最後の練習試合で見せた投手力!湯浅投手はホロ苦デビュー《阪神・安芸キャンプ》
きょう27日の12時半頃に、阪神タイガースの安芸キャンプが打ち上げとなりました。朝は青空が見えたものの、どんどん雲が増え天気は下り坂。午後にはもうポツポツ来ていたし、あすは雨予報なので、昨年より1日早い終了でよかったですね。ただしキャンプ後半は気温の上昇に伴って花粉の飛散が半端じゃなかったらしく、平田勝男監督の目は真っ赤だし、くしゃみと鼻水でグズグズの選手も…。気の毒です。
安芸キャンプを振り返った平田監督はルーキーの片山雄哉選手がMVPと発表。それも含めて、キャンプ総括は次の記事で書かせていただきます。お待ちください。
さて、きのう26日は安芸キャンプ最後の練習試合が行われました。相手は毎年恒例、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグス。駒田徳広監督が就任してもう4年目、吉田豊彦投手コーチもおなじみですね。そこに今季、新しくコーチに加わったのが昨年まで阪神でブルペン捕手を務めていた本田明浩さん!いつもこの時期は安芸、という生活が18年も続いた本田さんだけに、ちょっと寂しいキャンプだったのですが、違うユニホームでの約4か月ぶりの再会は新鮮でした。
野手コーチとのことですが、阪神在籍時と同じく練習の最初から最後まで仕事がいっぱい!守備練習のノックはもちろん、打撃練習でのバッティングピッチャーも必ず。回数は少ないけどブルペンでのキャッチングもあるそうです。吉田コーチいわく「本当に助けていただいています」とのことでした。
試合中も、攻撃の時は三塁コーチとして、守備ではベンチから「油断するなよ」「来るぞ、来るぞ」「思い切って行け」というような声が常に聞こえます。なんせ登板する投手陣の癖も特徴も、すべて把握しているわけですからね。聞きなれた声にマウンドで反応するピッチャーもいたのでは?
安芸キャンプ最後の練習試合
では試合結果をご紹介しましょう。投手陣では高橋遥人投手と湯浅京己投手が初登板、野手では小幡竜平選手が初の1番で出場して3安打と初盗塁でした。残念ながら9回に逆転され、その裏に追い上げながら1点及ばず、初黒星となっています。
《安芸キャンプ・練習試合》
阪神-高知 2月26日 (安芸)
高知 101 000 004 = 6
阪神 010 000 202 = 5
※特別ルール
◆バッテリー
【阪神】谷川-秋山-尾仲-高橋遥-呂-湯浅-牧 / 片山-小宮山(8回~)
【高知】古谷(3回)-石井(3回)‐小川(1回)‐高橋(1回)-宮川(1回) / 松田-金子(9回裏)
◆三塁打 高:濱
◆二塁打 高:日高、藤原 神:陽川、藤谷、小幡
◆盗塁 高:高井 神:小幡、熊谷2、陽川
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]遊:小幡 (5-3-0 / 0-0 / 1 / 0)
2]二:熊谷 (5-2-0 / 1-0 / 2 / 0)
3]中:伊藤隼 (5-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
4]左:陽川 (5-1-0 / 0-0 / 1 / 0)
5]一:山崎 (4-1-2 / 1-1 / 0 / 0)
6]捕指:片山 (5-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
7]右:森越 (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0)
8]指捕:小宮山 (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0)
9]三:藤谷 (4-2-1 / 1-0 / 0 / 0)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
谷川 4回 59球 (6-6-0 / 2-2) 141
秋山 1回 7球 (0-2-0 / 0-0) 142
尾仲 2回 12球 (0-2-0 / 0-0) 146
高橋遥 2回 10球 (0-2-0 / 0-0) 146※
呂 4回 9球 (0-1-0 / 0-0) 138※
湯浅 0.2回 38球 (3-1-2 / 4-4) 147
牧 0.1回 2球 (1-0-0 / 0-0) 142
※高橋遥 高知側のスピードガンでは148キロを計測
※呂 表示されなかった球が多数あり
<試合経過>※敬称略
先発の谷川は1回、先頭にセカンド内野安打、次が左翼線ぎりぎりの二塁打で無死二、三塁となって3番・高井にレフトへの先制タイムリーを浴びます。しかし、そのあと4番からは3連続で見逃し三振!2回は三者凡退でした。3回は2死後に高井の内野安打と4番・若原の中前打で一、三塁として5番・宮田に左前タイムリー(サード藤谷がグラブに当てるも止められず)。4回は再び三者凡退で、6安打2失点。
その間の打線は、1回に2死満塁のチャンスがあったものの得点なし。2回は先頭・森越の中前打などで1死二塁となり、藤谷の打球がショートの手前でイレギュラーバウンド(記録は内野安打)して森越は生還!
