の成績を比較すると渡辺棋聖は6勝4敗といま一つの星ながら直近3連勝。王座戦では挑戦者決定戦進出を決めており、今年秋には現在挑戦中の名人を加え、五冠も視野に入ってきた。

 一方藤井七段は8勝2敗と好調をキープ。ただし第3局では中盤以降僅差とはいえ渡辺棋聖に逃げ切りを許し、直近の王位戦第2局も木村王位に終始苦しい将棋を大逆転勝利と内容的に若干の不安が残る。

 第4局は渡辺棋聖の先手番ということもあり、コンディションはほぼ互角といっていいだろう。

矢倉が本命。相掛かりの可能性も

 渡辺棋聖はカド番の第3局で藤井七段が得意とする先手角換わりを深い研究で打ち破った。先手番の第4局では矢倉を採用する可能性が高いと見る。次に有力視されるのが相掛かり。

 いずれも先手が主導権を取りやすい戦型で、中盤までに優位を築けば藤井七段得意の終盤力を封じることができるかもしれない。

 本局に勝って2勝2敗のタイに追いつけば、最終第5局は番勝負の経験豊かな渡辺棋聖の流れになることは間違いない。

 さまざまなメディアに取り上げられ、将棋ファン以外からも全国的な注目を浴びる藤井七段にとって第4局は正念場といえる。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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