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スキなし豊島将之挑戦者(32)パーフェクトゲームで藤井聡太王位(19)に勝利 王位戦七番勝負第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月28日・29日。愛知県犬山市・ホテルインディゴ犬山有楽苑において第63期お~いお茶杯王位戦七番勝負第1局▲豊島将之九段(32歳)-△藤井聡太王位(19歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 28日9時に始まった対局は29日17時28分に終局。結果は121手で豊島挑戦者の勝ちとなりました。

 豊島挑戦者は昨年に続き、七番勝負初戦を完勝で飾りました。第2局は7月13日・14日、北海道札幌市・ぬくもりの宿ふる川でおこなわれます。

 藤井王位の2日制8時間の対局成績は、これで16勝2敗。敗れた相手はいずれも豊島挑戦者です。

 両者の対戦成績はこれで藤井13勝、豊島11勝となりました。

 昨年度、対戦成績で追い抜かれた豊島挑戦者。2連勝を返して追い上げています。

 今年度成績は、豊島挑戦者は6勝2敗。藤井王位は5勝3敗となりました。

事前研究、序盤、中盤、終盤、スキがない挑戦者

 振り駒で豊島挑戦者が先手。戦型は角換わり腰掛銀となりました。

 豊島九段はさほど時間を使わず、銀で桂を食いちぎり、取った桂を歩頭に捨てていく猛攻を仕掛けていきます。成算がなければとても指せない順であり、豊島九段の事前研究の深さを思わせました。

 2日目に解説を担当した渡辺明名人は次のように振り返っています。

渡辺「この将棋、前例のない将棋だったんで、そこをけっこう深くカバーしていたっていうのが・・・。前例があってすごい流行ってる将棋ならわかるんですけど」「今回の王位戦用に研究したのか。もともと研究してあった形なのか。ちょっとわかんないですけど、そこの研究広さの範囲っていうのが出ましたよね、この将棋は」

 2日制のタイトル戦とは思えないほどの早い時間帯で、藤井玉周辺は終盤の様相を呈しました。

 藤井王位は少しでも受け間違えればそれまで。しかし読みを入れて、ギリギリのところで耐えてしのぎます。

 1日目は豊島挑戦者が79手目を封じて終わりました。形勢はほぼ互角。ただし消費時間では大差がつきました。

 2日目に入ると藤井王位も反撃して攻め合いに。そこで豊島挑戦者は攻防ともに誤りません。少しずつ差を広げ、優位を拡大。余裕ある残り時間を要所で使う、理想的な試合運びです。

 豊島挑戦者が席を立ったタイミングで、藤井王位は何度がぐったりしたような仕草を見せました。

渡辺「(藤井王位の様子は)なんかちょっと苦しげなね、感じです。僕はあんまり追い詰めたことないから、こういう感じになってくれたことは、あんまない」

 藤井王位がこれほどまでに、チャンスを見いだせないまま押し切られるケースはきわめて珍しい。それこそ2日目15時35分、豊島挑戦者勝ちで終わった、昨年の王位戦第1局のようにレアです。

 100手目の時点で、持ち時間8時間のうち、残りは豊島挑戦者3時間5分。対して藤井王位はわずかに9分です。

 豊島挑戦者はちょうど1時間を使って考え、藤井玉の寄せに出ます。豊島玉は詰まず、藤井玉は受けなし。

 最後は藤井王位が形を作り、豊島挑戦者が駒を捨ててきれいに藤井玉を詰ませ、終局となりました。

 昨年は初戦で勝ったあと、4連敗で敗退した豊島挑戦者。今期はここから勝ち星を積み上げられるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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