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前王将・渡辺明名人(38)今期リーグ初戦で弟弟子・近藤誠也七段(26)に敗れる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月4日。東京・将棋会館において第72期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ戦1回戦▲渡辺明名人(38歳)-△近藤誠也七段(26歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時45分に終局。結果は128手で近藤七段の勝ちとなりました。前王将の渡辺名人は今期黒星スタート。近藤七段は偉大な兄弟子に勝ち、好発進となりました。

近藤七段、兄弟子に堂々の勝利

 渡辺名人と近藤七段は同じ所司和晴七段門下。ABEMAトーナメントが団体戦になってから、渡辺名人は3期連続で近藤七段をドラフト指名しています。それだけ実力を高く買っているということでしょう。

 渡辺名人と近藤七段は過去に2回対戦し、渡辺名人2連勝。2016年の王将戦リーグでも渡辺名人が勝っています。

 渡辺名人は前期七番勝負で、藤井聡太現王将に敗れました。

 今期はリーグから巻き返しをはかる立場です。

 本局は渡辺名人先手。戦型は角換わりで、渡辺名人は早繰り銀から攻めに出ました。

近藤「後手番なので手待ちの作戦でいました。なにか先手が動いた手に対応できるかどうかだと思っていました」「ちょっと揺さぶられる展開で、うまく待ちきれるか」

 渡辺名人は飛を3筋に寄せて攻めていきます。

渡辺「ちょっと攻め方があんまり、よくなかったですね」「そういう感じかなとは思ってたんですけど。ちょっとでも、あんまりうまくいかなかったですね、そのあとが」

 60手目、近藤七段は角を打ち込んで反撃に出ます。

近藤「(60手目)△2八角打つときは怖い局面ではありますけど。こっちもそれは仕方ないかなと思ってました。角打った瞬間がまあ怖いというか。まあでもそういうつもりだったんで」

 近藤七段は飛角交換に持ち込んで少しリードを奪ったようです。

近藤「▲4一角とかのキズもあるんで、けっこう大変かなと思ってたんですけど。わかんなかったですね」

渡辺「思ってたよりよくなかったですね」

 90手目、近藤七段は渡辺玉の近くに角を打ち込んで寄せに出ました。

近藤「△6九角打って攻めに迫力がちょっとずつ出てきたかなと思いました」「うまく寄せきれればいいなと思ってました」

 近藤七段は攻防ともにほとんどミスなく終盤を乗り切ります。最後は渡辺玉をきれいに詰ませて終局となりました。

 近藤七段は3戦目にして、初めて兄弟子の渡辺名人に勝ちました。

近藤「うれしいですけど、もっともっと対局数を増やしていけるように、自分が頑張んないといけないなと思います」「これまで王将リーグは黒星先行だったんで、今回はいいスタートを切れてよかったです」

渡辺「今日はあんまり内容よくなかったんで、また改めてやっていきたいというところです」

 これでリーグ1回戦の3局はすべて終わりました。渡辺名人は10月7日に服部慎一郎五段と対戦。近藤七段は8日に豊島将之九段と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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