2対1と高知リードで迎えた7回に小宮山の四球と藤谷の三塁線を破る二塁打などで2死二、三塁として、熊谷の一ゴロでバックホームされますが小宮山はセーフ!記録は野選。伊藤隼の投ゴロで熊谷が挟まれてアウト、2死二、三塁となって陽川の遊ゴロエラーで藤谷が生還。この回1ヒットで2点を取り逆転しました。
なお投手陣は5回の秋山が2奪三振の三者凡退。6回は尾仲が登板して2奪三振の三者凡退。7回の高橋遥も2と奪三振の三者凡退、8回の呂は1奪三振で三者凡退。見事な救援で、8回までで既に毎回の13三振を奪っています。ちなみに次の湯浅も1つ三振があったので、9回まで毎回奪三振ですね。
その湯浅は先頭の若原から145キロの真っすぐで三振、続く宮田は投ゴロで2死としましたが、濱に初球を右中間へ運ばれ三塁打、代打・ソンには三塁線ぎりぎりに落とされるタイムリー(スライダー)、四球のあと9番・藤原に左中間への2点タイムリー二塁打(真っすぐ)。次が暴投と四球で降板します。
2死一、三塁で代わった牧は宇佐川に初球の真っすぐを右前タイムリーされ、次も初球を今度は二ゴロで終了。湯浅は3安打4失点となりました。その裏、先頭の小幡が放った打球にレフトが飛び込んで「捕った!」とグラブを掲げたものの、ボールは地面に…。記録は左前二塁打で続く熊谷は中前打。熊谷がこの試合2つ目の二盗を決めて、2死後に山崎が中前タイムリー!2人が還って1点差です。しかし最後は片山が中飛で試合終了。
初登板の高橋遥投手と湯浅投手
試合後の談話は平田監督からご紹介します。高橋遥投手について「何キロ出ていた?」と記者に質問。相手チームのスピードガンで148キロ、阪神側のガンは146キロです。「そんな出てるの?ガンはもちろんだけど、プラン通りキャンプ後半にゲームで投げられた。すごく順調に来ているということ。落ち着いていたね。シート(打撃登板)を2回やったし、球が上ずるとか、力んだという感じでもなかった」
次の予定については「まだトレーナー預かりだから。ここまで順調」と監督。順調に来ているからこそ、急かしてはいけないということでしょうね。やはり持っているものがありますか?と聞かれ「もちろん、もちろん!球の力は群を抜いているし」と頷きました。
秋山投手には「角度があって真っすぐもよかった。これこそ、どんどんイニングを増やしていける。でも3月になると1軍との兼ね合いもあるからね。(1軍の)開幕までは落ち着かない」とのこと。1軍のオープン戦やファーム教育リーグなど選手が行ったり来たりする時期で、ピッチャー陣もなかなか先読みはできないですね。
初登板の湯浅投手の話になり、平田監督は「そんなに甘くないってことで、いいんじゃない?球数がいったから交代したけど。真っすぐだけでは厳しいとわかってくれればね。打たれたのはいいこと。勉強だから。ゲームが一番いい練習になるねん。向かっていく姿勢、若さを出して課題に取り組めばいいことだし」と話しています。
同じくルーキーの小幡選手が3安打しました。「スチールなんか見事やで!足があるから内野安打も拾える。盗塁のスタートの勘、スライディングの速さとか、センスがあるよ」。絶賛の平田監督でした。
先発での復帰を目指す秋山投手
では選手のコメントにまいりましょう。
まず谷川昌希投手です。初回と3回、ともに3連打で1点ずつ失ったことに「粘れなかったですねえ」と反省。でも1回はアウト全部を見逃し三振で片づけ、2回と4回は三者凡退でした。「三振はたまたまです。(ストライクゾーンも)広かったし」と苦笑い。そして「いいところと悪いところが出ました。立ち上がりに球が浮いていて、そこを修正できたのはよかったです。悪かったのは初回。ブルペンでの作り方も考えないと」と言っています。
次に秋山投手は「前回より体重の乗った球が投げられたと思うし、膝の不安も前回よりなかったので、高さに不満はありますけど思ったより強い球が投げられていた。いい方向に進めるものは出せたかな。これからイニングが増えてくると思う。先発を目指す以上、しっかりやらないと」と次へ向かっている様子です。
平田監督が、角度のある球を投げていたと聞いた秋山投手。「まあ膝が動くようになって、自分のフォームで今まで足りていなかった部分で感じるところがあって、その感じたところをゲームで出せればいいなと。きょうは体重の乗った球が投げられて、それを増やしてもっと低めに投げられれば。球は強かったけど、感覚の割にスピードが出ていなかった。でもそのうち出るかなと思っています」
