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5人に1人へ。急増する「マッチングアプリ婚」の光と影

植草美幸結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸
(写真:アフロ)

■マッチングアプリでの出会いが急増

明治安田生命が「いい夫婦の日」に関するアンケート調査を実施しました(出典/https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2022/pdf/20221116_01.pdf)。

「出会いのきっかけについて」の項目では、近年マッチングアプリによる出会いが増加傾向にあるとし、マッチングアプリによる出会いは、2015年~2019年に結婚した人の6.6%から、2020年代以降では18.8%に上昇。2022年単年では22.6%となり、およそ5人に1人の割合にのぼっているとしています。

同調査では、マッチングアプリ台頭の背景について、スマートフォンの普及や、新型コロナウィルスの感染拡大以降、テレワークの推進や外出自粛でリアルな出会いが減少したことを挙げ、新たな出会いのカタチとして定着しつつある、としています。

この調査結果について、結婚相談所の現場で感じていることをお伝えします。

■マッチングアプリは「婚活初心者」向きではない

私は東京青山の結婚相談所の代表兼、婚活アドバイザーとして現場に立ち、地方での婚活セミナーや、メディアでの恋愛結婚のお悩み相談を行っています。都心部に限らず日本全国の婚活状況、結婚相談所以外での婚活事情について常時見聞きしていますが、実感値として新型コロナウィルスの感染拡大以降、確かにマッチングアプリの利用者は年々増加しています。

一方で今年は、コロナ以降にマッチングアプリを利用して1~3年活動したものの、結婚相談所に切り替える方が目立った年でもありました。

マッチングはしても実際に会うまでに至らない、コミュニケーションが上手くいかない、体目当ての男性が多くて身の危険を感じた、何度かデートしたものの結婚する気があるのかどうかわかならい、突然連絡が取れなくなった……こういった理由で傷つき、もうこりごりと結婚相談所にいらっしゃる人が増えているのです。

個人的には、マッチングアプリを「婚活目的」で利用することをおすすめしていません。特に、マッチングアプリが「婚活初心者」向きという考えに対し、警鐘を鳴らしてきました。金銭的な負担がないので利用への障壁が低いのはわかりますが、誰でも手軽に使えるぶん、自身の恋愛力、コミュニケーション能力、お相手の本質を見抜く力が試される場所でもあります。

■体目当て、ドタキャン、自然消滅…当たり前だと思わないで!実際、マッチングアプリの経験から、「男性と会ったら必ず体の関係を持つのが当たり前」だと思いこまされていた、20代の婚活女性がいました。私の結婚相談所では、入会希望の方とお会いした際に、過去の恋愛経験を聞くのですが、彼女は「デートはいつもラブホテルに直行。好きだから体の関係を持ちたいと思うのは当たり前だと言われた」と言っていました。学生時代に恋愛したことがないまま成人し、就職後に出会いがないことに気づいて、恋愛経験ゼロのままマッチングアプリを使用しはじめたそうです。身も心もささげた彼から、ある日「結婚する」と言って連絡を絶たれ、傷心から入会を決めたということです。

結婚相談所では、成婚退会するまで体の関係を持たないのが決まりです。女性の安全を守り、お互いが理性的に相性を見極めていただくためです。これを彼女に伝えるととても驚いていました。

マッチングアプリを利用する際には、「プロフィールに信憑性はあるのか」を重視する必要があります。職業や年齢が嘘、写真がニセモノ、既婚者が独身のふりをして紛れ込んでいたケースもありました。目的が結婚であれば、「独身証明書」や「収入証明」など重要事項について確認できる、公的な書類提出が必須なサービスを利用しましょう。

プロフィールが本当だとしても、婚活目的か、恋愛目的か、体目当てかどうかも見抜く必要があります。好条件の男性と出会って何度かデートをして楽しい時間を過ごして、いざ結婚の話をしてみると、男性から「マッチングアプリで出会ったから遊びのつもりだった、お互い割り切った関係を望んでいると思っていた」と言われた女性もいました。

また、よくマッチングアプリを利用中の方から「自然消滅した、ドタキャンされた」という話を聞きます。これは、双方の目的や真剣度の違い、コミュニケーションの齟齬でも起こりがちなことです。こういった態度の人が、結婚相談所に入ってくると、“お行儀の悪い人”としてクレーム騒ぎに発展することさえあります。

そもそも結婚相談所ではマッチングしたら必ずお見合いを行い、お見合いの結果は翌日までに担当アドバイザーに伝えるのがマナー。お見合い後に双方が交際希望を出したら、原則男性から電話をしてデートの約束をするファーストコールをするルールもあります。

このように“当たり前”の価値観がまったく異なるのです。

■マッチングアプリが婚活を遠ざけることも……

マッチングアプリにうんざりする人がいる一方で、マッチングアプリに慣れすぎて、結婚相談所などの真剣な婚活現場に違和感を持ってしまう人もいます。

よくある勘違いの代表例といえば、「私は、結婚相談所よりマッチングアプリのほうがモテるんです」という意見です。結婚相談所よりもマッチングアプリのほうが若い男性や、条件のいい男性から積極的に申し込みが来る、と言うのですが……当たり前ですよね。身分も明かさず、タダでセックスできれば御の字、面倒ならブロックできる! という相手に“いいね”しているだけですから。結婚相談所では、「結婚観が合って一生添い遂げられる人」と考えた人にだけお見合いを申し込むのですから、判断基準が全く違います。似たような事例で言うと、結婚相談所で活動する際のプロフィール写真を、マッチングアプリで使っている写真に変えてほしいと言って、自撮りのフィルター加工バリバリの写真を持ってくる方もいます。

総じて言えるのは、「アプリでスキやいいねをもらえること」と、「本気で結婚したいかどうか」は、恋愛と結婚の違い以上に別モノだということ。何事も経験と言いますが、それがあだとならないように注意したいものです。

結婚相談所代表・恋愛・婚活ジャーナリスト 植草美幸

千葉県出身。青山学院大学卒業。結婚相談所マリーミー代表、恋愛・婚活アドバイザー。1995年に、アパレル業界に特化した人材派遣会社、株式会社エムエスピーを創業。そこで培ったコーディネート力を活かし、2009年、結婚相談所マリーミーをスタート。以後10年以上にわたり年間約1,000組の恋愛・結婚に対するアドバイスを行い、業界平均15%と言われる成婚率において、約80%の成婚率(※)を記録している。『結婚の技術』『婚活リベンジ!』など、著書は計14冊。メディア出演の他、地方自治体をはじめとした講演依頼も多数。(※) 成婚退会者数÷全体退会者数で算出。

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