台風情報の見直しで75%が修正に
台風情報は後日、見直しが行われ、正式な確定値が発表される。今年の1号から12号までのうち、75%が発生、または消滅の日時が修正された。速報値と確定値の乖離には防災上の視点がある。
台風情報の見直しとは
今年は9月16日に台風19号が消滅して以降、(10月6日現在)台風の発生はありません。ただ、フィリピンの東海上で対流活動が活発となっていて、今後、熱帯低気圧(台風)の影響を受けるおそれがあります(10月12日修正)。
今日は台風情報のその後にこだわってみたいと思います。
台風情報は2つあり、みなさんが主に見聞きする台風情報は「速報値」です。一方、台風が消滅してから、台風のさまざまなデータを再検討した「確定値」があります。確定値は正式な台風記録として、統計や研究に使われます。しかし、台風を取り上げた話題のなかには速報値と確定値を区別しない例も見受けられます。
今年の台風は1号から12号まで事後解析(ベストトラック)され、そのうちの75%で発生、または消滅した日時が修正されました。
修正された台風のなかに5号があります。もう覚えていないかもしれませんが、日本の南海上で動きが遅くなったため、当時は寿命歴代3位として話題になりました。
速報値では台風5号の寿命は18日と18時間でしたが、その後の見直しで19日となりました。台風の統計が残る1951年以降では1986年台風14号(19日と6時間)に次ぐ歴代2位となり、記録が伸びました。
速報値と確定値の差はわずか6時間なので、わざわざ取り上げる話でもないでしょう。でも、私は事後解析により台風の寿命が短くなると思っていたので、ちょっと意外でした。
上陸取り消し 異例のケース
過去には事後解析により、上陸が取り消された台風があります。2002年台風4号は当時、高知県東部に上陸と発表されました。
しかし、約1か月後、気象庁は上陸する前に熱帯低気圧に変わっていたとして、上陸を取り消しました。天気ノートには取り消し線が引かれ、疑問符が書いてあります。上陸が取り消されるとは思いもよらず、驚いたことを今でも覚えています。
限られた気象データと時間の制約があるなかで発表される速報値が後日、修正されることは理解できます。むしろ、台風ではなくなった途端に安心してしまう風潮があることに危機感を覚えます。台風が熱帯低気圧、温帯低気圧に変わったからといって、雨雲が消えてしまうわけではなく、台風の影響が弱まるまで情報を発表し続けることも必要でしょう。
台風は日本列島に近づくと勢力が弱まる一方で、台風から離れた場所で風や雨が強まることが多いため、伝え方に悩みます。速報値と確定値の乖離には気象学では割り切れない、防災上の考えがあると思います。
【参考資料】
気象庁ホームページ:過去の台風資料,長寿台風
日本経済新聞:台風5号 寿命歴代3位,2017年8月9日
【10月12日修正】
この記事を掲載した10月7日に「熱帯の海では今後、台風が発生する可能性がありますが、日本列島に近づくことはないでしょう。今年の台風シーズンは終わりました」と書きました。
その後、状況が変わり、熱帯低気圧(台風)の影響を受ける可能性がでてきたため、上記のコメントを修正しました。
大変失礼しました。