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新型コロナのワクチン接種 早く打ちたい日本人と、あまり打ちたくない中国人 その違いは何か?

中島恵ジャーナリスト
ワクチン接種が猛スピードで進む中国(中国のサイト「浦東発布」より筆者引用)

 今日(4月25日)、東京など4都府県では3度目となる緊急事態宣言が出されました。感染力が強い変異ウイルスが急速に広がる中で、多くの人々の間に日常生活や感染への不安が募っています。

 望みのひとつは2月から始まったワクチン接種ですが、日本では遅々として進んでいないのが現状で、人口当たりのワクチン接種率はわずか2%未満。「この調子だと、いつになったら、自分にワクチンの順番が回ってくるのか」と思っている人も多いのではないでしょうか?

 3月末に中央調査社が実施したアンケート調査では、ワクチン接種を希望する日本人は全体の約8割に上っていることがわかりました。他に、地方自治体や企業などが行った調査結果などを見ても、ワクチン接種を「希望する」人は6割以上に上っています。希望している人の割合としては高齢者が多く、若者はどちらかといえば消極的であることも判明しました。

 副反応などの情報も示されていますが、ロックダウン(都市封鎖)などが行われず、感染者の封じ込めに成功しているとはいえない日本で、自分の身を守る手段のひとつとして、ワクチン接種を望む人は少なくないのではないか、と思います。

ワクチン接種を強力に推し進める中国

 一方、新型コロナをほぼ抑え込んでいる中国は、アメリカなどと同様、国民へのワクチン接種を積極的に推し進めている国のひとつで、4月21日に中国国家衛生健康委員会が行った会見で、国内でのワクチン接種は2億回を超えた、と発表されました。中国で承認されているワクチンは4種類で、すべて国産です。

 100人当たりの接種回数で見れば、中国は世界的に見て多いほうではありませんが、中国政府は6月末までに人口の4割が接種することを目標に掲げており、そのために、さまざまな策を講じてきました。

 たとえば、北京・故宮博物院などの観光地の近くに「ワクチンバス」を駐車して、観光にきた人が予約なしで、その場で気軽にワクチン接種できるようにしたり、ワクチン接種した人には景品(卵1パック、コメ、油、商品券、遊園地の入場券など)をプレゼントしたりする、といった「あの手この手」の作戦です。

 上海に住む筆者の友人の母親(70代)も接種に行き、景品のおコメ(5キログラム入り)を1袋もらって帰ってきた、といっていました。

 それだけならいいと思うのですが、一部の地域では、ワクチンを接種していない人の入店を拒否するレストランやホテルなどが出てきたり、マンションの壁に、そのマンション住民の接種率を表示したりして、住民に早く接種するよう、強い圧力をかけていたことがわかったのです。

 こうしたやり方は「接種を強制している」として批判を浴び、政府も「そのようなやり方は改めるべきだ」と警告したということもありました。それほどまでにワクチン接種を推し進めている中国ですが、それでも「接種したくない」という意見があり、接種の通知がくるのを待っている人が多い日本人とは対照的です。

中国人がワクチンを打ちたくない理由

 中国では日本のようなアンケート調査が行われているわけではないので、具体的に、どれくらいの人が接種を希望し、どれくらいの人が希望していないのかは不明ですが、前述したような強制的な接種が起きているということは、政府がそこまでしても「接種したくない」と拒絶する人がいる、ということの表れでもあるでしょう。

 現地に住む人々などに話を聞いてみると、ワクチンを接種したくない理由として、次のような話を挙げていました。

・コロナはほとんど沈静化しており、今更、ワクチンを打つ必要性を感じないから。

・中国製のワクチンは治験データが開示されておらず、何となく怖いから。

・ワクチンの有効性がよくわからないから。

 あくまでも個人的に聞いたり、中国のSNSや報道を見たかぎりの話ですが、中国では今、「自分がコロナに感染するかもしれない」と不安を感じている人はとても少ないのです。そのため、ワクチン接種の必要性も感じない、と思っている人が多いのではないかと感じました。

 また、日本とは異なり、どちらかというと、高齢者のほうが接種を拒んでいるケースが多いことも特徴的だと思いました。

 若い人は会社から通知があって、流れでワクチンを接種したり、ワクチンを接種することによって、対外的な仕事がスムーズに運んだりする、といったメリットがある人が多いのに対し、高齢者にはそうしたことがなく、中国製品への根強い不信感もあるからです。

 日本人の高齢者と中国人の高齢者の間には、そうした不安感や不信感の面で大きな差があり、それが、ワクチン接種に対する積極性の違いにもつながっているのではないか、と思います。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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