【ラグビーワールドカップ2023フランス大会】タックル変化によるオフロードパスの優位性
いよいよ、ラグビーワールドカップが9月8日に開幕する。日本代表は9月10日のチリ戦が初戦である。(仏トゥールーズ 13:00ko/日本時間20:00ko)
4年前のワールドカップはアジア初の日本開催が実現し、日本代表は初の決勝トーナメント進出を果たした。ベスト8という輝かしい結果を残し、日本国中が歓喜に湧いたことは記憶に新しい。
選手の安全性確保によるルール改定
ラグビーは度々、選手の安全性確保によるルールが改定される。近年、選手同士が接触する局面でタックルの安全面を考慮し(ディフェンス側の負荷を軽減することが目的)ボールキャリアにサポートする人数制限を設けている。
フライングウェッジの定義を見直し、3名があらかじめバインドしているミニスクラムに対して制裁を科す。
2021年8月から採用されている50:22(フィフティ・トゥエンティトゥ)とは?
ボールを保持しているチームが自陣の内側からボールを蹴って、相手陣の22メートルラインより内側で間接的にタッチになった場合、その後のラインアウトは蹴ったチームがボールを投入する。(改定前は相手ボールのラインアウト)
50:22を行うために、ボールを防御側の陣内にパスバック、または、キャリーバックすることはできず、防御側の陣内からフェーズが始まらなければならない。
中盤エリアでキックの選択肢を広げることからディフェンス側が後方スペースを視野に入れなければならず、前に詰めるタックルを減らすことを想定している。スペースを作り出すことから、ゲームをよりスピーディーにする意図もあるが、タックル回数の減少により選手の怪我リスクを最小限に抑えるためである。
今回、注視する点はタックル変化によるオフロードパスの優位性についてである。
オフロードパスとは、タックルを受けながら味方にパスをすることである。
ハイタックルは、首から頭にかけてタックルすると危険なタックルとして反則となる。コンタクトの強度や故意によるもの、相手が瞬時に姿勢が変わるなどシチュエーションは様々だが、イエローカード(10分間の退場)もしくはレッドカード(一発退場)の対象である。
日本代表がワールドカップ前の国内5連戦でハイタックルによって2枚のレッドカード処分を受けた。(7月22日サモア戦、リーチマイケルの肩が相手の顔面にヒット・8月5日フィジー戦、ピーター・ラブスカフニの頭部が相手の顔面にヒット)
ピーター・ラブスカフニは、数試合の出場停止処分により、ワールドカップ予選プール初戦(チリ代表)の欠場が決定している。また、予選プール第2戦で戦うイングランド代表の主将オーウェン・ファレルは、8月12日ウェールズ戦でハイタックルの反則により日本戦の欠場が決定している。
近年、ダブルタックルが主流となり1人目がボールキャリアの勢いを止めるため下半身にタックルし、2人目はボールをコントロールさせないよう上半身にタックルする。問題は2人目のタックルの肩の位置が頭部にコンタクトする可能性があることだ。1人目が高い位置にタックルすれば2人目の肩の位置が高い位置になる危険性がある。
一発退場や数試合の出場停止を考えると選手の心理面は、慎重にプレーすることを心掛け、タックルが必然と低くなると考えている。
タックル変化によるオフロードパスの優位性
タックルの改善によってタックルの位置が下がれば、オフロードパスの優位性が生まれる。
1人目、2人目のタックルが低い位置になれば、ボールキャリアは上半身をコントロールし易い状態になり、難易度の高いオフロードパスを選択する機会が増え、効果的にプレーすることができる。
オフロードパスは主にディフェンスラインの背後を通すプレーである。ディフェンス側の2人目、3人目はパスコースを埋める予測とポジショニングが必要とされ、前で止めることは至難の業である。1つのオフロードパス成功が大きく前進する糸口となるのだ。
(オフロードパスはボールを片手で扱う状況が多く、ハンドリングエラーが起こりやすいプレーのため難易度が高い。)
ワールドカップ前のサマー・ネーションズシリーズでフィジー代表が格上イングランド代表に勝利した。フィジー代表が得意とするオフロードパスが功を奏してトライを得た。(オフロードパス回数フィジー7回/イングランド3回)
2019年のワールドカップ、日本代表がスコットランド戦で稲垣選手がトライしたシーンは、3連続でオフロードパスを通して生まれたものだ。
今大会は、タックル変化によるオフロードパスが1つの鍵を握る。