H3ロケットの成功にイプシロンSは続けるか?両ロケットのシナジー(相乗効果)を解説!
2月17日のH3ロケット打ち上げ成功により、日本の宇宙開発に改めて注目が集まりました。
そんな中、実は2024年度にはもう一つの新型ロケットの打ち上げが計画されています。本記事では、新型国産ロケット「イプシロンS」の解説と、H3との以外な関係も紹介していきます。
H3ロケットが描く将来打ち上げ計画、増強型H3ロケットとは?
■ロケット燃料は液体と固体ロケットの2種類が存在
まずは、イプシロンとH3を語る上で必要となる、ロケット燃料の種類について解説していきます。
一つ目は、イプシロンロケットが使用している火薬のようなもので、「固体燃料」と呼ばれています。代表的なものには、合成樹脂や合成ゴムなどの燃料と酸化剤を均一に混ぜたもので、コンポジット推薬とよばれています。細かい部品が必要ないのでシンプルであることがメリットなのですが、一度点火すると微調整ができないため、コントロールが難しいという欠点があるんです。
二つ目は「液体燃料」といわれるもので、H3ロケットは気体状態でとても良く燃える水素を搭載しています。しかし、ロケットは上昇中に宇宙に近づくにつれてどんどん空気がなくなっていく訳ですが、酸素がなければ水素も燃えることができません。そのため、水素の燃焼ができるよう酸素も燃料として積んでいるんですね。
そしてこの酸素と水素、なんと液体状態でH3のタンクに充填されています。酸素と水素って気体じゃないの?と思われる方も多いかもしれません。私たちが暮らしている温度では気体なのですが、酸素は約マイナス183度、水素はマイナス253度でなんと液体になるんですね。これを極低温状態と呼んでいます。恐らく普通に暮らしていて液体の水素と酸素は見ることはないでしょう。気体ではなく液体とすることで、少ない体積で宇宙まで持っていけることや、タンクも高い圧力にならずにすむんですね。また、火薬のような固体ロケットと比べて、液体ロケットは燃料の微調整が可能という利点があるんです。一方で、パイプやバルブなどが複雑化するという欠点もあります。
■新型国産ロケット「イプシロンS」
イプシロンSは3段式の固体燃料を搭載した国産基幹ロケットで、初代であるイプシロンの進化系です。
2023年7月、秋田県の能代ロケット実験場にて、イプシロンSで使用される2段目モーターの燃焼試験が実施されましたが、途中で爆発するという不具合に見舞われています。
2024年度の初打ち上げを目指しており、ベトナムの地球観測衛星「LOTUSat-1(ロータスサット・ワン)」を打ち上げる予定です。2025年度には、小惑星フェートンを探査する深宇宙探査技術実証機「Destiny+」、そして革新的衛星技術実証4号機「RAISE-4」を打ち上げる予定です。。
■イプシロンSの特徴である「Synergy(シナジー)」
イプシロンSは、H3と固体ロケットを共通化するなど、様々なシナジー効果により国際競争力を強化することを目的としています。
先日打ち上げに成功したH3は、固体ロケットブースター「SRB-3」を2基、ないしは4基装着して打ち上げられますが、イプシロンSはこのSRB-3を第1段に使い、両者を共通化します。これにより、ほとんど同じモーターを両方のロケットにフレキシブルに、たとえば製造途中にH3のブースターからイプシロンの第1段へ用途が変わったとしても転用可能なほどの共通化を図るとのことです。
急な計画変更にも柔軟に対応できそうですね。開発費の低コスト化や信頼性向上にも大きく貢献できそうです。
イプシロンSの初打ち上げが楽しみですね。
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