レノファ山口:ホーム開幕戦、福岡に惜敗。小塚和季は今季初ゴール
レノファ山口FCは3月5日、維新百年記念公園陸上競技場(山口市)でアビスパ福岡と対戦。ホーム開幕戦には1万人弱の観客が訪れて声援を送ったが、追撃は一歩及ばず1-2で敗れた。
明治安田生命J2リーグ第2節◇山口1-2福岡【得点者】前半13分=ウェリントン(福岡)、同39分=石津大介(同)、後半8分=小塚和季(山口)【入場者数】9651人【会場】維新百年記念公園陸上競技場
チームの3分の2が入れ替わった今シーズンのレノファ。再構築に時間が掛かるのは織り込み済みとはいえ、前節・FC岐阜戦ではレノファらしさがほとんど見られなかった。セカンドボールを回収できない脆さも出て、苦しい試合運び。1週間の準備期間でどれほど修正や積み上げができていたか。その点が今節のカギだった。
しかし、ゲームを序盤から優位に進めたのは福岡。前半のほとんどの時間帯で福岡がレノファ陣内でプレーし、何度も決定機を創出。前半13分、右からの駒野友一のコーナーキックをウェリントンがしずめて先制すると、同39分には高い位置からのロングスローを起点に石津大介が右隅に強いシュートを決め、福岡がリードを広げる。レノファはセカンドボール以降が展開できない状態に陥り守勢に。岸田和人を裏に走らせたり、小野瀬康介が突破を試みたりするシーンは何度かあったがゴールを奪うには至らず、前半を0-2で折り返すことになった。
中盤に見えた「気遣い」
上野展裕監督は得点を取りに行く姿勢を明確に打ち出すべく、ハーフタイムで早くも2枚のカードを切る。1トップでも両サイドのMFでもプレーできる米澤令衣と、最後にチームに合流したボランチの佐藤健太郎を一気に投入。それと同時に中盤の底に張り付いていた小塚和季の自由度を高めると、ショートパスがワンタッチで繋がっていくようになる。昨シーズンまで見られたようなパスサッカーに近いが、これは上野監督の采配がはまっただけでなく、中盤の気遣いも寄与していた。
鳥養に代わって後半からキャプテンマークを巻いた三幸秀稔は「小塚選手が一つ上で展開し、(自分は)なるべくラインを下げすぎないように」と意識したほか、ボランチに入った佐藤は「三幸がボールを動かせるのでシンプルに三幸に預け、失ったときの対応の準備をした」と話して三幸からのパスをサポート。結果的にボランチとトップ下のそれぞれが互いの特徴を出そうと考え、コンビネーションが大幅に良くなった。後半8分には星雄次のパスを三幸がリレーし、中央に空いた穴から小塚がミドルシュートを突き刺した。
福岡が引き気味になったこともあり、その後も主導権を握り続けたのはレノファ。だが決定力を欠き、後半30分以降は波状攻撃から岡本英也や三幸が狙っていくが枠を捉えられず、終盤も福岡戦では相性の良い星が右足を振り抜くもクロスバーの上を超えていった。スコアは1-2からは動かず、レノファはホームで黒星。福岡は敵地で今シーズン初勝利を挙げた。
成長の余地が見えた
レノファは後半は主導権を握ったが、前半は味方同士の距離が離れてパスミスが目立ち、相手に脅威を与え続けていたかといえば疑問符は付く。とはいえ、前半に目をつむれば、第2節にして十分なレベルのパスサッカーをしているとも評価できよう。大幅に選手が入れ替わる中で、昨シーズンの出来に迫るクオリティを今節のレノファは見せた。最後まで戦い、2点差を跳ね返しうる反復攻撃を仕掛けたのもレノファらしい。
もちろん勝ち点を取れていないし、及第点に達していないのは明らか。決定力やコンビネーション、ペナルティエリア内でのアイデアなど、上向ける必要のある部分は数え切れない。久々にゴールを挙げた小塚も満足することはなく、「押し込めるシーンが(岐阜戦に比べて)今回は多かった」とした上で、「最後の崩しはまだまだ。コンビネーションを合わせてやっていきたい」と力を込める。
守備面では最終ラインが開幕戦から半分が入れ替わった。その中で、GK山田元気の好セーブに救われた部分はあったが、流れの中から失点しなかったことも収穫と言えそうだ。セカンドボールへの対応も後半になって良くなった。もちろん2失点した事実はあり、福元洋平は「ゴール前に関してはまだまだ。出足の鋭さも上げて守備をしなければいけない」と語気を強め、「引き続き球際とセカンドボールのところをやっていきたい。自分たちはボールを保持したいので、そこで拾わないと自分たちのボールにできない」と引き締めた。
2017年のレノファ。まずは昨シーズンに追いつき、いずれは『上回る』パスサッカーをしなければいけなくなる。目標は高い。鳥養祐矢は「レノファらしいサッカーができずに90分が終わって悔しい」と話し、指揮官も「取り組む課題も分かってきた。練習量もまだまだ増やしていきたい」と熱が入る。
輝く高みに向かうため、成長の糸口を探し、全員でこころひとつに伸びていく。志士たちはまだスタート位置に付いていない。東雲の空を遠くに見ながら、ひたむきに未だ暗い道を走り続ける。