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「東京の半分以下の費用で可能」「漢江はセーヌ川よりきれい」は本当?ソウルが2036年五輪招致を本格化 #専門家のまとめ

金明昱スポーツライター
1988年に開催されたソウル五輪の開会式(写真:アフロ)

2036年夏季五輪の開催に韓国・ソウルが名乗りを挙げた。元々韓国は、2032年五輪を北朝鮮との共催を目指していが、国際オリンピック委員会(IOC)がオーストラリアのブリスベンを推薦したことから断念。32年ブリスベン五輪の次、36年五輪開催にソウルが単独開催の招致を目指すという。他にも招致を目指しているライバル国は多いが、ソウルは何を“売り”にしているのか。東京五輪でも露呈した費用面の問題や施設などはどうなるのか。現地報道を中心にまとめてみた。

ココがポイント

2036年ソウル五輪を「リサイクル五輪」として開催するという目標だ。五輪開催のために新たに競技場を建てることはない。
出典:中央日報日本語版 2024/12/26(木)

開催環境が韓国と最も似ている隣国の日本で開かれた東京五輪と対比しても、費用がわずか33%にとどまる。
出典:毎日経済 2024/12/25(水)

ソウル市民10人のうち7人は、2036年の夏季五輪のソウル開催に賛成していることが分かった。
出典:東亜日報 2022/10/18(火)

「(パリの)セーヌ川よりもはるかにきれいで秀麗な漢江は五輪が開催されれば世界から注目を集めるだろう」
出典:朝鮮日報日本語版 2024/8/12(月)

エキスパートの補足・見解

 韓国が初めて夏季五輪を開催したのは半世紀前の1988年。その後、韓国は北朝鮮との五輪共催を模索し、双方で会談も行っている。文在寅・前大統領もIOCのバッハ会長と会談するなどで、共催への意欲を見せていたが、政権交代などで南北関係に緊張が生まれ、正直なところ、実現へのハードルは高いと言わざるを得ない。

 そこにきて2036年五輪をソウルで単独開催すると舵を切った。既存の施設を使い、費用も徹底的に抑えるという。競技開催はソウルだけでなく、地方都市の施設も活用するという。費用は東京五輪の半分以下で、パリ五輪ではセーヌ川沿いを観客席にしたが、ソウルでもそのような会場作りを構想。ソウル市内には光化門(クァンファムン)広場、漢江公園、汝矣島(ヨイド)公園など広く使える場所があるが、これらを有効活用するという考えだ。

 とはいえ、他にも招致を目指しているのがポーランド、インドネシア、トルコ、エジプト、インドなど。特にインドは11月にIOCに立候補を決めたばかりで、開催が実現すれば夏冬を通して初めてと注目度も高い。K-POPの世界的人気の韓国だが、大会を実現に向けてどのようなアピールができるか注目したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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