【ラグビーW杯2023フランス大会】日本代表がアルゼンチン代表に勝利する3つのポイント
10月8日、9日(日本時間)に決勝トーナメント進出を賭けたプール最終戦を迎え、8か国が顔を揃える。日本代表は勝点の並ぶアルゼンチン代表が最終戦。勝利すれば無条件で決勝トーナメント進出が決定する。
アルゼンチン代表は、2012年より南半球の強豪国ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアが参加する国際リーグ(ザ・ラグビーチャンピオンシップ)に加入。2022年大会はニュージーランド、2023年大会はオーストラリアを破り、実力は折り紙付きである。
日本代表との対戦成績は5勝1敗、アルゼンチン代表に分があることは否めない。死闘となることは間違いないだろう。
サモア戦で見えた日本代表の課題
サモア戦はまさに激闘だった。フィジカルの強さを前面に打ち出すサモア代表の縦突破に苦しめられ、60分以降のパフォーマンス低下を露呈した。キックを多用する日本代表の戦術はディフェンス力なくして成立しない。キックは再獲得を目的にショートパントやハイパントを駆使するが再獲得の確率は低く、相手にボールを渡した後のミスを誘うタックルやターンオーバーを狙う必要が出てくる。もしくは、相手のキックを誘発させ、カウンターのチャンスをものにしなければならない。
日本代表のW杯予選プール3戦のトライ傾向を見ると、総トライ数9に対して、キックやターンオーバーなどのアンストラクチャー(ディフェンスラインの崩れている状況)からのトライが2つだったことを考えると少し寂しい。また、タックル数181回(サモア代表83回)の負担が60分以降のパフォーマンスに影響を及ぼしていたであろう。よって再獲得するキックの精度を上げる必要がある。
再三、苦しめられたFW(フォワード)の縦突破からのオフロードパス(タックルを受けながらのパス)は、アルゼンチン代表が得意とするプレーの一つであるため要注意である。オフロードパスからも多彩なアタック力を持ち合わせ、エッジ(外側のスペース)へボールを運ぶ能力が高く、裏のスペースを空ければ精度の高いキックが考えられる。オフロードパス対策として2、3人目のポジショニングとボールをコントロールさせないタックルが必須である。
両者3戦を終えたトライ傾向の類似点と注意点
プール3戦を終えて、日本代表の総トライ数9に対し、アルゼンチン代表は10だった。日本代表の内訳は、セットピース(スクラム・ラインアウト)を起点に得たトライが78%、アルゼンチン代表は70%であった。両者、セットピースから準備されたプレーが一つの強みと言える。大きく違いが出たのは、日本代表はスクラム起点が多くを占め、3フェーズ以内(3次攻撃)にトライしたのが86%だった。対するアルゼンチン代表はセットピース全てラインアウトが起点だった。ドライビングモールを駆使し、ラインアウトからのモールが最大の武器である。
日本代表の失トライ傾向では、67%がセットピースであり、失トライ6本の内3本がラインアウト起点だった。日本陣内でアルゼンチンボールのラインアウトの機会を減らしたい。
日本代表がアルゼンチン代表に勝利する3つのポイント
アルゼンチン代表は日本代表同様にキックを多用してくると予測する。キック後のディフェンスが1つのポイントだ。前で仕留めるタックルによって、キックに切り替えるためキックカウンターがチャンスである。3戦を終えて、タックル成功率は平均85%だったがそれ以上の成功率が求められ、相手を後退させるドミネートタックルを期待したい。
2つ目のポイントは、ブレイクダウン(ラックによるボール争奪)で優位に立つことだ。日本代表が早いテンポを生み出すには、早いサポートと確実なクリーンアウト(ラックで相手を排除)が重要である。フィジカルの強い相手であるため、一瞬の遅れがカウンターラックとなりターンオーバーの原因となる。
3つ目のポイントは、アンストラクチャーからのアタック精度である。ディフェンス力のあるチームに対しては、キックやターンオーバーなどのラインディフェンスの整わない状況をチャンスメイクしたい。プレーの選択(ラン、パス、キック)とスペースへ素早くボールを運ぶことが有効的である。調子の良いレメキロマノラヴァ、チャンスメイクのできる松島幸太朗、初出場を果たすパワーランナーのシオサイア・フィフィタがこの役割を担うはずだ。
2019年ラグビーW杯日本大会は、格上であるアイルランド、スコットランドを撃破。初の決勝トーナメント進出を果たし、日本国中が歓喜に沸いた。あれから4年を経て、日本代表の進化を示す重要な一戦となる。勝利を期待し、あの感動を再び味わいたい。