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映画『スラムダンク』快挙の下支えとなった「N次観覧」と待ち受ける「世界のライバル」たち

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
映画『スラムダンク』のポップアップストア前のポスター(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

日本の長編アニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』(以降『スラムダンク』)が韓国でひとつの歴史を塗り替えた。

日本アニメ映画の歴史を塗り替えた『スラムダンク』

3月5日、韓国の映画館入場券統合ネットワークによると、映画『スラムダンク』は同日午前、累計観客動員数381万8000人余りを記録し、韓国で公開された日本のアニメ映画の歴代観客動員数で最高記録を更新したのだ。

これまでの歴代トップは2017年に公開された『君の名は。』で、観客動員数は380万2000人。6年ぶりに歴史を塗り替えた。

今年1月4日に韓国公開されてから61日で達成されたこの快挙。その要因のひとつしてあげられているのは、「N次観覧」だ。

「N次観覧」は何度も劇場に足を運んで観覧することを意味する新造語で、映画『スラムダンク』はこのN字観戦の割合がかなり高い。韓国メディア『毎日経済』が全国シネコン・チェーンのCJ CGVのもとで算出した計算によると、『スラムダンク』を2回以上鑑賞した人は100人中9.7名、3回目は6.7人、5回以上は2.8人もいたという。

まさに熱狂的なファンたちに支えられているわけだ。

余談になるが、韓国では2018年8月に韓国のウェブトゥーン(ウェブ漫画)作家が連載中だった作品の絵柄が『SLAM DUNK』と酷使しているとの指摘が相次ぎ、物議を醸したこともある。

(参考記事:あの『スラムダンク』を韓国漫画家がパクって大炎上!『ろくでなしブルース』の喧嘩シーンも【比較画像】)

そのときも『スラムダンク』の熱狂的なファンたちの指摘と猛抗議がキッカケだったが、そうしたマニアたちの熱意が新記録達成を下支えしていたことは間違いないだろう。

『カンフー・パンダ』やディズニー映画に迫れるか

それに今回の新記録は、『千と千尋の神隠し』などのジブリ作品、爆発的なブームを呼んだ『鬼滅の刃』、そして新海誠作品の代名詞である『君の名は。』といった日本アニメ映画史に輝く名作たちを次々と追い越しての達成だけに意義深い。

まさに『スラムダンク』が韓国においては“ジャパニメーションの代表格”になったわけだ、『スラムダンク』がこれから競うのは「世界」となる。

韓国における日本アニメ映画との競争では1位の座に戴冠した『スラムダンク』が世界各国のアニメ映画が打ち立ててきた偉大な記録の数々にはまだ及ばないのだ。

これから真っ先に追い抜くことになりそうなのはドリーム・ワークス・アニメーションが世に放つ自信作『カンフー・パンダ』シリーズ。シリーズ第3弾の『カンフー・パンダ3』が398万4814名で歴代7位にあり、第1作は467万3009人の歴代6位になっている。

この『カンフー・パンダ』シリーズを追い抜いたとしても、『スラムダンク』の行く手にはさらなる強敵が待っている。

5位『ズートピア』(470万7962人)、4位『インサイド・ヘッド』(497万1192人)とディズニー作品が続いたあと、3位に『カンフー・パンダ2』506万47192人を挟み、最後の最後に強敵が現れのだ。

『アナと雪の女王』シリーズだ。しかも、『アナ雪』シリーズはとてつもない記録を打ち立てている。

アニメ映画が500万人を突破するだけでも凄いのに、2位は『アナと雪の女王』(1030万4910人)となっており、栄えある1位の『アナと雪の女王2』に至っては1375万403人の観客動員に成功しているのだ。

ようやく350万人を突破して歴代8位になった『スラムダンク』としては気の遠くなるような数字かもしれないか、はたしてその記録をどこまで伸ばすだろうか。

3月3日からは『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』が韓国でも公開され、3月8日からは新海誠監督の新作『すずめの戸締まり』が韓国で封切りされる。

新たな競争相手の登場は『スラムダンク』にとっては不利に働くかもしれないが、日本のアニメ映画が韓国各地のシネマ・コンプレックスで大人気を呼ぶのは間違いないだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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