韓国情報機関は661日ぶりの「金正恩ミサイル参観」を事前にキャッチできなかった!?
北朝鮮が不意にまた、極超音速ミサイルを発射した。驚いたことに前回の発射からまだ6日しか経っていない。それも、今回は金正恩総書記が実に久しぶりに立ち会っていた。
(参考資料:大胆不敵な北朝鮮のミサイル発射 北京五輪を前に1度ならず2度も!)
韓国の情報機関は金総書記の動きを事前にキャッチできていたのだろうか?
最先鋭偵察機で頻繁に上空から偵察し、地上からも最新電子機器を使って常時電波傍受していると言われていたが、仮に気づかなかったとするならば、韓国情報機関の偵察、探知、情報収集能力が問題となる。また、健康問題を含め金総書記の動静を監視しているはずの韓国の情報機関が平壌から発射があった中西部の慈江道までの列車もしくは車両による移動をマークできず、参観を察知できなかったとするならば、これもまた問題である。
金総書記がミサイルの発射に立ち会ったのは2020年3月21日以来661日ぶりである。昨年(2021年)は1月22日に平安北道・亀城から短距離巡航ミサイルを2発発射したのを皮切りに、3月に2回、9月に28日の極超音速ミサイル「火星8型」を含め4回、そして10月のSLBM(19日)の1回と、計8回北朝鮮はミサイルを発射したが、金総書記は一度も立ち会っていない。
今朝の朝鮮中央通信は金総書記が極超音速ミサイルの試験発射を「現地で参観した」と伝えていたが、ほとんどの場合は「指導した」と報道されていた。「参観」と「指導」の違いが興味のあるところだが、ミサイルの開発、発射実験が本格化した2016年から金総書記がミサイル発射に立ち会ったケースを調べると、「指導」と「参観」を以下のように使い分けている。
▲2016年(8回)
金総書記は2016年には延べ8回、ミサイル発射に立ち会っていたが、3月11日の戦略軍の弾道ミサイル発射訓練以外は「指導した」とされている。
3月3日 新型大口径放射砲試験射撃を指導。
3月11日 戦略軍の弾道ミサイル発射訓練を視察。
3月21日 新型大口径放射砲試験射撃を再度指導。
4月2日 新型防航空迎撃誘導ミサイル試験射撃を指導。
4月23日 戦略潜水艦弾道ミサイル(SLBM)水中試験発射を指導。
6月23日 中長距離弾道ミサイル「火星10型」試験発射を指導。
8月24日 戦略潜水艦弾道ミサイル(SLBM)水中試験発射を指導。
9月5日 戦略軍火星砲兵部隊の弾道ミサイル発射訓練を指導。
▲2017年(12回)
朝鮮半島の軍事的緊張が激化した2017年は延べ12回である。このうち「指導」が9回、「参観」が3回である。
2月12日 中長距離弾道弾ミサイル「北極星2型」試験発射を指導。
3月7日 戦略軍火星砲兵部隊の弾道ミサイル発射訓練を指導。
5月14日 地対地中長距離戦略弾道ミサイル「火星12型」試験発射を指導。
※金総書記は試験発射を成功させた関係者らと記念写真を撮った。
5月21日 新型中長距離戦略弾道弾ミサイル「北極星2型」試験発射を参観。
※金総書記は「北極星2型」部隊の実戦配備を承認した。
5月28日 新型防航空迎撃誘導体系の試験射撃を参観。
5月29日 精密操縦誘導体系を導入した弾道ミサイル試験発射を指導。
※金総書記は「今日の成果を土台にもっと威力のある戦略兵器を開発せよ」と指示。
6月9日 国防科学院で開発された新型地対艦巡航ミサイル試験発射を参観。
7月4日 大陸間弾道ミサイル「火星14型」試験発射を指導。
7月28日 大陸間弾道ミサイル「火星14型」第2次試験発射を指導。
※金総書記は成功させたミサイル関係者や科学者らと記念写真を撮った。
8月29日 戦略軍の中長距離戦略弾道ミサイル「火星12型」発射を指導。
9月15日 中長距離戦略弾道ミサイル「火星12型」発射訓練を再度指導。
※金総書記は「火星12型」の「戦略化が実現した」と発言。
11月29日 大陸間弾道ミサイル「火星15型」試験発射を指導。
※金総書記は「今日は国家核武力完成の、ミサイル強国実現の歴史的な日」と発言し、関係者らと記念写真を撮った。
▲2018年(0回)
トランプ政権下で初の米朝首脳会談が実現した2018年はミサイルの発射はトランプ政権に配慮して、1回もなかった。
▲2019年(12回)
ハノイでの2度目の米朝首脳会談が決裂した2019年2月以降はミサイル発射が再開されたが、いずれも短距離。金総書記は12回立ち会っているが、そのうち「指導」が8回、「参観」が4回だった。
4月17日 国防科学院が行った新型戦術誘導兵器(イスカンデル型)射撃試験を指導。
5月4日 軍の火力打撃訓練を参観 新型戦術誘導兵器(イスカンデル型)2発発射。
5月9日 軍の火力打撃訓練を参観 新型戦術誘導兵器(イスカンデル型)2発発射。
7月25日 新型戦術誘導兵器(イスカンデル型)試験射撃(2発)を指導。
7月31日 大口径放射砲の試験射撃(2発)を指導。
8月2日 大口径放射砲の試験射撃(2発)を再度指導。
8月6日 新型戦術誘導兵器(イスカンデル型)発射(2発)を参観。
※金総書記は発射を成功させた国防科学院幹部や科学者らと記念写真を撮る。
8月10日 新型兵器(ATACMS型)の試験射撃(2発)を指導。
※金総書記は「また新たな兵器ができた」と喜んでいた。
8月16日 新型兵器(ATACMS型)の試験射撃(2発)を再度指導。
※金委員長は「完璧な結果を得た」と満足を表明。
8月24日 超大口径放射砲の試験射撃(2発)を指導。
※金総書記は「この日は忘れられない日となるだろう」と発言。
9月10日 超大口径放射砲の試験射撃(2発)を再度指導。
※金総書記は「後は連発射撃試験だけだ」と発言。
11月28日 超大口径放射砲の試験射撃(2発)を参観。
※朝鮮中央通信は「試験射撃結果に大満足を表した」と報道。
この年は、金正恩委員長は10月31日(平安南道・順川から超大口径放射砲2発発射)を除いてすべて立ち会っていた。また、年末に開催された党中央委員会全員会議で「世界は直ぐに我々が保有する新たな戦略兵器を目撃することになるだろう」と公言した。
2020年(3回)
一昨年は3月2日に江原道・元山での部隊の火力訓練(大口径放射砲2発発射)を指導し、9日も咸鏡南道・先徳で部隊の火力訓練(単距離弾道ミサイル3発発射)を指導しているが21日には平安北道・宣川で戦術誘導兵器(ATACMS型)の試験射撃(2発)を参観していた。この際、金総書記は「我々式の武器体系の連続的出現は国家武力発展の一大事変である」と発言していた。
昨年は前述したように1月22日に平安北道・亀城から短距離巡航ミサイルを2発発射したのを皮切りに、3月に2回、9月に28日の極超音速ミサイル「火星8型」を含め4回、そして10月に1回と、計8回ミサイルを発射したが、一度も立ち会わなかった。