女子小学生にもコーディングはできる!ノルウェーは女性エンジニア育成に必死だ
ノルウェーで初、女子限定エンジニア育成集会
ディズニー映画『アナと雪の女王』のアナとエルサと一緒に、コードを書きながら、スケートをする。まるでゲームのように。「あ!できた!」、「こうやるんだね。おもしろい」と、笑いながらコーディングを楽しんでいるのは8才の女子3人組、ルシーアちゃん、サンナちゃん、ヘレーナちゃんだ。この会場では、8~10才のノルウェー育ちの女子小学生200人が集まり、コーディングや工学技術を学んでいた。
女子小学生のためだけの大規模なコーディング&テクノロジー体験会がノルウェーで開催されるのは初となる。オスロでは現在、欧州最大規模のイノベーション・コンベンションである、オスロ・イノベーション・ウィークが開催中。13日の「ガール・テク・フェス」では、1日限定6時間の集中講座が催され、市内の6つの小学校が参加した。
午前と午後でコーディングとワークショップの2つのグループに分かれた。
- コーディング「Code Studio」
- ワークショップ内容:3Dプリント、3Dプログラミング、電子工作「リトルビッツ」、果物などをコントローラーにして楽器ソフトを作る「メイキー・メイキー」、ストローで模型を作る工作キット「ストロービーズ」、デジタルで作るアクセサリー
「男の子の世界」なんて、思い込み!
リーヴ・フレイホブ氏は、ノルウェーICT(情報通信技術)の産業政治部ディレクターとして、教育現場でのICT環境整備の必要性などを政治家に伝えている。
男女平等先進国と国際的に評価されているノルウェーだが、ITやテクノロジー業界で働きたがる女性が少ないことが国の課題だとインタビューで語る。ノルウェーの未来をつくっていくのは、女性エンジニアだと考えられているからだ。
10才になる前に、興味をもつことが将来を大きく変える
「ゲームとコーディングの違いは今大きくはありません。けれど、ゲームをしているのは男の子ばかり! 女の子はSNSをしたり、パソコンを使います。けれど、男の子と違い、将来的にテクノロジーやITを学業として専門科目に選ぶ女の子があまりにも少ないのです。思春期や趣味の幅が広がり始める10才という時期を過ぎてしまうと、子どもの嗜好は変わりにくくなる傾向があります。だから、今回は楽しさを知ってもらうために、8~10才の女の子だけを集めたのです」
「ノルウェーのIT業界で働く女性は、たった23%。学生時代にITやテクノロジーを学ぶ女性は5~30%だけです。不思議なことに、学ぶ内容はほとんど変わらないにも関わらず、科目名が“情報通信技術エンジニア”だと男子大生、“コミュニケーション・テクノロジー”だと女子大生が多くなる傾向があります。社会的なイメージも影響しているのでしょう。スターウォーズのグッズに囲まれて、Tシャツを着たばかりの男の子が多い環境は、女の子にはつまらないでしょう?」
ノルウェーは、女性の首相や大臣、管理職のリーダーが多い男女平等が進んだ国だ。そのため、フレイホブ氏は、ノルウェーで女性エンジニアが少ない原因は、男女差別や女性がぶつかる社会的バリアではなく、業界へのイメージが問題だという。「この業界の男性たちは、むしろもっと多くの女性たちと働きたいと熱望しています。職業を自ら選ばないのは、女性たちなのです」。
女性エンジニアはノルウェーを支える宝となる
女子小学生に早い時期から興味をもってもらうことが重要であると同意するのは、マイクロソフト・ノルウェーの広報ヴィーベケ・ハンセン氏だ。「2020年までには、90%の全業界において、デジタル技術能力が必要とされます。この中に、将来私たちが一緒に働く子もいるかもしれない」と語る。同社では、女性の管理職が60%、企業全体では女性が31%を占める。今回のイベントでは、女性スタッフが先生役として女子小学生に指導していた。
ノルウェー皇太子も応援している
サプライズでノルウェーのホーコン皇太子も訪れ、会場は喜ぶ女子たちの歓声で包まれた。「楽しいイベントですね。ノルウェーにはIT分野などにおいて、女性の力がもっと必要です。このような場所でモチベーションを上げて、人材が育成されることを願います」と語った。
Photo&Text:Asaki Abumi