相手チームのスピードガンはもっと速い数字が出ていたようですよ。昨年、手術(クリーニング術)を施した右膝について「可動域を探り探りで、それに慣れてしまっているところがありました。手術前からです。それに馴染んでしまったところがあって、そこを使っていけるようになったので、体重も乗ってきたと思います」と自己分析。
それにしても相変わらず素晴らしいコントロールで、球速を計っていたアルバイトさんたちが「すごいですね!」と目を丸くしていました。
惚れ惚れする速さとキレ
16日の練習試合で投げたあと少し腰に張りが出て、大事を取りゲームから離れていた尾仲祐哉投手。早めに対処したおかげで軽く済み、この日の登板に至っています。秋山投手の制球に感激したアルバイトさんたちは、続いて尾仲投手の球のキレに感動していましたよ。それに平田監督も「尾仲、きょうも見事だよ。腰がちょっと張ったようだけど、球はキレッキレだよ!」と短く大絶賛だったくらい。
でも本人は「いや~まだまだ全然です。真っすぐの精度と、追い込んでからがもったいなかった。決めにいって決めきれなかった」と反省を口にしました。3人とも2球で追い込んで1つボールを挟んでの結果ですが、それでも中飛、三振、三振ですよ。お見事です。
高橋遥投手は、キャンプ最後の実戦で投げられて「楽しかったです!やっぱりバッターに投げるのはいいなと思いました」とニコニコしています。「みんなに声をかけてもらって楽に投げられました。片山さんには自分の投げたいボールなどの意思を尊重してもらったし、最後は(セカンド熊谷)敬広が守ってくれて、3人で終われた」とチームメイトに感謝。そして「楽しかった。ホッとしています」と。
ボールについては「ブルペンからそんなによくなかったけど、マウンドに上がったら、ある程度投げられた。この前のシートの方がよかったです。でも真っすぐを投げたいと思っていたので、投げて抑えられてよかった」と言っています。肩は?「10球なので大丈夫です。ボールはよくなっています。片山さんが構えたところに決め球を投げられてよかった」。終始、ホッとしたような笑顔が印象的でした。
ルーキー2人はちょっと明暗?
9球で2死を取ってから一転、ほろ苦いデビューとなった湯浅投手。練習後は片山選手や他の人からも「2アウト取って調子に乗ったんじゃないのかぁ~?」なんて突っ込まれて「そんなことないです。違います」と苦笑い。でも真っすぐに力があったのでは?「まあ感覚的には悪くなかったけど、最初から高めに浮いていたので。それがやっぱり…」。修正は?「できなかったです」
初実戦を振り返って「真っすぐもスライダーも全部高めに浮いていて、真っすぐが低めのいいところに決まれば、ツーシームに自然とバッターも手を出してくれるけど。低めに投げられるコントロールを、これから意識していかないといけない」と反省しきりでした。
マウンドに上がる前は「緊張していたけど、楽しみな部分もあった」そうです。なお試合後、香田勲男投手コーチから「久々の試合で、いい部分も出たし悪い部分も出たな」と言われたとか。そのまま2人でブルペンへ行ったのは?「プレートの位置でしっかり投げ切れていないので、それを確かめるために」。次の登板で挽回しましょう。
最後は、内野安打2本と二塁打、そして初盗塁のルーキー・小幡選手ですが「しょぼい打球しか打てないんで。ほぼ内野安打じゃないですか?」と苦笑い。足があっての内野安打ですから。「結果より、自分がしっかりスイングできているかどうか。最終打席(二塁打の前に2つファウルがあり)、ファウルですけど自分のスイングができた。それを最初にできれば」
初盗塁は「いい感じで入れましたね。最後ちょっと滑りましたけど(笑)」。写真を撮りましたよ。「撮ったんですか?」と、また笑ったあと「アップの時から走り方を意識してやれと言われています。足が速くなるように」と続けた小幡選手。まだ速くなる?と聞いたら「速くします!」とキッパリ。1番という打順については「先頭が出る出ないで違ってくるので、初回は何とか出たいと思っていた」そうです。なお小幡選手と川原陸投手は28日が高校の卒業式のため、束の間チームを離れます。
<掲載写真は筆者撮影>