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シード喪失の渋野日向子に近くでスイングを見る人は必要?仲良いイ・ジョンウン6が送ったアドバイスとは

金明昱スポーツライター
シード喪失した渋野日向子(写真・Simone Asia Pacific)

 渋野日向子が、イ・ジョンウン6が語っていた話をどの程度、本気に受け止めていたかは分からないが、きっと頭の中では理解していると思う――。

 米女子ゴルフツアー2年目の今年は、決して納得いくシーズンではなかったと思う。それは試合のたびに発する言葉の数々が、成績と比例して前向きではないコメントがほとんどだったからだ。

 今季は3月の「LPGAドライブオン選手権」で7位に入り、優勝への期待も膨らんだが、左手の痛みから思うような練習やプレーができなかったことを正直に吐露していた。トップ10入りは1回で、年間ポイントランキングは83位となり、上位80位までに与えられる来季シード権を喪失した。

 シーズンを終えて日本に帰国後、今月24、25日には「2023年渋野日向子杯 第2回岡山県小学生ソフトボール大会」を開催。ここで改めて今季1年と来季への意気込みを語っていたが、「落ちるところまで落ちた。来年以降は這い上がるしかない。何かにチャレンジしていかないといけない」と覚悟をにじませていた。

 渋野の来季出場権は“準シード”(81~100位)のため、フル参戦はできず、どの試合から出るのかも確定はしていないが、「出られる試合でしっかり結果を残していかないといけない」と米ツアーで戦い続ける意思は明確だ。

イ・ジョンウン6「日向子の笑顔が印象的」

 今年、渋野の米ツアー初戦となった「ホンダLPGAタイランド」に取材に行った時のことだ。渋野がたびたび「韓国のイ・ジョンウンさんと日本や韓国で一緒にご飯を食べたりしている」と話していたのを思い出し、2つ上の先輩でもあり、米ツアー初優勝が全米女子オープン(2019年)のイ・ジョンウン6に直接、渋野の印象と彼女へのアドバイスについて聞く機会があった。

 そこでは、渋野に最初に声をかけたのは、イ・ジョンウン6からだということも分かった。きっかけは「プレーするときの笑顔が本当に良くて、印象に残っていたから」で、だからこそ「妹のように面倒を見たり、自分が何か助けになりたいと思った」とも話していた。

 そしてゴルフの結果や成績が出ないことについても、自身の米ツアー1年目からここまで、苦労の面では共感する部分もたくさんあると言っていた。

「近くでスイングを見る人がいればうまくいく」

「(渋野)日向子選手のコーチは日本(青木翔氏)にいると聞きます。米ツアーでは離れてコーチの指導を受けるのは、そう簡単ではありません。私も3年間、コーチがいない状況の中、米国で戦いスイング改造もたくさんしました。成績が悪い時もあるのですが、私はようやくカナダにいるコーチを探しました。英語がうまく話せなかったので、避けていたのですが、今は言葉も大丈夫ですし、近くでスイングを見てくれる人がいればうまくいくと感じています」

 ルーティン、ペース、戦い方に考え方、人とのコミュニケーションや物事の捉え方など、選手それぞれが違っていて当然で、シーズンを戦うなかで自分にピタリと当てはまるものを見つけ出す作業を続けている。コーチが近くにいなくてもできるという選手もいるが、イ・ジョンウン6は自身が経験したことを渋野だからこそ、伝えたいようだった。

 来季は米ツアー参戦から3年目となる渋野には、巻き返しの1年になるが、そういう意味でイ・ジョンウン6の言葉は一考の余地があるかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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